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FAT#03 動けなくなった世界を超えて、これからなにをつくる? ~『移動』のパラダイムシフト、その先へ ~

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第3回「Future Architects Talk」は、食を通して社会を良くするメディア&プロジェクトSHOCK TUCK」との共同主催という形で2020年5月末に開催されました。新型コロナウイルスの影響で非常事態宣言が発令され、移動することへの価値観が変わりつつある中で『移動』をテーマに「建築」と「食」の分野で活躍する4 名の登壇者がそれぞれの視点で議論しました。​

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01. 移住することの「リアリティ」


―――――今回の世界的なパンデミックの影響で、都市における過密の状態が今までに増して問題視されたと思います。人やものが都市へ過剰に集中しているということが問われている中で、これから都市と地方の関係はどうなっていくのでしょうか?

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石川凜 #Food  : 
1996年仙台生まれ。幼少期から農業に親しみ、東日本大震災直後の食料難をきっかけに世界の食料問題の解決を志す。 京都大学農学部食料・環境経済学科在学中、アメリカに1年間留学しSustainable Agriculture を専攻。 現在新卒2年目で、食農ベンチャーである「坂ノ途中」と「ポケットマルシェ」、「クックパッドマート」で複業中。


石川:
(食農パラレルワーカー,ポケットマルシェ, 坂ノ途中, クックパッド)
今回のコロナショックを機に地方への移住が増えるとの見方がありますよね。でも、一定数移住する人はいたとしても社会が180度変わることはないという前提を共有しておきたいです。このあいだ、あるアンケートで東京の住人の半数が地方移住に興味を持っているという結果があったんですけど、そのうちどれくらいが本当に移住するかはわからない。例えば 東日本大震災が起きた時も、都市は危ないから移住しようって動きはあったにも関わらず、そのタイミングですべてが変わるかというとそうでもなかったですよね。

その上で地方がどうなっていくかってことを考えると、都市一か所に住むだけじゃないあり方、多拠点の生き方っていま強いなと思っています。別に完全に移住するわけでもないし、行き来ができる状態ですね。関係人口って言葉もありますけど、地域に完全に移住する一歩手前、その地域と関係を持つ、いざとなった時に頼れる人がいるってことの方が今回のコロナで広まるんじゃないかなと思います。

そういった暮らし方を考えると、家を契約するってあり方がすごく動きにくいなって感じます。ADDress(定額で多拠点居住ができるサービス)とかもありますけど、どこかに動きたい、移住したいってなったときにもっと自由に拠点を変えるってことができるようになっていく流れは確実にあるんじゃないかな。

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松丸里歩 #Food  : 
1998 年大阪生まれ。健康面から食に関心を持ち、食が社会や環境にも大きな影響を与えていることに気が付く。2018年より、食を通して社会・環境問題をカジュアルに捉えるWeb メディア/プロジェクト「SHOCK TUCK」を運営。現在はファーマーズマーケットで働きながら、SHOCK TUCK に加えて都市養蜂やゼロウェイストなど、循環型の都市生活をめざした活動に参加している。


松丸:
(SHOCK TUCK創設者・活動家)
今の話、関係人口みたいな考え方は今後もっと注目されるんじゃないかなと共感します。
それこそみんなショッキングな出来事が起こったら都市での生活に限界があるんじゃないかとか、移住した方が良いんじゃないかと考える。けど、実際に移住ができる環境にいる人って少ないんじゃないかなって感覚はあるな。その時に移住するかしないかっていう白か黒かみたいなことじゃなくて、その間というか多拠点みたいな暮らし方の選択肢が増えていく。個人個人が良いバランスを取れるという意味でも、それが一番現実的なんじゃないかな。

