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国立大学では共用スペースに課金される件(その1)

▼STAP細胞のインチキを追及して勇名を轟(とどろ)かせた毎日新聞の須田桃子氏が、チームを組んで「幻の科学技術立国」という連載を続けていた。目が飛び出るような事実がたくさん紹介されていたが、その総括記事。2019年5月24日付。見出しは、

〈過度の「選択と集中」転換を〉

写真は、〈予算不足で耐震化が済んでいなかった連絡通路の屋根が崩落〉した、筑波大学の2017年の写真が使われていた。

大学の研究環境がどんどん悪化していることは、たくさん報道されているが、この須田記者の記事はさすがの迫力だ。適宜改行。

大学の研究現場 ないない尽くし/資金が足りず自腹で出張し、実験装置の修理もできない。

教員は外部資金獲得の事務作業などに追われ、研究時間を十分にとれない。

施設は老朽化し、配水管も取り換えられない。

退職した教員の補充は先送り。

「ないない尽くし」で、研究どころか教育の質さえ危ぶまれる。これが、日本の多くの大学の現状だ。

 「スペースチャージ」と呼ばれる資金捻出法を知った時は驚いた。施設の修繕・維持のため研究室や実験室、講義室などの共用スペースの学内利用者に課金する制度で、9割の国立大学が導入している。

スマートな名前だが、企業に置き換えれば社員に「会社の設備を使うなら場所代を払え」と命じるようなものだ。

 ここまで困窮した最大の原因は、国立大学法人の運営費交付金が国から減らされたことだ。2004年度は1兆2415億円あったが、年1%ずつ、15年度までに計約1470億円減額された。この交付金などを元に教員に配分される研究費は激減し、研究の裾野が脅かされている。〉

▼この「スペースチャージ」を初めて知った時は衝撃的だった。須田氏のたとえはわかりやすい。

もしかしたら、財務省は、そもそも大学が多すぎるんだから、淘汰(とうた)するための政策だと思っているのかもしれない。そのために教員や学生という「個人」の人格がどれほど苦しんでも、国家という「法人」格には法律上、何の影響もない。(つづく)

(2019年6月5日)

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