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均衡理論(3):経済の記述

前回の部分均衡理論に続き、一般均衡理論の議論に入る。今回は議論のセットアップとして、経済の記述方法と効率性の定義、更に価格メカニズムによって達成される価格均衡の定式化を行う。連載はこちら。


経済の記述

$${N}$$種類の、$${I}$$人の消費者と$${J}$$社の企業$${(N, I, J < \infin)}$$からなる経済$${E}$$を考える。各消費者$${i=1, \cdots, I}$$は消費集合$${X_i \subset \mathbb R^N}$$と$${X_i}$$の上で定義された選好関係$${≿_i}$$によって記述される。各企業$${j=1, \cdots, J}$$は生産集合$${Y_j}$$で記述され、その総和$${\displaystyle\sum_{j=1}^J Y_j}$$を総生産集合とする。また、$${\bar\omega\in \mathbb R^N}$$を$${N}$$種類の財の総初期賦存量とすると、$${\displaystyle\sum_{j=1}^J Y_j+\{\bar\omega\}}$$は生産可能性集合を表す。これらの組として経済を以下のように記述する。

経済:$${E=((X_i, ≿_i)_{i=1}^I, (Y_j)_{j=1}^J, \bar\omega)}$$

特に、$${\forall j\in\{1,\cdots, J\}:Y_j=\{0\}}$$である経済を純粋交換経済という。

消費者$${i}$$の消費計画$${x_i}$$、生産者$${j}$$の生産計画$${y_j}$$はそれぞれ$${x_i=(x_i^1,\cdots, x_i^N),     y_j =(y_j^1, \cdots, y_j^N)}$$と表される。この経済における配分とは、ベクトル$${(x_1, \cdots, x_I, y_1, \cdots, y_J)\in X_1 × \cdots × X_I × Y_1 × \cdots × Y_J(\Leftrightarrow \forall i, j,   x_i \in X_i \land y_i \in Y_J)}$$のことであり、配分が実行可能であるとは、以下を満たすことである。

実行可能性条件:$${\displaystyle\sum_{i=1}^I x_i=\displaystyle\sum_{j=1}^J y_j +\bar\omega \Leftrightarrow \displaystyle\sum_{i=1}^I x_i\in\displaystyle\sum_{j=1}^J Y_j +\{\bar\omega\}}$$

この意味において、消費配分の実行可能性には、各生産者の生産集合$${Y_j}$$を知る必要はなく、生産可能性集合$${\displaystyle\sum_{j=1}^J Y_j+\{\bar\omega\}}$$のみが本質的である(後述)。なお、一般に上式は右辺が大きな不等式$${≤}$$として記述されるが、余剰財を生産者が自由に処分可能な状況を仮定することで、両辺を等式で結んでいる。

財の種類には、生産工程に応じて原材料、中間生産財、最終消費財がある。典型的には、まず原材料は$${\bar \omega}$$として経済に与えられ、企業によって投入され、中間生産財が生産される。次に、中間生産財は企業によって投入され、更なる中間生産財や、最終消費財が生産される。最後に、最終消費財が消費者に受け渡され、消費される。以下の列ベクトルは$${\sum x_i=\sum y_j +\bar\omega}$$を表し、上から最終消費財、中間生産財、原材料を表している。右辺第一項の$${\sum y_j}$$において中間生産財を表す成分が全てゼロなのは、投入を負、産出を正とし、企業間でその量を足し合わせているためであり「生産/取引をしていない」ことを意味するわけではない。

$${\begin{pmatrix} + \\ \vdots \\ + \\ 0 \\ \vdots \\ 0 \\ 0 \\ \vdots \\ 0\end{pmatrix}=\begin{pmatrix} + \\ \vdots \\ + \\ 0 \\ \vdots \\ 0 \\ - \\ \vdots \\ -\end{pmatrix}+\begin{pmatrix} 0 \\ \vdots \\ 0 \\ 0 \\ \vdots \\ 0 \\ + \\ \vdots \\ +\end{pmatrix}      \begin{pmatrix} \\ \text{final consumption goods} \\ \\ \\ \text{intermediate products} \\ \\ \\ \text{raw materials} \\  \end{pmatrix}}$$