他にも都市と地方のつながり方が大事だなとも思う。たとえば今回のコロナで、スーパーなんかでも野菜が売り切れたり、それによって値上がりしたっていう話があったけど、農家さんたちは卸先だったレストランとか学校が休みになっちゃって在庫を余らせていたんです。私はそういった農家さんの知り合いから直接買っていたから、スーパーで野菜がないことで困ることがなかった。個人単位のつながりだけど、都市に暮らしている私と地方で農業をしている人とのつながりによって、お互いの暮らしがちょっと力強くなっているっていうことを感じて、そういうつながりのあり方はだんだん広まるのかなと思いました。

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林恭正 #Architecture  : 
1994年広島生まれ。幼少期をウィーンで過ごし、横浜で育つ。新潟大学大学院に在学中、ドレスデン工科大学特別派遣研究員として集合住宅におけるバルコニーを研究。また、西日本豪雨を機に設計チームを発足し、東広島市安芸津町の珈琲焙煎を軸としたコミュニティハブ" 安芸津歳實珈琲" を設計。2019年より横浜の設計事務所"tomito architecture" にて建築・ランドスケープデザインに従事。


林:
(tomito architecture ディレクターアーキテクト)
そもそも都市か地方かという話はあると思うんだけど、個人的には今ある街をどう住みこなすかとか、風景をどうハックするかという、自分の生活している領域がより外に触手を伸ばしていくような住まい方に興味があります。ヨーロッパでは週末住宅っていうのがよくあって、夏とか休日に週末住宅で過ごして、そこで料理して、そこでつくったものを最後自分の家に持って帰って食べるみたいなことをします。こういう街の中での行き来、それこそこれも多拠点のひとつのあり方だと思うんですけど、身近な生活領域が広がるというのはいままでも議論されていたことだし、これからも大切だと思っています。

バルコニーというのも似たような面白さがあると思うんですよね。自分の生活領域を外に広げるというか、バルコニーってなんか凄く中間な立ち位置にあるじゃないですか。自分の部屋なんだけど、少し外からも見えてセミパブリックな場所。
多拠点居住もこれから加速する一方で、身近な場所が拡張していくことで豊かに暮らしやすくなるだろうなと思っています。社会とか外界との距離感を自由に選べる状況をつくることが重要。

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水野泰輔 #Architecture  :
1993年愛知生まれ。自らが目指す「建築家」像とは一体何なのか、様々な活動を通して探求中。横浜国立大学大学院Y-GSA 在学中にはヘルシンキの建築設計事務所Casagrande Laboratory にて勤務。被災地域を対象とした持続可能なCLT 製住宅モジュールの開発や、町全体を美術館にするNomadic ArtProject を手掛けた。PAS-t 共同代表。m-sa パートナーアーキテクト。


水野:
(m-saパートナーアーキテクト, PAS-t 共同代表)
石川さんの言っていた半分は移住に興味があるけど、実際はしないかもっていう話がすごく自分も感じていたところです。みんな移住するまでの「リアリティ」を感じる機会がないんじゃないかと。ここでのリアリティというのは知識では得られない、実際に行動指針となる実感のことだと考えてます。実際、一か所集中への危機感とか移住へのリアリティを持っている人たちってコロナとか関係なくもう移住していたりすると思うんですよね。今回のコロナのニュースとかを見ていても、大多数はそのリアリティを得るまでには至っていないんじゃないかなと感じています。
一方で、リアリティを得る前の段階として都市と地方っていう漠然としている問題に目を向ける環境は今回のコロナでつくられていっているように感じています。


02. 自分たちのゆるやかな自給圏


―――――ここまで都市に住んでいる人からの目線で多拠点居住を語っていたように思いますが、逆に地方に住んでいる人たちからの目線でなにか考えていることはありますか?


