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物語の基本骨子は、三分割で作れるという話。

「お話を書きたいぜ!」「物語を考えたいぜ!」と思っているけれど何から考えたら良いかわからないそこのアナタ! 本日の記事はそんなアナタに必見の内容になっています✨

 まず質問ですが、『物語』とはいったい何でしょう? 何を書けば『物語を書いた』ことになるのでしょう? それがわかりさえすれば『物語を書く』ことを、きちんと考えながら進められるようになるはずです。

 塾講師をしながら二十万字近く物語を書いた中で思った、私なりの『何を書けば物語を書いたことになるのか?』というお話。本日はひとつ、あなたの創作のご参考にしていってください🙇‍♂️


◆物語 = 『始まり』 > 『なんやかやある』 > 『終わり』

 想像してみてください。子供の頃から音楽が大好きで、寝るときとお風呂以外ではずっとギターを手放さない少年。彼の将来の夢は世界一のギタリストになること。今日は相棒のギターを片手に、人生初のオーディションを受ける日だ……!

 彼を主人公にしてハッピーエンドの物語を書くとしたら、物語のラストはどうなるでしょう? ……はい、そうですね。『なんやかやあって、少年はついに超有名ギタリストになることができた! めでたしめでたし!』と終わるはずです。

 では今度は、学校で友達がひとりもおらず、本当は人と接したいのに、いつも本ばかり読んでいる女の子を主人公にしてみましょう。彼女は悩んでいます。ああ、今日も一日、本としか目を合わせなかったわ。学校を卒業するまでに、たった一人でいいから、私にも友だちができないかしら……? しくしく。

 この場合のラストはどうなるでしょう? これもきっと考えやすいはずです。『なんやかやあって、女の子はついに、大切な友達を見つけることができたのでした。めでたしめでたし……』きっとそんな感じですよね?

 当然といえば当然の話なのですが、物語には『始まり』と『終わり』があります。そして両者の間を『なんやかやあって』が繋いでいる。何を当たり前のことをと思われるかもしれませんが、この三つに区分けされた構造がわかっていると、物語を考えるのにとっても有利なのです。

 物語には『始まり』があり『なんやかや』あってから『終わり』を迎える。騙されたと思って、まずはこれを覚えておいてください。次の章からは『始まり』『なんやかや』『終わり』それぞれのパートでいったい何を書いたら良いのか? それをひとつずつ考えていきます。

◆『始まり』は『主人公が持つ不足』を描く

 先程の例からもわかる通り、物語の『始まり』において、多くの主人公には何かの『不足』があります。夢を叶えたいのにうまく行動できないとか、理解者が欲しいのにシャイで人と話せないとか、みんなそれぞれ何かの『不足』がある。そしてそれを埋めるために、主人公は行動する必要に駆られるのです。

 物語はこの『主人公が持つ不足』を描くことで始まります。ミュージシャンになりたい青年がどこの会社にも相手してもらえず「どうしよう……」と途方に暮れているとか。理解者が欲しい女の子が誰かに話しかけようとして無視され、沈んでしまっているとか。あるいはバイオレンスな話だと、大好きな家族の待つ家へ帰ってきたら、全員が強盗に殺されてしまっていたとか。ね? 物語が動き出しそうでしょう?

 このお話で主人公はどんな不足を埋めるのか? どんなことについて頑張って、結果どうなったらゴールになるのか? 私達が最初に示さなければいけないのはそれです。どんな主人公が、どんな理由で、どんな不足を抱えているか。それを考えることで、物語の『始まり』をセッティングしましょう。

◆『終わり』=『不足が満ちる』あるいはそのバリエーション。

 さて、物語の『始まり』を考えましたが、実はそこから類推すれば、その物語がどうやって幕を閉じるのかは自然と予想がつけられます。最もシンプルな物語の終わらせ方――それは『不足が満たされる』こと。

 夢を叶えたい主人公ならその夢が叶うのがラスト。友だちが欲しい主人公なら友だちができるのが、復讐したい主人公ならそれをやり遂げるのがラストという具合です。物語の『始まり』で不足を作った時点で、幕引きはある程度定まるもの。素直に考えればオチをつけるのはそこまで大変ではありません。

 面白いのはここに、ある程度のバリエーションが入れられること。さんざん頑張った結果不足を満たすことができなければバッドエンドのお話になりますし、当初不足だと思っていたものが実は不足していなかったという『幸せの青い鳥』的なエンドもありえます。シリーズものの長いお話だと、途中で当初の不足が満ちて、新たな不足の話が始まるかもしれません。

 それぞれのバリエーションについてはまた別の記事で解説させて頂ければと思いますが、これで物語の『始まり』と『終わり』は考えることができました。あとはその間を埋めるだけ……! もう少しだけ頑張りましょう!

