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エンタープライズ営業の方法〜大手企業のお作法を知り、カスタマーサクセスを実現する

openpage代表取締役/実践カスタマーサクセス著者の藤島誓也です。
openpageでは大手企業様との商談も増えています。加えて、大手企業様に対する営業やカスタマーサクセスの強化という相談も増えています。
そこで、両取引の経験を活かし、本記事では口頭でお話ししているエンタープライズ営業のポイントをまとめました。

大手企業だからといって、いきなり大きな発注はできない

Salesforceの営業責任者を務めたデイビッド・ルドニツキー氏も、大手顧客との商談は小さくてもいいからなるべく早くクロージングし、取引の中で大きくしていくべきとアドバイスをしていました。
大手企業というと、いきなり大きな金額を発注するようなイメージがありますが、実態はまず小さな1チームなどでpoc(実験)的に取り組み、うまくいけば翌期や翌年度の予算で大きく投資するという進め方をします。
そのため、1年目で投資できる金額上限と、翌年以降、そして最終的に投資できる金額上限は違います。
チーム数、製品数、従業員数は限定的に行い、既存顧客のカスタマーサクセスを通じて段階的に取引単価を高めていく。これが大手企業様に対する営業/カスタマーサクセスの進め方です。

エンタープライズの取引を大きくするのはROI

誰もが知っているROIという言葉があります。
インベスト(投資)に対するリターン(効果)でROIです。

理論的には、Iのインベストを増やすには、それ相応のリターンが必要になります。
初回の取引でいきない大きな金額を請求しにくいのもそれが理由で、導入初期はいきなり派手に効果を上げるというのは普通は難しいです。
ですから、初年度からいきなり大きな金額は割けません。

そして、大きな取引にしていくためには、Rのリターンを定量的、定性的にお客様と握って進める必要があります。
どの会社でも、Rのリターンの優先度があります。経営上やらなくてはならない、数字を上げなくてはならないものをどの会社も毎年考えて用意しているのです。
そしてこれを進める組織体や、プロジェクト、施策などがあります。中には通常業務の改善として進めるものもあれば、新しい業務をプロジェクトとして進めることもあるでしょう。

大手企業様とは、その文脈に沿った形で自社の提案を行わなくてはなりません。顧客の優先度に沿う形で成功のイメージ(=リターン)を合わせて提案していくことで、顧客の信頼は増していきます。
なお、openpageの機能では、顧客からのヒアリング内容を整理し、顧客と共有して優先度が合っているか確認したり、提案仮説を持って行ってフィードバックしてもらうことができます。
顧客との打ち合わせを重ねる中で、顧客の取り組みの優先度を把握し、それに合わせる提案になっているかを顧客にもチェックしてもらいながら進めることが重要です。

大手企業としての形式・儀式・ルールがある

例えば、この人の確認が必要、この書類が必要、このセキュリティはクリアしなければならないなど、形式やルールが存在します。
これは、顧客の担当自体も好きでやっているわけではありません。面倒だと思いながらも、会社のリスクを軽減するルールとして設定されているので、破ってはならないものとして行っているものです。

そもそも、なぜルールがあるかと言えば、大きな組織のためクリティカルな業務事故が起こらないようにするためです。どんな定めにも意図があります。これを尊重して、なるべく顧客担当に負担がかからないよう考慮しなければなりません。

また、話を通さなくてはならない役職者(大手企業の役員様)と、30分だけでも顔を合わせる、といったこともあるでしょう。形式的な通例だとしても、適当には済ませられません。
しかし、先方は、報告は上がっているものの、あまり詳しい状況を認識してなかったりするものです。
エレベーターピッチのごとく、短時間で素早くこれまでの経緯や取り組み、共に動くつもりの施策やゴールなどを話せるようにしておくといいでしょう。

openpageでは、上長報告用に短文や3〜5行くらいで共有内容をまとめる、という機能があります。
明文化のうえ、要点をわかりやすく共有することで役職者様の負担と、担当者様の心配や懸念とを取り除くことができるのです。

大手企業にはITリテラシーが高くない人もいる

大手企業には50代の社員も多く在籍しています。いわゆるミレニアル世代とは異なり、SNSやスマートフォンを使わない人も会社によっては多いです。
複雑な機能はそもそも触りたくないし、案内されるのも嫌だと思われています。

ですので、イラストやステップ形式の案内で、動画も活用しつつ、平易ですっと頭に入る内容で提案を準備することも時には必要です。

自分ごとで考えるなら、いきなり知らない外国語で話しかけられるようなものです。もし外国語で話しかけられるなら、極力ゆっくり、基本的なものに絞って話してほしいはずです。また出来るなら外国語でなくわかる表現で話して欲しいでしょう。

同じく、なるべく脳に負担がかからないように案内するという努力が必要です。伝わるように考えてコミュニケーションをしましょう。
説明がわからないのは、たいがいは顧客ではなく自分らの提案が悪いからです。

顧客がわかるためには、説明を分ける必要があります。なるべく顧客の課題や優先度のトップ3に対して、それに対応する提案として整理して話したほうがいいでしょう。

また、自分らはITが詳しいけれど、顧客がこれまで行ってきた業務や歴史、専門性については詳しいわけではないという、立場を強く自覚しましょう。
ITがすべて偉いというわけではありません。お客様のほうが自分らより詳しい領域はいくらでもあります。

