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「法案のミス多発」と「政治主導」が深く関係している件

▼最近の日本経済新聞のコラムで面白かったもの、の続き。

2021年3月28日付の「春秋」。政治主導とコロナ禍で、官僚にかつてない疲れがたまっている問題について。

まず、冒頭が面白い。

「次に掲げる」をどう読むか? 霞が関の官庁街では「ジにケイげる」が正解である。法案作成で誤字は許されない。そこで送り仮名や同音異義語のミスをなくすため音読み訓読みを工夫する。規定はキサダで規程はキホド。奇妙な日本語での読み合わせが延々と続く。〉

▼「次に掲げる」を、「つぎにかかげる」ではなく、「ジにケイげる」と読む。「規定」と「規程」とを間違えないように、読み方を変える。

この二つの例で、官僚がミスを出さないために、かなり奇妙な言葉のやりとりをしていることがわかる。

〈各課から優秀な人材を集め、プロジェクト部屋にこもり、内閣法制局とのやり取りを繰り返す。取材で長年、そんな法案作りの過程を間近に見てきただけに、とても信じられない。今の国会に政府が提出した法案・条約24本の条文や関連資料から誤記載や脱字が見つかった。プロジェクトチームを設けて原因を探るという。

▼政権肝煎りのデジタル改革関連法案では関連資料に45カ所の誤記があり、それを修正した正誤表も間違っていた。新型コロナ対策に追われた結果、で済む問題ではない。〉

▼冒頭の工夫が効いており、法案や条約にミス連発の現状が、いかに異常な事態であるかが、読者に伝わってくる。

〈役所が様々な問題を抱えていることは事実だが、誤表記の山から悲鳴が聞こえてくるような気がする。人事で翻弄され、不本意な国会答弁を迫られ、激しい批判を浴びる。「政治主導」が官僚に無理難題を押しつけ、やる気や志を損ねることにつながっているとしたら……。私たちはやがて大切なものを失うのではないか。〉

▼ラストの「大切なもの」とは何なのか、明示していないのが惜しまれるが、冒頭の「つかみ」が強烈なので、そのままの勢いでもっていったコラムだ。

▼全国紙のコラムでは、この日経の「春秋」がアタマ一つ抜けている。

ブロック紙、県紙まで視野を広げると、数年前まで新潟日報の「日報抄」が抜群に素晴らしかった。今は、おそらく担当者が変わったのだろう。

▼こうした感想は、好みの問題もあるし、ハッキリした基準はないから、比べることにはあまり意味がないのだが、優れていると感じるものを、優れていると明示することは、重要だ。

(2021年5月12日)

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