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動かす力/【文章のきほんコース受講生作品 Vol.1】

この文章は、大阪編集教室の「文章のきほんコース」受講生作品です。
課題原稿に添削が入って書き直したものを、一部編集した文章になります。
詳しい授業の内容はこちらからご確認ください。

今回の課題のテーマは「旅」でした。

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動かす力

私はあまり旅行をする方ではなかった。嫌いという訳ではないが、家族で行く事も無く、周りに旅行好きな友達もいない。とは言え、一人で行くほどの勇気も情熱も無かった。そんな私が、今では年に何度も旅行をするようになるとは想像もしていなかった。

30代前半、私はとある音楽ジャンルのファンになり、「推し」ができ、世間で言う「オタク」になった。それ以降、公演があれば全国各地、チケットが取れたらどこへでも行くようになった。

昨年の12月は福岡だった。往復の新幹線とホテル代合わせて2万円ちょっとの激安ツアー。年に何度も行くので贅沢はできず、毎回貧乏旅行だ。ネットを駆使したり、回数を重ねたりするうちにすっかり貧乏旅行に詳しくなってしまった。これもライフハックの一つ。オタクには必須の知識なのだ。

友人とは現地で落ち合う約束になっていた。友人と言っても、一度も会った事はなく、ネットで知り合った同じオタク仲間だ。私は人見知りなので最初は緊張したが、趣味が同じという事で、あっという間に打ち解けるのはオタクならではだと思う。

公演後は、楽しみにしていたもつ鍋を食べる予定になっていた。福岡在住の友人が美味しいお店に連れて行ってくれる事になっていた。聞けばその2人も今日が初対面らしく、改めて独特な縁の繋がりを感じた。もつ鍋の後は中洲の屋台へ行き、福岡の夜を存分に楽しんだ。話が盛り上がり、気が付け
ば夜中の3時。友人と別れた後も興奮が収まらない私は、そこからホテル近くのバーに一人で入った。お客さんは私だけだったので、店員の男性に話し相手になってもらい、福岡の事を色々と教えて貰った。こんな事ができるようになったのも、オタクになり、度胸が付いたからだ。結局、ホテルに帰ったのは朝の5時。沢山の出会いと、美味しいご当地グルメ、そして推しに会えた幸せを感じながら眠りについた。

今はコロナの影響でほとんどの公演が中止となり、最近はどこにも行けていない。代わりにネット配信で公演をしてくれてはいるが、やはり実際に行って体感する喜びにはほど遠い。席はどこだろう、何を着ていこう、友達にどんなお土産を渡そうなどと考える事も醍醐味であり、チケットが取れた時から旅は始まっているのだ。好きという感情はすごい。気持ちだけでなく、私をこんなにも動かしている。

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