相手の専門性やプロフェッショナルな分野に興味と聞く耳を持ち、お客様の価値観や仕事の進め方などを理解しようとする姿勢が重要です。

私はopenpageで逐一メモを取るようにしています。取ったメモの中から、深ぼるポイントはどこか考え、時おり深ぼる質問を行って、自分らも顧客から学ぼうとするのです。

営業活動とは双方向のもの。自社の提案をお客様に伝えつつ、お客様としてやりたいことや課題意識は共有してもらいながら、共にいい方向に向かってパートナーとして取り組むことが理想です。
これは営業部門でもカスタマーサクセス部門でも基本姿勢としては変わりません。

大手企業様との取り組みをゴールとステップで考える

先に述べたように、顧客には優先度があります。大手企業様と話し合うべきは、双方で取り組んだときの一番いいゴールイメージの擦り合わせです。もちろん、理想の姿は夢であり、絵に描いた餅になりやすいです。しかし、聞くだけでモチベーションが上がるような目標がないと、複数人を動かすことは出来ません。

大手企業で何かを動かすには体力や根気がいるものです。反対する人はいくらでもいるので、それでも通して成功させようとする気概が必要です。

目標がないと、ちょっとした反対で簡単に頓挫してしまいます。
まずは、これを一緒にやったら夢がありそうだと関係者で思い描き、ポジティブなエネルギーあるプロジェクトにするようにするべきです。

そして、そのうえで、具体的なプロセスやタスクに分けましょう。
大手企業であれば、組織体力があるので、新しい取り組みを行うための人のリソースを貼ることもできるはずです。
とはいえ、どんな仕事もアサインされた数人だけで進められるものではないので、プロジェクトメンバーと話しつつ、全社展開に向けてどんなステップで双方展開していくかを考えなければなりません。

形式ばったガントチャートというよりは、ざっくり、達成目標のようなものを作り、まずはこれを出来るようにして、そのためにこれとこれを進めよう、とスクラムを組んで共に取り組むことが効果的です。

openpageでは、目標から逆算したときにどんなタスクが双方発生するかを検討し、todoをデジタル管理する機能があります。
お互いに前に進めるためのタスクを認識しあって、目標に向かってポジティブに進むことができるようになります。

大手のかんばんを背負ってるガバナンス意識

大手企業のかんばんは、重いです。
大手出身者がSNSをあまりやらないのは、リスクがあるからです。
給与が高い、住宅ローンが借りやすいなどメリットもありますが、その分、他の人に見られる、失敗したときの会社に与える損害が大きいなどのデメリットもあります。

だから、あまりいたずらに大手企業と取引してる、提案してるという話は営業として外で話すべきではありません。
有名企業であればつい話題に出してしまいますが、基本は許可が出ている会社しか出さないべきです。

だいたい、取引契約の中にはほぼすべての契約書に機密保持の条項が含まれているので、クライアントの話は原則はNGです。
そんな意識で取り組まないと、ヒヤリハットが発生します。
そうならないよう引き締めた態度で商談に臨む。そうすると、自ずと、その姿勢がメール文面や電話の声色、打ち合わせの服装などに表れます。大手企業のパートナーとなるためには、顧客と同じくらいの高いガバナンスの意識を持って仕事に取り組むべきです。

組織変革には変わったキーマンが必要

とはいえ、大手企業の中でもルールブレイカーな人がいます。
これまでのやり方を壊す、ルールは破ろう、新しいことをしなければダメだ、というタイプの人です。
大手顧客との取引にはこういったタイプの人が不可欠になります。

なぜなら、大手になるほど反対する人は増えるからです。現状維持のほうが楽だったりします。失敗のリスクも高いです。
だから、新しい取り組みをしようというのは、ちょっと変な人じゃないといけません。

もちろん、変な人として相手にされない人ではなく、この人はめちゃくちゃだけど推進力がある。新しい取り組みならこの人に任せれば安心。ハラハラするが面白いことを仕込んでくれる。
そういった人が、これまでにない風を運んできて、実際に新しい取り組みを成功させてしまうのです。

大筋の企業変革のストーリーと、社内でどう変革を進めるかの人のアサイン、進め方のプロセスなどはこのキーマンと話を進めるといいでしょう。
もちろん、こういう人ばかりではなく、慎重な人もいらっしゃいます。慎重な方に対しての尊重やフォローも忘れてはいけません。
改革派と安全派の両方の目線をいったりきたりできるのが良い営業です。

大手企業向けエンタープライズ営業/カスタマーサクセスのまとめ

いきなり大きな取引はできません。リターンを重ねていって、投資するに値する企業や製品であると信頼を勝ち取りましょう。
取引の過程では、形式的な対応や反対する人など、取引が止まってしまう理由はいくらでもあります。だから顧客が重要と捉える取り組みや課題を把握しながら、優先度の高いアクションとして自社を認識してもらいましょう。
重要な仕事として進めていくと、つい外に話したくなりますが、高い危機管理意識を持って我慢しましょう。改革意識の高いキーマンを見つけて、現状維持の圧力を乗り越えるのです。

大手企業様で社内の営業組織を改革したい。
また大手企業様への営業を強化したい。
という企業様は、openpage宛にお気軽にご相談ください。