Pareto効率性

配分の望ましさに関する基準の一つはPareto効率性である。

Pareto効率性
実行可能な配分$${(x_1^*, \cdots, x_I^*, y_1^*, \cdots, y_J^*)}$$がPareto効率的であるとは、$${\forall i   x_i ≿_i x_i^* \land \exist i   x_i≻_i x_i^*}$$となるような実行可能な配分$${(x_1, \cdots, x_I, y_1, \cdots, y_J)}$$が存在しないことをいう

また、実行可能な配分$${(x_1', \cdots, x_I', y_1', \cdots, y_J')}$$が実行可能な配分$${(x_1, \cdots, x_I, y_1, \cdots, y_J)}$$をPareto改善するとは、$${\forall i   x_i' ≿_i x_i \land \exist i   x_i'≻_i x_i}$$となるときをいう。この概念を用いれば、ある実行可能な配分がPareto効率的であることを「その配分をPareto改善できないこと」だと言い換えることができる。Pareto効率性の定義に価格は含まれない。

Pareto効率性の概念には、企業の利益が考慮されていない。部分均衡理論における生産者余剰は株主の厚生を計測しているため、部分均衡理論と一般均衡理論においてPareto効率性の概念は矛盾しているように思われるが、一般均衡理論では株主も消費者であり、消費者の厚生は$${(x_1, \cdots, x_I)}$$によって完全に評価できるため、生産者余剰を用いる必要が無いと解釈される。

Pareto効率性は公平性を無視しているため、効率性の概念として弱いものだと考えられることがある。極論すれば、一人の消費者が全ての財を得て他の消費者は何も得られない場合も効率的となるためである。

一方、情報非対称性がある場合には任意の実行可能配分が実際に達成され得るとは限らないため、どの実行可能配分によってもPareto改善されないことを要請するPareto効率性は強すぎる概念と考えられることもある。契約理論、情報の経済学、不完備市場理論の文脈では、Pareto効率性よりも弱い概念が用いられる。これは、資源制約以外の条件も実行可能性に要請されるためである。例えば個人の特性を観察することの限界や、社会的・法的な制約があるため、単に資源制約条件さえ満たせば実行可能という訳ではない。この場合「Pareto改善する実行可能な配分が存在しないような実行可能配分を効率的」と定義すると、この効率性はPareto効率性よりも弱い条件となる。

また、次の2つの効率性の概念は、Pareto効率性の概念を消費者、生産者の効率性に分けて考えた概念である。

配分効率性
所与の$${(\bar y_1, \cdots, \bar y_J) \in Y_1 × \cdots × Y_J}$$に対して$${(\bar x_1^*, \cdots, \bar x_I^*) \in X_1 × \cdots × X_I}$$が配分効率的であるとは、配分$${(\bar x_1^*, \cdots, \bar x_I^*, \bar y_1, \cdots, \bar y_J)}$$が実行可能であり、かつ$${(\bar x_1^*, \cdots, \bar x_I^*, \bar y_1, \cdots, \bar y_J)}$$をPareto改善する実行可能配分$${(\bar x_1, \cdots, \bar x_I, \bar y_1, \cdots, \bar y_J)}$$が存在しないことをいう。

生産効率性
$${(y_1^*, \cdots, y_J^*)\in Y_1 × \cdots ×Y_J}$$が生産効率的であるとは、

$${\forall n \in \{1, \cdots, N\}:\displaystyle\sum_j^J y_j^{n*} ≤ \displaystyle\sum_j^J y_j^n   \land   \exist n:\displaystyle\sum_j^J y_j^{n*} < \displaystyle\sum_j^J y_j^n}$$

