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「3年で日本一の人事部にして」2年目の取り組み備忘禄① 経営課題との向き合い編

前回、「日本一の人事部」へ向けて下記テーマで執筆しました。

・「日本一の人事」ってなんだ?
・「日本一変化に強い人事部」に求められること
・「日本一変化に強い人事部」を作るための現状と課題
・人事部運営の取り組み
 ① 目指す人物像、定義しました。
 ② キャリアパス、定義しました。
 ③ ジョブローテ、はじめました。
 ④ 評価にも、組み込みました。

https://note.com/oshima5555/n/n6af41d2be4a2

今回、具体的にその成果はどうだったのかというお話です。
挑戦の過程での経験と教訓もノウハウ化のためにアウトプットしながら整理していこうと思います。

具体的な話をする前に、DMMの人事部の業務内容やボリューム感などを共有しておいた方がイメージが湧きやすいと思いますので、DMMという会社と人事領域における経営課題について紹介する今回と、人事部運営について振り返る次回の2回に分けて執筆しています。

DMMの全体感

数字で見るDMMグループ

DMMではグループシナジーを活かし、1つのIPをアニメ、ゲーム、舞台、グッズなど、様々な形で楽しめる立体的なコンテンツ体験を実現しています。
また、DMMらしい最新テクノロジーを活かしたオフラインの施設も運営しながら、新しいエンターテイメントの形をご提案しています。

エンターテインメント領域での挑戦

例えば、DMM TVというサービスにおいては、月額550円でアニメ約5,200作品、17万本以上※のエンタメコンテンツが見放題。 国内トップクラスの新作アニメカバー率を追求したサブスクリプション型総合動画配信サービス。 アニメやバラエティを中心とした幅広いラインナップに加え、オリジナル番組、独占 配信、先行配信作品も多数。 DMMブックスやその他、DMMのエンタメサービスとシームレスに繋がるエンタメ体験を提供しています。 ※2023年4月時点

人事領域における経営課題

上げだせばキリがないのですが、優先的に取り組むべきと捉えているのは大きく2つほどあると考えています。

事業多様化に伴うマネジメント難易度・負荷増

多様な事業展開をしているDMMではあるのですが、規模が大きくなりつつある中で、そのスピード感も相まって、経営層が網羅的にリアルな事業組織の情報を基に意思決定をすることの難易度・負荷が高まっています。

執行役員制度を設けながら、責任と権限を委譲するような取り組みも進めていますが、デジタルプラットフォーム上に多くのサービスが共存していることもあり、全体を横串で見渡しながら優先順位付けの情報整理や人材の再配置などをする難易度が上がり続けています。

全体を横串で整備しながら課題を解決していくための調整・統制力を持った人材は希少であり、中途採用を中心に事業の立ち上げに合わせて人員補強をしてきた弊社において、組織と組織を繋ぐことが出来る人材、横断的な課題解決人材の不足というのも経営課題になりつつあると感じています。

事業開発と撤退の対応工数増

さらに、事業撤退や労務対応など一人一人の人生と向き合いながら丁寧な対応が求められる領域に、優先的にリソースを割いていく必要性もあり、事業にドライブをかけていくようなHRBPや人事企画領域に対して必要な人員を投資できていないという課題感も感じておりました。

課題解決に向けた人事部の目標

上記経営課題に対して、下記3つを組織目標として掲げました。


  1. 経営層が事業課題把握/支援可能な仕組を構築

  2. 幹部・スペシャリスト人材強化

  3. 中長期的な競争優位性を高めるための環境、運用基盤構築


1.経営層が事業課題把握/支援可能な仕組を構築

この課題との向き合い自体はここ数年ずっと取り組み続けており、HRBP組織の立ち上げもこの課題との向き合いから生まれたものでした。

シンプルに事業数に対して支援できる人数が圧倒的に少なかったため、別の経営推進組織との連携を強化させたり、人事の新規採用を加速度的に実施したり、HRBPメンバーの職務要件・業務標準化・スキル強化し、役割を明確化できるようなアプローチを始めたりしました。