石川:

私がたまに遊びにいく祝島っていう瀬戸内海に浮かぶ島があるのですが、350人しか島民がいない島でみんな農業をしたり漁業をして暮らしています。生活用品を揃えている商店はひとつだけあって、島外からの物資はそこに届く。ごみ処理場は島内にないので島外に持ち出して処理しているんです。けど、ごみの処理を島内で完結させた方が島の外への依存度が下がるからいいだろうということで、生ごみをあつめて豚に食べさせることで島の循環をつくっている活動が行われているんです。この活動を見ていて、この島の自治、外に依存しないという姿勢や意志が強く表れているなと思っています。

コロナが流行り始めた時に私が島に行こうとすると、島にいる知り合いに止められたんですね。なぜかというと、島の人からしたら安全に平和に暮らしているのに、外からの人が来るとウイルスが入ってきてしまうから。島の中には小さな診療所が一つあるだけなので、ウイルスが入ってきてしまったら困るわけですね。つまり、こういうことがあったときにこの島の人たちは島を閉じるという選択をしたんです。それが私にとってはコロナ時代の移動、特に地方の人たちの反応を如実に表していることだと思いました。特に島という閉鎖性が担保される環境だからこそ、自ら閉ざしていく地方も多いんだろうなと感じています。

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Fig 1 : 島内の生ごみを食べる豚 (山口県祝島)


林:

人が物理的に移動することがダメってなると、異なる環境に足を運びながら設計の仕事をしている自分にとっては凄く困るなと思っています。それに建築をつくること自体に移動が伴う行為なので、例えばコンクリートの材料はどこから持ってくるとか、木材はどの山から持ってくるとか、そういうことも含めてデザインしていくことも大事だと思いますね。なので、島の中で暮らしを完結させることもそうですが、建物つくることも本当に島やある閉ざされた地方だけで完結するのかっていうのは疑問ですね。


石川:

その中だけで完結しないよねっていうのは本当にその通りだなと思っています。

ちょっと違う話で食料の流通に関して言うと、これまで輸入に依存していたことのリスク、たとえば東南アジアの国が食料の輸出をやめたら先進国は食料が無くて困るみたいな話がある中で、アンチグローバリゼーションというか、閉ざしていきましょう、地産地消で行きましょうみたいな動きも全世界的にあります。でもそれだけでは、コーヒー日本でつくれるの?みたいな話で、絶対無理なんですよ。食料生産においても適地適作、その土地にふさわしい作物があって、自分たちの近くで育てられるものは育てたらいいけどその土地に合わないものまで無理やりつくるのは難しいですよね。バランスが大事で、自分たちの自給圏みたいなものをつくりつつも、ゆるゆると外の世界とも関係性を持っていくあり方が必要なんじゃないかなと思います。


03. 生産活動に参加すれば、消費の意味は変わる


―――――先ほど生産者と消費者のつながりという話がありましたが、この関係性はどう変わっていくのでしょうか?

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Fig 2 : コロナによる開催休止前、都心のファーマーズマーケットに集まる生産者と生活者 (東京都)


松丸:
生産している人の顔が見えるっていうことはより大事になっていく
かな。地産地消とか食の流通のローカル化って環境負荷を減らすって意味とか自治を高めるって意味で意義があると思うんですけど、ひとつ思うのは、地産地消っていう言葉が先行していて実際誰が生産しているかとか誰が買っているか見えない関係性でいいのかなと。

それと、私はそもそもこの生産者と消費者というカテゴライズから変えていくべきだと考えてます。どうしても多くの人がいわゆる「消費者」という立場に自分たち自身をカテゴライズして実際に消費活動をしていると思うんです。でも、私たちだって全部自給自足は難しいけど、つくろうと思えば野菜をちょっとつくってみることはできるし、ものをつくってみるとか生産活動に参加するというか試すことはできる。今おうち時間が増えている中で、私も家でちょっとトマトとか小松菜とか育ててみたりしています。少しでも生産活動に参加することで、これまでただお金を払って買うだけだったのとは消費の意味や感じ方が変わってくると思っています。先ほど水野君が言っていたリアリティをどう得られるかっていう話とつながるところかもしれません。


水野:

家で野菜を育ててみるってことでリアリティを獲得できるっていうのは面白いですね。たとえばバルコニーで野菜を育てるとしたら、さっきの林君の話とつながって、そのリアリティひとつひとつがまちの風景となっていったりしますよね。それにバルコニーがだれかと間接的に繋がる装置になったりするのかなって思いました。隣人が育てていたら自分も育ててみようかな、みたいな。

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Fig 3 : ウィーン公営住宅の多様に使いこなされたバルコニー群 (オーストリア)


04. あふれでたストーリーに解釈はひらかれる


―――――生産者の顔がみえることが買うモノを選ぶ上で重要な要素になってきているという話がでましたが、どうしてでしょうか?