を満たす$${(y_1, \cdots, y_J) \in Y_1 × \cdots × Y_J}$$が存在しないことをいう

$${(x_1^*, \cdots, x_I^*, y_1^*, \cdots, y_J^*)}$$がPareto効率的であるならば、$${(x_1^*, \cdots, x_I^*)}$$は配分効率的である(これは生産経済を純粋交換経済に帰着させるときに重要である)。一方、一般にPareto効率的だからといって生産効率的であるとは限らないが、ある消費者の選好$${≿_i}$$が単調性を満たす時、$${(x_1^*, \cdots, x_I^*, y_1^*, \cdots, y_J^*)}$$がPareto効率的であるならば、$${(y_1^*, \cdots, y_J^*)}$$は生産効率的である。

$${\because}$$消費者$${i}$$の選好$${≿_i}$$が単調性を満たす時、$${x_i^* ≿_i x_i \Leftrightarrow x_i^* ≥ x_i}$$が成り立つ。いま、$${(x_1^*, \cdots, x_I^*, y_1^*, \cdots, y_J^*)}$$がPareto効率的にもかかわらず$${(y_1^*, \cdots, y_J^*)}$$は生産効率的でないと仮定すると、定義より$${\forall n \in \{1, \cdots, N\}:\displaystyle\sum_j^J y_j^{n*} ≤ \displaystyle\sum_j^J y_j^n   \land   \exist n:\displaystyle\sum_j^J y_j^{n*} < \displaystyle\sum_j^J y_j^n}$$を満たす$${(y_1, \cdots, y_J) \in Y_1 × \cdots × Y_J}$$が存在するが、厳密に$${\displaystyle\sum_j^J y_j^{n*} < \displaystyle\sum_j^J y_j^n}$$である財を$${n}$$とすると、他の条件を一定に保ったまま、$${x_i^n > x_i^* \Leftrightarrow x_i^n ≻_i x_i^*}$$を実現できることになる。これは$${(x_1^*, \cdots, x_I^*, y_1^*, \cdots, y_J^*)}$$がPareto効率的であることに矛盾する。従ってある消費者の選好$${≿_i}$$が単調性を満たす時、$${(x_1^*, \cdots, x_I^*, y_1^*, \cdots, y_J^*)}$$がPareto効率的であるならば、$${(y_1^*, \cdots, y_J^*)}$$は生産効率的である。

上記の証明から、Pareto効率性と生産効率性を両立させる十分条件として、特定の消費者があらゆる財について選好の単調性を満たす必要はなく、あらゆる財について少なくともある1人の消費者が、その財について単調な選好を持っていれば良い、ということが分かる。この仮定は、単調性(より多くの財の消費を好む)という比較的妥当な選好に対する仮定をあらゆる財について少なくとも1人に要求するに過ぎず、極めて弱い仮定といえる。

価格均衡

実行可能な配分$${(x_1^*, \cdots, x_I^*, y_1, ^* \cdots, y_J^*)}$$と価格ベクトル$${p \in \mathbb R^N}$$が価格均衡をなすとは、次の条件が満たされるときをいう。

価格均衡
①:$${\forall j \in \{1, \cdots, J\}, y_j \in Y_j: p\cdot y_j ≤ p\cdot y_j^*}$$が成り立つ
②:$${\forall i \in \{1, \cdots, I\}, x_i \in X_i: p\cdot x_i ≤ p\cdot x_i^* \Rightarrow x_i^* ≿_i x_i}$$が成り立つ

価格均衡配分は、その価格体系において利潤を最大化し、選好を最大化する消費計画に対して最大支出を与えるような実行可能な配分である(逆に$${p\cdot x_i ≤ p\cdot x_i^*}$$にもかかわらず$${x_i ≿_i x_i^*}$$とすると、$${p\cdot x_i^*}$$よりも少ない支出でより選好を増大させることができるため、$${x_i^*}$$が選好を最大化する消費計画ではなくなる)。