◆『なんやかや』は『主人公の成長』が埋める

 さて、主人公の目的から、物語の『始め』と『終わり』を定めました。次はその間をどう繋ぐか。この部分が最もバリエーション豊かで考えるのが面白い部分でもありますが、ここを埋める最もポピュラーな方法は『主人公を成長させること』。

 最初の例のギター少年なら、自分が気持ちよくギターを弾きたいあまりにバンドのみんなに合わせることができていなかったので、それを反省してみんなに合わせるようになったとか。本ばかり読んでいる女の子なら、ある時勇気を出して同じ図書委員の女の子に声を書けてみることにしたとか。

 キャラクターが成長することによって、成長する前の主人公では進むことができなかった道、いままで閉ざされていた道を進むことができるようになり、それに伴って結果がついてくる。それが物語の始まりと終わりを結ぶ『なんやかや』の正体です。

 そしてもうひとつ。『主人公の成長』を描くためには、冒頭の時点では『主人公はまだ未熟である』必要があります。彼/彼女には『不足』があり、それはなぜ不足しているのかというと、主人公に成長の余地としての『未熟さ』があるからなのです。

◆『始まり』『なんやかや』『終わり』を作ってみよう!

 さて、ここまでお読みいただきありがとうございます。これで最もシンプルな物語の基本骨子を、皆さんは理解したことになります。物語の大枠を作ることができるようになったはず。試しに一緒に作ってみましょう。

 物語の冒頭で、主人公はまだ『成長の余地』があり、そのおかげで何かの『不足』を抱えた状態にあります。今回ずっと例に出し続けてきた、ギタリストを目指す少年に再度登場していただきましょう。

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 彼は毎日ギターを触っている。寝る時とお風呂の時以外、何があってもギターを手放さない。そんな彼の夢は世界一のギタリストになること。今日は初めてのオーディション! 街のインディーズバンドが新しいメンバーを探してるらしい。緊張とわくわくで、彼の胸は高鳴ります。

 だけどバンドメンバーはなんだかいけ好かない態度。少年がせっかく鍛えた超絶技巧をいくら披露してもぴくりとも動じません。挙句の果てに『君みたいのはいらない』と言われてしまう始末。少年は意気消沈。その後もいくつかのバンドに自分を使ってくれないかと頼み込みますが、どこでもかしこでも門前払い。自分には才能がないのかな……と少年は落ち込みます。
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※ここまでが物語の『始まり』です。主人公の少年は『自分はまだ世界一のギタリストになれてない』という不足を抱えています。彼にはまだ『成長の余地』があるため、バンドのみんなは見向きもしてくれません。物語の中盤では、そのことを彼に気づかせてあげましょう。

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 ミュージシャンになんか、ギターソロでだってなれらあ! と開き直った少年は、学校のバンドコンテストに単独で参加。優勝することで有名になろうと決意します。技巧に技巧を凝らし、練習量もいつもの三倍。

『絶対にうまく行く!』と思っていた主人公でしたが、結果は当然予選敗退。『バンドメンバーも揃えられないのによく予選に出てきたな』と馬鹿にされ、もう自分には無理だと諦めかけたその時、主人公は声をかけられます。そこにいたのは主人公が最初にオーディションを受けたバンドの元メンバーでした。

『音楽は一人が上手いだけじゃダメなんだ。周囲と音を調和させてこそ、ひとつの音楽になるんだ。俺は自分の音じゃあいつらと調和できなかったから、あのバンドを辞めた』

 その言葉に心を動かされ、思い直した主人公は、自分の持つ優れた技巧を、好き勝手に弾くためにではなく、周囲との調和を作るために使うようになります。
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※ここまでが『なんやかや』のパート。成長の余地をしっかり使って、主人公に一皮向けてもらいます。そのキッカケとして主人公には大失敗を経験してもらい、これじゃダメなんだと思い知ってもらう場合もあります。心苦しいですが必要なパートです。

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 ついに周囲と調和した音楽が作れるようになった主人公。仲間とつながる喜びを味わった彼は、最初にオーディションを受けたバンドに、元メンバーの推薦で入団。百年に一度の天才としてもてはやされ、メジャーデビューを果たしました。

 出す曲出す曲大ヒットで世界的に有名になった彼は、今日もギターとともにいます。お風呂の時と、寝る時以外は。ですが彼の周囲には、以前よりも多くのファンや、大事な仲間たちが、ひしめきあうように賑やかに、楽しく過ごしているのでした。めでたしめでたし。
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 ※はい、そしてここが『終わり』のパート。『成長』した主人公は『不足が満たされ』てハッピーエンド! 最初と似ているシーンを作ることで、彼が以前より幸福な状態にいることを強調して、話は幕を閉じます。


◆まとめ

 さて皆さん、いかがでしたでしょうか? 三分割で考える、物語の基本骨子。楽しくお読みいただけましたでしょうか。今回ご紹介した方法で、なんとなくちゃんとした物語を作ることができるような気がしてきたのでは? 何も指標がないままお話を作ろうとするよりも、何を考えたら良いのかが明確になったのではないでしょうか?

 テクニックは使ってこそ。物語は書いてこそです。早速今回の方法を用いて、お話作りをしてみてください! 皆様が楽しく物語を作るお手伝いができていましたら幸いです✨

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