HRBP/事業部人事評価シート

経営との向き合いにおいては、役員それぞれとの定例の場を設けながら会議をブラッシュアップしていき、そこで出た経営課題を積極的に取締役会議に上程したり、入退社の従業員の面談結果やアンケート結果など生々しい経営に対しての課題意見を報告し続けたりすることが出来ました。

2. 幹部・スペシャリスト人材の強化

経営課題に対してリーダーシップを持って解決できる人材が不足していたため、人材確保のために出来ることを色々とトライしました。

例えば、給与制度の改定です。「抜擢・登用の機会増加」と「市場適正給与への是正」の両立を目指し、給与の内訳を整理することで環境変化や実力に合わせた調整がしやすい制度設計にしました。職責を果たしたり、成果を出した人に対して、しっかり報酬還元 をできる枠組みにしています。

新規採用においても、高い責任を伴う場合はそれに見合った報酬が必要となりますが、この制度を適用させた労働条件を作ることが出来るようになったため、職種や事業体に合わせて市場感に合わせた柔軟な報酬提示をできるようになったと考えています。

そのほか、採用職種別での担当集約化と全社優先順位づけなども推進してきました。

経営層、事業責任者、事業開発、マーケティングストラテジスト、pdm、エンジニアリングマネージャーなど、どの部署でもニーズがあるような職種に関しては、一次面接担当を集約し、その後、本人の意向や適正はもちろんですが、各事業の優先順位に合わせてポジション提案をしていくようなアプローチも取り入れました。

3. 中長期的な競争優位性を高めるための環境、運用基盤構築

労務組織の強化
労務業務というと給与計算業務や、その他事務業務が限定され、ルーティン化されやすいように思われがちですが、その範囲は非常に広く、給与・社会保険・就業規則、労働法関連まで「企業における労働に付随する関連業務全般」を指しており、その実情は非常に高難易度な業務であると感じています。

特にDMMでは、新規事業の立ち上げや、子会社の統廃合などが頻繁に行われるため、労務業務も常に変化に対応していく必要があります。
そこで、昨年度、子会社管理のPMIチームを立ち上げ、労務メンバー全員が、労務業務全般に対応できる体制の構築を目指して次の2点を着手しました。

  1.  人事労務のスペシャリストを定義

  2.  成長機会の創出_労務PMIのサブ担当制

これらの取り組みを積極的に推進することで、労務メンバーが、会社全般に渡る労務管理を一人で担当できることを目指しています。

データ基盤の強化
人事、社内に点在していた各種情報をGCP環境にデータベースを構築し一元管理できるようにしました。基本的な人事情報だけでなく勤怠・工数情報、アンケート、労務対応ログ、採用情報など人事が関連する情報をデータベース化することで可視化、分析がしやすい環境を構築しました。

また、よくありがちなデータが現実と一致しないことを防ぐために、あくまでもデータ分析は定量的な結果として、HRBPが持っている定性情報や事業状況などを踏まえた活用ができるようにしています。

まだまだ改善の余地はあるものの、データ基盤の構築はできたので、これからデータの活用やAI導入など新しいことにも挑戦し、分析業務の生産性向上、高度化を図っていきたいと考えています

業務改善の強化
業務改善を強化したのは、生産性を上げるとともに、前述のデータ基盤の強化のために正しいデータを作ることを目的として実施しました。人力で点在する各種情報をまとめるながら業務を回していた実態があり、当然ながら、ミスが発生したり、業務量が多く残業が増えていく実態がありました。

その中で、ただシステムを導入するなどのアプローチは取らず、本来あるべき業務フローは何か、業務品質を上げるにはどんなチェックが必要か、今後の法改正も見据えてどういうことを考慮しておくべきかなどをあらかじめ整理し、それに必要なツールを開発しました。