条件①は利潤最大化、条件②は選好最大化を意味する。条件②は、$${x_i^*}$$と同額の支出で購入できる任意の$${x_i}$$が$${x_i^*}$$よりも好ましいことはないことを意味する。条件①②は共に価格ベクトルに対して0次同次、つまり①$${\Leftrightarrow \forall \lambda \in \mathbb R_+: \lambda p\cdot y_j ≤ \lambda p\cdot y_j^*}$$、②$${\Leftrightarrow \forall \lambda \in \mathbb R_+: \lambda p\cdot x_i ≤ \lambda p\cdot x_i^*}$$である。従って、価格均衡配分$${(x_1^*, \cdots, x_I^*, y_1, ^* \cdots, y_J^*,p)}$$は0次同次である

価格均衡配分$${(x_1^*, \cdots, x_I^*, y_1, ^* \cdots, y_J^*,p)}$$は「価格メカニズム」によって達成される実行可能な配分だが、定義ではそのメカニズムに触れられていない。価格ベクトル$${p}$$は2種類の財に対する「交換比率」を表していると捉えられ、その比率を価値尺度と捉えれば、その価値とは価格に他ならない。その意味で、一般均衡理論は明示的な交換メカニズムを仮定しない価値の理論だと言える。

価格均衡の特徴

  1. 価格均衡は所得・富の源泉の在り方によらない均衡概念であり、財の所有構造は明示されていない

  2. $${p\cdot x_i^*}$$はいわば個人の可処分所得であり、$${p\cdot \Bigg(\displaystyle\sum_j y_j^* + \bar\omega\Bigg)}$$が国民所得ないしGDPにあたる。実行可能性条件より$${\displaystyle\sum_i p\cdot x_i^* = p\cdot \Bigg(\displaystyle\sum_j y_j^* + \bar\omega\Bigg)}$$となるため、GDPは消費者に過不足なく分配されている

  3. 完全競争市場が仮定されており、消費計画を変更しても価格ベクトル$${p}$$は変わらないと消費者は想定している。同様に企業側も生産計画を変更しても価格ベクトル$${p}$$は変わらないと想定している

  4. 市場の完備性、つまり富水準$${p\cdot x_i^*}$$を任意の財の購入に充てることができると仮定されている。結果、選好最大化の制約条件が一本の不等式$${p\cdot x_i ≤ p\cdot x_i^*}$$のみで与えられている

  5. 売買量の制約がないものと仮定されている

代表的生産者と配分効率性

$${L}$$財、$${I}$$消費者、$${J}$$企業よりなる経済$${E=((X_i, ≿_i)_i, (Y_j)_j, \bar \omega)}$$と$${L}$$財、$${I}$$消費者、1企業よりなる経済$${\hat E=((X_i, ≿_i)_i, \sum_j Y_j+\{ \bar \omega\},0)}$$を考える。

上述の通り、消費配分の実行可能性には、各生産者の生産集合$${Y_j}$$を知る必要はなく、生産可能性集合$${\displaystyle\sum_{j=1}^J Y_j+\{\bar\omega\}}$$のみが本質的であるが、これはPareto効率的配分、価格均衡配分にも当てはまり、省略的な記載だが以下のようにまとめることができる。

代表的生産者と配分効率性
$${(x_1, \cdots, x_I, y_1, \cdots, y_J[,p])}$$が$${E}$$の実行可能配分/Pareto効率的配分/[価格均衡配分]ならば、$${(x_1, \cdots, x_I, \sum_j y_j + \bar \omega[,p])}$$は$${\hat E}$$の実行可能配分/Pareto効率的配分/[価格均衡配分]である。
逆に、$${(x_1, \cdots, x_I, \hat y[,p])}$$が$${\hat E}$$の実行可能配分/Pareto効率的配分/[価格均衡配分]ならば、$${\sum_j y_j + \bar \omega=\hat y}$$なるある$${(y_1, \cdots, y_J) \in Y_1 ×\cdots × Y_J}$$が存在し、$${(x_1, \cdots, x_I, y_1, \cdots, y_J[,p])}$$は$${E}$$の実行可能配分/Pareto効率的配分/[価格均衡配分]である。

