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保土ケ谷中学が「日本語教室での勉強」を出席扱いにした件

▼移民のニュースには、悲惨なニュースが多いが、素晴らしいニュースもある。2021年3月26日付毎日新聞に、その一つが載っていた。池田直記者。適宜改行と太字。

〈<にほんでいきる>横浜の市立中「自立にプラス」/日本語教室 出席扱い/ベトナム人中学生 皆勤で進学〉

〈親が外国籍などの「外国につながる生徒」の学習を支援するため、横浜市立保土ケ谷中学校(生徒数913人)が2020年度、ベトナム人の男子生徒が民間の日本語教室で学んだ時間を出席時間として扱った。文部科学省によると「全国でも例のない先進的な取り組み」で、男子生徒は最終学年を「皆勤」し、今春、第1志望の高校に進学することができた。〉

〈外国につながる子どもに関しては、先に来日した親に呼び寄せられ、日本語の理解が不十分なまま学校に通っているケースも少なくない。日本語の授業についていけずに学力が低下しやすいことに加え、学校生活にもなじめず不登校につながることもある。〉

〈取り組みの対象となったのは、3年生のグエン・ディン・ミン・カンさん(15)。カンさんは、日本で働いていた義父の筒井宏輔さん(47)にベトナム人の母とともに呼び寄せられ、19年8月に来日。保土ケ谷中に転入したが、それまで日本語を使う機会がほとんどなかったため、学校で飛び交う言葉が全く分からないことに戸惑い、登校に不安を覚えるようになった。〉

▼日本語がわからなければ、中学の授業がわかるわけがない。この生徒は〈日本語教育提供会社「NIHONGO」(東京都渋谷区)が運営する日本語教室「トレボルNIHONGO教室」〉に週2回、通い、日本語が使えるようになった。

▼保土ケ谷中学(窪田智明校長)は、トレボルと協定を結び、トレボルでの勉強を中学校の出席時間として認めることにした。使ったのは、〈不登校児童が通うフリースクールなどの民間教育施設での出席取り扱いについて市が定めているガイドライン〉。

文科省によって校長の裁量が認められており、もともとは日本人が想定されているのだが、これを使った。素晴らしい知恵だと思う。

〈カンさんは2月、「在県外国人特別募集」の枠で第1志望の横浜市の市立高校に合格。〉

▼この記事には解説記事がついており、それも、知らない人はまったく知らないので、引用しておきたい。「外国につながる子ども」という言葉の解説だ。

〈国籍は日本だが以前は外国籍だった子ども、両親やどちらかの親が外国籍の子ども――のようにさまざまな形で外国につながる子どもたちを総括した呼称。外国人が多く住む横浜市などが用いており、近年は文部科学省も使用している。「外国にルーツを持つ子ども」と呼ばれることもある。〉

▼この記事に使われている、トレボルでの授業風景の写真は、2020年11月に撮影されたものだ。

つまり、記者やデスクたちは、最低でも4カ月かけて、この記事をつくったことになる。ひとつの市立中学の動きについて、大事だと判断すれば、時間をかけて追いかけることができる。これは新聞の強みだろう。

(2021年3月29日)

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