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生命式

村田沙耶香 2022年

・あらすじ
「夫も食べてもらえると喜ぶと思うんで」。人口減少が急激に進む社会。そこでは、故人の肉を食べて、男女が交尾をする、新たな”葬式”がスタンダードになっていた……表題作「生命式」や「素敵な素材」など、著者自身がセレクトした十二編を収録。はたして「正常は発狂の一種か」!?未体験の衝撃と話題になった、文学史上最も危険な短編集。

・感想
前々から、この本を紹介しているフォロワーさんが多くて気になっていました。しばらく金欠でしたが、お金も溜まってきたので、久しぶりに新品の本を買ってきました。

この中でも1章、2章は本当に衝撃的な作品でした。今まで読んだ中で一番、衝撃の大きいものだったかもしれない…。1章は死んだ人の肉を食べ、男女が交尾をし新しい命を生み出す話。2章は死んだ人の体を再利用して、椅子や服などの生活で使うものに生まれ変わる話。いずれも、読後感が衝撃的でした。「村田さんって、こんなの書くんだ」と。

「正常は発狂の一種でしょう?」P50

「確かに」と思いました。今の自分がおかしいと思っている事でも、条件が変われば、それが普通でむしろ自分の方が狂った人間として扱われる。環境が変われば常識も変わる。そこに適応できない人は、狂った人として扱われる。至極当然のことです。

私も、常識はずれした人を見たりすると、「えっ?」と思ったりしますが、相手からしてみればそれが普通なのかもしれないです。だから、人間には個性があり、相性の合う合わないがあるのだと思いました。

「自分の考え方や価値観がすべてではない。相手の考え方や価値観も受け入れていかなければならない。」今回の作品では、こういったことを強く感じました。

去年、「コンビニ人間」を読み、白羽の考え方に衝撃を受けましたが、村田さんの作品は、「今の自分の考えだけがすべてではない。」と感じる作品が多い印象でした。また、別作品も読んでみたいと思いました。

・書籍情報
初版発行日:2022年5月20日
発行元:河出書房新社
定価:本体630円+税別
備考
本書は2019年10月、単行本として河出書房新社より刊行された。


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