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愛されるよりひたすら愛した彼女の人生を讃えたい。1番大好きな邦画『嫌われ松子の一生』に想いを馳せる。

感受性が高かった若い時に心に抱いたありのままの"生"の感情は、大人になった今の自分が当時を思い出して表現すると、それは嘘になる。

昔、例えば9歳、12歳、14歳、18歳、20歳の私が感じた気持ちは、過去の彼女たちだけの特別なものだから。

年齢と共に様々な経験をして
考え方もどんどん変わって、
私は何度も生まれ変わって、
今の私は良い意味でも悪い意味でも別人になっている。

学生時代、今よりももっと世の中を知らない未熟だった小中高大の私にとっては、毎日が刺激的だった。日々新しい体験をして発見があり、色々な人と関わる。様々な人間関係の中で自分の感情のバリエーションが増えていき、酸いも甘いも学んだ。

そして、そんな時に見る映画はどれもが新鮮に感じた。ついこの間体験したことと重ね合わせては共感し、その度に心が動かされた。
作中の登場人物の境遇が自分のあの時の状況と同じだ!とか、主人公が今感じている感情は、私がこの前初めて感じた感情と似ているかもしれない、など。映画を見て芽生えた感情にいちいち興奮していた。

それは、自分がまだこの感情を言葉でどう言い表すのか分からない時に、映画の中の登場人物が代弁してくれたと、歓喜したからなのかもしれない。

"心に雲がかかったような
モヤモヤとした感情"

"胸がちくちく痛むような
切ないとも悲しいとも言えない感情"

"本当は嬉しいのだけど
素直に喜べない複雑な感情"

自分の言葉では形容し難い感情が心に現れた時
世界でたった1人だけになったような
言いようもない孤独に襲われた。

そんな時にそっと寄り添ってくれたのが
映画という存在だった。

今、その頃と同じ思いで映画の感想を書けるかと聞かれれば、それはできないだろう。
なぜなら、当時の"形容し難い感情"の適切な表現を、知らず知らずのうちに見つけてしまい、もはや全く別の違う言葉に置き換えてしまうだろうから。それは"本物の感情"とは言えない。

だから私は、当時の自分が思ったこと、抱いた感情を、なるべくその時の言葉のまんま保存している。(日記に記録している)

そして、昔ひどく心を動かされた映画を今見て同じように感動するかと聞かれると、必ずしもそうではない。あの時の感動体験はあの時だけの宝もの。でも、その時に抱いた"熱量"は今でも鮮明に覚えている。

例えば、私が17歳の時に見て
一晩中泣き明かすほどに胸に刺さった映画に、

「嫌われ松子の一生」 がある。

これは当時だからこそ、嗚咽交じりに
本気で過呼吸になるかと思うくらいに
泣いてしまった理由があった。
そして、私が邦画の中で一番好きな映画だ!
それは今となっても変わらない。
「嫌われ松子の一生」を超えるほど
猛烈に感動を覚えた作品が私の人生において未だに存在しないのだ😳😳😳!!!!

それくらい17歳の体験は
衝撃極まりないものだった!

今日は、この映画について、
当初の私が抱いた感情に沿って
なるべく当時の言葉を以って
思ったことを綴りたい。

この映画は"愛すること"がいかに素晴らしいかを教えてくれた!

"一生誰かを愛し抜いて生きること"を完全肯定し、私に凄まじい勇気を与えてくれたのだ。

どんな時でも愛することをやめない、
愛することでしか生きていけない、
生涯愛を貫く1人の女性の行き様を、
飾らずありのまま描いた物語である。

ある人にとっては、松子がどうしようもなく無様に映り、目も当てられない、辛すぎる、胸糞悪いと感じるかもしれない。

またある人にとっては、松子がとんでもなくかっこよく、美しく、輝いて見えるかもしれない。

見る人によって全く異なる感想を抱くだろう。

私はというと、
明らかに圧倒的に後者だった!

確かに、松子の人生は不幸の連続で
一見、暗く悲壮に満ちているように見える。

でも、
松子は果たして本当に不幸だったのだろうか?
いや、私には全くそうは思えなかった!

少なくとも松子自身は、周りから見てそれはいくら"不幸"であっても、不幸だと感じていなかったのだと思う。

私も、彼女が不幸だとはこれっぽっちも思わなかった。むしろ、松子のような人生に強い憧れを抱いた!
こんなふうに"愛すること"を貫いて
最後まで誰かを信じて愛し抜いて
愛に溢れた人生を歩みたいと激しくそんな感情が胸に込み上げた。

どんなに何度裏切られても、傷ついてボロボロになっても、いかなる時も最後まで愛することをやめなかった松子。

松子はまさに、刑務所に入った彼が言ったように、それはまるで"マリア様"のような、
愛をもってでしか生きられない人間だった。
その真っ直ぐさゆえに、愛を受ける側が逆に罪の意識を抱きたまらなくなるほどに。。
松子が最後まで信じて待っていた男性、
伊勢谷友介か演じた彼が、
「自分のような人間が彼女ほどの崇高な(考え方の)存在に愛される権利があるのか」と、
過去の罪との狭間で彼女のまっすぐすぎる愛を受け止められずに苦しむほどに…。