石川:
誰がつくったかっていうストーリーが非常に重視されている
からだと思います。
以前、オランダの植物工場に行ったことがあって、そこでは基本的に水耕栽培という土を使わない栽培が主流なんですが、ものすごく広いガラス張りの温室の中でトマトがひたすら並んでいるみたいな風景だったんです。オランダのように全部をコントロールして、均一化していく、どこでも誰でも同じようにつくれるっていう方法は日本政府でも今どんどん進めようとしています。でも、こういう大量生産のやり方って誰がつくったかっていうストーリーを感じることが難しいですよね。だからこそ希少になってきている強い個性をもった生産方法やこだわりを持っている生産者さんに心惹かれる人たちがある一定数いるなという印象を感じています。

私が働いているポケットマルシェのサービスというのは、生産者さんと消費者がオンラインで直接やり取りできるプラットフォームになっているんですけど、ここでは生産者さんが商品主旨も値付けも商品名もぜんぶ自分で決められるんですね。その中で自ら語り手になっていく生産者がすごく増えているように感じていて、面白い状況だなと思っています。消費者だけが声高に安心安全などを要求するのではなくて、生産者も自分の想いを声を張って語りだしていっているのはすごく健全だなと。そういうプラットフォームができていることや語り手となる生産者が増えてきていることで、一個人の生き方や表現みたいなものにいろんな人が興味を持っているんだろうなと思います。

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Fig 4 : 環境制御型のガラス温室で育つトマト (オランダ)


松丸:

オランダ式のあり方も必ずしも悪ではなくて、安定した食料供給とかのためには意味や価値はあるものなんじゃないかと。一方で、いまスーパーに行くと旬も何も感じられないし、その野菜の背景、つくっている人や場所が全く見えないので、食べ物って自分の体をつくるものなのにそれが全く見えないっていうのは結構やばいなと思う部分があります。そういう意味で私が携わっているファーマーズマーケットや石川さんのポケットマルシェで、オフラインであれオンラインであれ、それぞれの生産者さんの主張を聞いた上で選べて、そのものを食べて、なにかを感じるっていうことには意味があるなと思っているし、そこに価値を感じて意識的にものを選ぶ人も今後増えるんじゃないかなと思います。


―――――オランダ式のような高効率な生産のあり方とポケットマルシェのような取り組みと2極化していってしまうのでしょうか?


石川:

私としては2極化はせず、あくまでグラデーションでしかないなと思っています。できるだけ環境を制御した農業のあり方もあれば、その土地に根差した農業というのもあるんですけど、その間ってたくさんあって、2択になっていくわけではないですね。選択肢が増えることって良いという話もありましたが、どっちかしか選べないとか、どれが良いっていうことではなくて、どれに自分が共感できるかってことが大事なんだと思います。

―――――建築においてもストーリーは大切なのでしょうか?