ミスをすることも人の問題ではなく、仕組みの問題と捉え、どんなフローにすればミスがなくできるかを考えるツールのブラッシュアップを継続して実施しています。

人事部の業務実態と課題

合同会社DMM.comの人事部は、グループ会社20数社のシェアドサービス会社としての人事の機能も持ち合わせており、採用、就業規則作成、勤怠管理システム導入、給与労務管理、転籍調整、評価制度作成、キャリア面談、従業員ケア面談、異動転籍調整、労働条件通知、労務トラブル対応、ストレスチェック...etc その業務範囲は多岐にわたります。

最近は、事業の立ち上げならびに撤退の頻度がかなり多く、上記業務の遂行難易度が年々上がっている実態があります。昨年は特に事業展開が早く、10事業の立ち上げ支援、5事業の撤退支援が発生しております。

立ち上げや撤退時には労務知識だけではなく、関係各所との調整能力や税務ストラテジーを基にした各種対応が必要になり、任せられる人を増やしていく難易度の高さを感じています。

前期の総評

人事部キックオフ資料より

上記のパーセントの数字はイメージなので、適当に入れているところがありますが、前回の記事でも触れたように、「柔軟性と変化への適応」を上げていくための様々なアプローチを取ってきたことと、「やらなければ事業が立ちあがっていかない」という健全な危機感の中で、新規事業の立ち上げや撤退に伴う対応力が上がっていきました。

一方で、個社最適にならないように全体設計を都度見直す必要性がありましたし、経営からの期待値が上がっていく中で特定の部門に拘泥しない全社最適な人事機能の強化も改めて見つめ直す必要性が直近では出始めていました。


なぜ全社視点が必要かの再認識

シナジーの創出: 各部門が独立して行動するよりも、連携を取りながら経営を行うことで、部門間のシナジーを生むことができる。これにより、企業全体としての効率や生産性が向上する。
情報の一元化: 全社視点での経営を行うことで、重要な情報やデータが一元化され、迅速な意思決定が可能となる。部門間の情報の非対称性を減少させることができる。
リソースの最適な配分: 全社の視点からリソース(人、資金、時間など)を最適に配分することで、企業全体のパフォーマンスを向上させることができる。
経営の方向性の統一: 全社視点での経営を行うことで、企業のミッションやビジョンに対する方向性を統一し、部門間の摩擦を減少させることができる。

特定の部門の視点だけでの経営のリスクや課題

  • 情報の非対称性: 一部の部門にのみ情報が集中することで、他の部門が必要な情報にアクセスできない状態が生じる。これにより、経営判断の遅れや誤判断のリスクが高まる。

  • 経営の方向性の不統一: 各部門が独自の方向性を持って行動することで、企業全体としての経営の方向性がバラバラになり、効率的な経営が難しくなる。

  • 部門間の摩擦: 特定の部門にのみリソースや情報が集中することで、他の部門との摩擦や対立が生じる可能性がある。これにより、組織全体のモラルや生産性が低下するリスクがある。

  • リソースの非効率な利用: 一部の部門にリソースが集中することで、そのリソースの最適な利用が難しくなり、企業全体のコストが増加する可能性がある。


現代のビジネス環境は急速に変化し、業界の境界も曖昧になってきています。そのため、自社の事業ポートフォリオを定期的に見直し、リソースを再配分する必要があると考えています。

そのようなポートフォリオ変革を進める中で、事業部門が抱える課題を補完したり、全社横断でのガバナンスを強化する必要があり、人事部においては個別事業にも向き合いながら、特定の部門に拘泥せずに全社視点で経営を行うための課題について深く経営とディスカッションできる状態を目指しております。

次回、具体的に人事部運営と強化についての取り組みを振り返りつつ、経営課題や人事課題に対しての今後の方針について書き留めていきたいと思います。

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