【証明の方針】一方の経済で配分の効率性を仮定し、そこから他方の経済の配分を導き、それが効率性を満たし、かつ前者と同様の直積集合に含まれることを示し、更にそれを両側で示せばよい。

$${\because (x_1, \cdots, x_I, y_1, \cdots, y_J)}$$が$${E}$$の実行可能配分/Pareto効率的配分であるとき、$${\hat y =\sum_j y_j+\bar \omega}$$と定めると$${\hat y\in \sum_j Y_j+\{\bar \omega\}}$$を満たし、$${(x_1, \cdots, x_I, \hat y)}$$は$${\hat E}$$の実行可能配分/Pareto効率的配分である。

逆に、$${(x_1, \cdots, x_I, \hat y)}$$が$${\hat E}$$の実行可能配分/Pareto効率的配分であるとき、$${\sum_j Y_j+\{\bar \omega\}}$$の定義より、ある$${(y_1,\cdots, y_J)\in Y_1×\cdots × Y_J}$$が存在して$${\hat y= \sum_j y_j + \bar \omega}$$が成り立つ。従って、$${\sum_i x_i=\sum_j y_j + \bar \omega}$$が成り立ち、$${(x_1, \cdots, x_I, y_1, \cdots, y_J)}$$は$${E}$$の実行可能配分/Pareto効率的配分である。

上記の議論で実行可能配分に関する同値性は示したため、$${E}$$の下で選好最大化する実行可能配分は$${\hat E}$$の下でも選好最大化する実行可能配分となり、その逆もまた真である。よって、以下では利潤最大化条件に関する同値性を示せば十分である。

$${E}$$に対する利潤最大化条件が満たされているとし、その時の実行可能な配分を$${(x_1^*, \cdots, x_I^*, y_1, ^* \cdots, y_J^*)\in X_1 × \cdots ×X_I × Y_1 × \cdots × Y_J}$$とすると、$${\forall j, y_j \in Y_j:p\cdot y_j^* ≥ p\cdot y_j}$$が成り立つ。この時辺々$${j}$$について総和をとれば、以下の不等式が成り立つ。

$${p\cdot\displaystyle\sum_j y_j^*=p\cdot y^*≥ p\cdot y=p\cdot\displaystyle\sum_j y_j}$$

辺々に定数$${p\cdot\bar\omega}$$を加えれば、$${p\cdot(y^*+\bar\omega)=p\cdot \hat y^*≥p\cdot \hat y=p\cdot(y+\bar\omega)}$$となるが、これらは$${\hat y^* \in \sum_j Y_j +\{\bar\omega\},   \hat y \in \sum_j Y_j +\{\bar\omega\}}$$を満たすので、$${\hat E}$$の利潤最大化条件を満たす。

逆に$${\hat E}$$に対する利潤最大化条件が満たされるとき、$${\forall j, \hat y \in \sum_j Y_j+\bar \omega: p\cdot\hat y^*≥ p \cdot \hat y}$$が成り立つ。この時定義より$${\hat y = \sum_j y_j +\bar \omega}$$を満たす$${(y_1, \cdots, y_J)\in Y_1 ×\cdots × Y_J}$$が存在し、$${p\cdot \big(\sum_j y_j^* +\bar\omega\big) ≥ p\cdot \big(\sum_j y_j +\bar\omega\big)}$$を満たす。特に$${\forall \hat y \in \sum_j Y_j+\bar \omega}$$について成り立つことに注意すれば、利潤最大化条件を満たす配分から$${\forall k \in \{1, \cdots, J\}}$$だけ異なる生産計画に対しても不等式が成立するため、以下の関係が成り立つ。

$${p \cdot \Bigg(\displaystyle\sum_{j} y_j^*+\bar\omega\Bigg) ≥ p \cdot \Bigg(\displaystyle\sum_{k\not= j} y_j +y_k+\bar\omega\Bigg)\Leftrightarrow p\cdot y_k^* ≥ p\cdot y_k}$$

従って$${\forall j \in \{1, \cdots, J\}, y_j \in Y_j: p\cdot y_j^* ≥ p\cdot y_j}$$が成り立つ。

次回からは、今回のセットアップを用いて、ミクロ経済学の重要な帰結である厚生経済学の基本定理を取り扱う。

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