愛とは、全てを許すこと。
愛とは、全てを受け入れること。
愛とは、無条件に包み込むこと。

彼女の考え方はまさにキリストの「アガペー」に近しいものがあると感じた。
それはもちろん誰にでもというわけではなく、
あくまで彼女の恋人にだけ捧ぐものである。


最初から傷つくことを恐れて人を愛すことに臆病になるよりか、愛してみてとことん傷ついた方がいいやん!ってそう覚悟ができた。

彼女のように常に能動的に恋愛を楽しみたいと思った!それこそが幸せなのではとも思った。


どうしてそんな風に思ったのかというと、
私と松子はなんとなく似ていると思ったから。

当時高校生だった私には
もちろん愛がどんなものかをまだよく知らない。知るはずもない。
ただ、常に誰かに恋していた。
そしていかなる時も自分から告白してきた。
男の子の時もあれば、
友達である女の子に何年も恋した時もある。
その間うまくいかずにずっと傷ついてきた。
それでも、恋心は止められなかった。
どんなに傷ついても諦めきれなかった。
その時も、密かに想っている人がいた。

だから、素直に松子の言葉が響いた。
自分を肯定してくれたみたいで。
もうその人のことをめっきりやめてしまおうかと本気で悩んでいた時期に出会ってしまったため、松子から勇気をもらえたのだ。


その夜は死ぬほど泣いた。
パンパンに目が腫れるほどに我慢できずに泣き狂った。
こんなにもまっすぐな愛に溢れた女性なのに
松子の最後は誰にも看取られずに終わる。
松子を知る人はもう誰もいない世界で
人知れずに死んでいく。
その様がどうしようもなく悲しくて仕方ない。
松子はいつでもただ愛を与え優しく包み込むだけで、本当の愛の温もりを知らずに死んでいったのだ。。

松子の人生は紛れもなく素晴らしい人生だったと言える。彼女の愛に心底救われた人がたくさんいたのだから!こんなにも純粋でまっすぐで、本当は彼女こそ最も愛されるべきなのに叶わなかったこと、それだけが惜しくて、その数奇な運命だけが悔しくて涙が止まらなかった。。。

でも、彼女自身は自分の人生にきっと満足しているのだと思う。自分は幸せだったと、きっと彼女はそう言うだろう。
そんな松子に対して思わず尊敬の念を抱いてしまう。


中島監督もおそらく原作を読んで
脚本・監督を手掛けようと思ったのは、
松子の人生が実はとても光に満ちてると感じたからだろう。

原作の小説は、1000人いたら900人は暗くて辛くて見るに耐え難い物語だと言うだろう。

しかし鬼才・中島哲也監督は
あえてポップに明るく鮮やかな色とりどりの色調で、アップテンポな音楽を使い、ミュージカル調に描いてしまった。

監督にとって、その表現こそが
紛れもない"この物語の隠れた本質"だったに違いない。


私は感動と共に共感し、ひどく歓喜した…😭


元々中島監督は「告白」を見て大ファンとなったが、松子をそのように捉えて描いてくれたことが嬉しくてさらに大好きになった!

松子も監督によって救われただろう。

この物語をあのような素敵な映画として
世に生み出してくれたこと、
それは松子にとっても、大きな歓びなのではないかと。。
思わず想いを馳せてしまう。


それは、中島監督の感性でしか成し得ないと本気で思った。


「嫌われ松子の一生」は、

"究極の愛の物語"だと
私は未だにそう感じてやまない。



▼Filmarks レビュー
( 2017年 視聴4度目にして初投稿 )


中島哲也マジックが
最も濃厚に感じられる作品!!!

音楽、映像、切替、すべてが美しく
ポップで明るい雰囲気で作られている✨

原作はとっても暗い話なのに、
あえて明るい音楽ばかりをチョイスし
カラフルな色彩で描かれているため
暗く不幸なマツコの人生が
彩良くハッピーな人生に思えてくる。

そんな中島マジックがかかった作品

4回見て4回とも号泣しました。

もう、大好きな作品です。

展開が早く場面の切替が多く
音楽も実に多様に組み込まれていて
カラフルで賑やかな世界観な為に
初めて見たときはものすごく引き込まれてしまい、あっという間にラストでした。

他人から見ると不幸な人生
しかしマツコにとっては幸せな人生
どんなに傷ついても愛することをやめなかったマツコ。

愚かなようで人間らしく
最後まで美しかった。

ここまで表現してしまう映画監督という
職業は本当に素晴らしいなと心から思った次第です。

人によって好き嫌いが分かれると思うけど、気に入る人はすごく気に入ると思うので、気になった方はぜひ見てほしいです!!







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