早見和真

・あらすじ
田中幸乃、30歳。元恋人の家に放火して妻と１歳の双子を殺めた罪で、彼女は死刑を宣告された。凶行の背景に何があったのか。産科医、義姉、中学時代の親友、元恋人の友人、刑務官ら彼女の人生に関わった人々の追想から浮かび上がる世論の虚妄、そしてあまりにも哀しい真実。幼なじみの弁護士たちが再審を求めて奔走するが、彼女は……。筆舌に尽くせぬ孤独を描き抜いた慟哭の長編ミステリー。

・感想
図書館に行ったときに、見つけた本です。前にSNSで誰かが紹介していた気がして、その時、一瞬、気になった本です。この話は、本当に暗い話でした。救いようのないところばかりで…。

また、借りてきてから知ったのですが、早見和真さんの作品らしいです。過去に、この方の作品「店長がバカすぎて」シリーズを読んだことがあり、その小説が、とても、ユーモアあふれて、明るめな話だったので、それと正反対の作風にギャップを感じました。

「誰からも必要とされなくて生きるのがつらい。」と思い続け、それでも誰も見つけることができなかった、別の形で死ぬを叶えてしまいそうな「幸乃」。一緒に過ごしたあの時の彼女の姿を思い浮かべ、「あの子がそんなことするはずがない。」というイメージから再審を要求して焦る、旧友。突き放して、別の女性を見つけた彼氏。彼女を横から見守る刑務官。それぞれの葛藤が描かれていました。結局、誰が原因で、最悪の事態が起きてしまったのか。もちろん、放火殺人という罪は決して許されるものではありませんが、これが、幸乃だけに責任があるのかと思うところでした。

それぞれが動いているので、時に受け入れられなくて、ぶつかったりする場面も多かったです。「『自分で死ぬのは恥だ』と元恋人に言われ、『自分で死ぬ』という選択肢を奪われたと思った幸乃」、「再審のために証拠を探す翔に、嫌がる幸乃。」など、それぞれの傲慢さが原因で、複雑に絡まりあう様子が描かれていました。

こういった場面を読んだときに、辻村深月さんの『傲慢と善良』によく似ていると思いました。結局、人は自分が正しいと思っていても、それが、他の人から見ると傲慢で、時にそれを否定されたことで、カッとなって、争ったりすると、読了したときに感じました。

自分の考えを相手に伝えるときに、たとえ、気を付けたとしても、誰かからは「傲慢だ」と思われてしまうこともあり、それも「人それぞれの個性なのだな」と感じました。

・書籍情報

第一刷発行日：2017年3月1日

発行元：新潮社

定価：本体740円（税別）

備考
2014年8月新潮社より刊行。