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汝、星のごとく

凪良ゆう 2022年

・あらすじ

ーわたしは愛する男のために人生を誤りたい。

風光明媚な瀬戸内の島に育った高校生の暁海と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂。ともに心に孤独と欠落を抱えた二人は、惹かれ合い、すれ違い、そして成長していく。

生きる事の自由さと不自由さを描き続けてきた筆者が紡ぐ、ひとつではない愛の物語。

ーまともな人間なんてものは幻想だ。俺たちは自らを生きるしかない。
(本書冊子のあらすじより引用)

2023年本屋大賞ノミネート作品

・感想

凪良ゆう作品は、これで3作目です。

この物語は、高校の同級生だった「暁美」と「櫂」の2人を淡く切なく描く、恋愛物語です。

10代で出会い、20代で別れ、30代で再会。

最初は、純粋な「好き」という感情から、出会いましたが、徐々に2人の価値観が合わずに、割れてしまいました。

〆切に追われる作家生活を送る彼、忙しい彼に相手にしてもらえなかったり、バカにされたりする彼女ー

自分の世界の価値観を相手に分かってもらえずに、ずっと悩み、苦しみ続ける姿が描かれていました。

あることがきっかけで再会、お互いにあまりにも盲目だったことに気が付いた姿は、見方を変えれば、大したことのないことで、ずっと悩み続けてしまったんだなと感じることのできる作品でした。

流浪の月、すみれ荘ファミリア、神さまのビオトープとこれまで読んできて、今回、この作品を読んだのですが、凪良作品の一番の特徴的な部分とも言える、「自分の価値観を誰にも分かってもらえない」ということがこの作品でもしっかりと綴られていました。

ある程度の作品を読んで、形を変えながらも、筆者はこの問題を重く受け止めていて、読者に対して切実に伝えたいのだと、気が付きました。

誰にでも、自分の世界や自分にしかわからない価値観はあります。それを周りの人たちに理解してもらえず、共有できないということは、本当に心苦しいことだと思います。その壁にいつまでも気付かず、悩み続ける人もいるということを改めて感じた1週間でした。

私も普段の生活の中で、知らず知らずのうちに相手にとって心無い態度や言葉をかけてしまっていないか、心配になります。相手を思いやったつもりでも、相手からは、過度な気遣いととられて、かえって「余計なお世話」と思われたり、疲弊させていないか。今回の作品でも、そういった部分はよく考えさせられました。

また、この作品は面白いことに主人公が、作家なのでこの作品と同じ名前の本が、彼によって執筆され最後に出版されて出てきます。

世代を超えて、多くの人に読み継がれてほしい作品の一つだと、感じました。

・書籍情報

2022年8月2日第1刷発行
発行元:講談社
定価:本体1600円(税込)


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