林:

建築においてもストーリーというのは非常に大事になってきていると感じますね。普段設計する中で、つくる前の段階でその街の情報や環境を探るリサーチ(フィールドスタディ)をするんですけど、その時にただデータとして事実を集めているだけだと意味がなくて、背景にあるストーリーだとか解釈にひらかれている状態のものにアクセスするように心がけています。具体的な体験談として、自分がある地方のプロジェクトで現地に行っていたときに、屋外で作業していると犬の散歩している近所のおじさんとかが話しかけてくれて、このあたりは昔全部田んぼだったんだよとか、そこで昔はよくこんなことして遊んだとか話してくれるんですね。そういう現場に長居するようなプロセスの中でその人たちが求めていることに偶然気づく機会があったりしたんですよね。

建築が建てられるまでにおいてどんな場所でもどんな素材でもつくれるってことと、地域の資源を使ってつくるみたいなことの価値がすごく議論されるところがあるんですけど、地元のものでつくったから良いでしょ、みたいな話になっちゃいけないなと思っています。最近考えていることは、やっぱり全てのものはそれ自体が媒体なんだってことです。どんなものも解釈が生まれれることが大事で、ただの石ひとつでもどこから取れたものかっていう背景へのアクセシビリティがすごく重要だなと思いましたね。

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Fig 5 : 現地で模型を見ながら設計を進める様子, 他所者として観察する日常の確からしさ (東広島市安芸津町)


水野:

いま、背景へのアクセシビリティが重要でそこへの解釈が大事というような話がありましたが、農家の野菜にしても、建築にしても、消費者というか情報の受け取り側がそういったさまざまな主観的な解釈を楽しめるようになってきているのかなと感じます。


05. 集まることと「人間らしさ」


―――――このコロナの影響を受けてさまざまなイベントが延期や中止になっていったと思いますが、これから集まり方にもなにか変化はあると考えてますか?


松丸:

自分自身これまでにも何度かイベントを開催したことはありますが、たくさんの人を意図的に集客してそこでなにかをやるということの価値は変わらないし、なくならないとは思うんですけど、それに対する固執は減っていくのかなと思っています。これからは大々的に集まるというやり方だけではなくて、気づいたら集まってしまっていたくらいのゆるやかな形での集まりというのは重要性が増していくのかなと。自然と集まってしまう場所だったり、そこでのローカルなコミュニティみたいなものの大切さに気付く人が増えていくのかなと思います。

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Fig 6 : 松丸が過去に主催したトークイベントのアフターパーティで、食事と歓談を楽しむ参加者 (2020年2月、自粛要請前)


林:

気づいたら集まっていたというのがすごく面白いですよね。そしてそれを食分野で活動されている方が話されているのがさらに興味深いです。
気づいたら集まるということを考えると、公園がいい例です。今公園ってめちゃくちゃ人集まっていて、公園が本来の使われ方しているなと感じるんですよね。もともと日本人って基本的に外の環境を自分のもの化するのが苦手なんで公園もうまく使ってこれなかった。公園だったらカップルだったり、子連れだったら行きやすい、スタバだったらコーヒーを持ってないとそこにいれないわけで、免罪符みたいなものが必要になったりするのが日本人のリアル。そもそも建築の歴史を言えば、明治以降に概念として公園とか病院とか学校ってものが入ってきて、それを真似してつくってみたってことをやっていたからうまく使えなくて当然だったんです。けど、いま様々なところでそういった空間の読み替えが起きてきている。他にも例えば、道とか河原とか、外部環境がどんどんハックされている。ホテルが病院になっちゃったり。マーケットっていうものも、そもそも日本では道で行われていたりすることを思うと、集まる環境っていうのはそういったインフラだったり大きな枠組みの中に隠れているような気がします。

水野:
これまで自分たちって集まることも利害関係で選択してたじゃないですか。ここに行くとおいしいものが食べられるとか、誰かに会えるとか。でもオンラインで会話できる選択肢が一般に広まったことで、オフラインで集まる理由を考え出したと思うんですよ。なぜ集まるのか。そのときに合理的な理由はだれ一人出てこなくて、なんとなく会いたいとか、ここ気持ちいいなとか。だれもが無意識に選択していくのかなと思って。コロナでだれとも気軽に会えなくなった、どこにも行けなくなった後には、誰かと会うとなった時に、何か目的をもって会うのではなくて、会いたいから会うっていう方にシフトしていくのかなと思います。場所もそうで、なにかをやるために公園に行くのではなくて、公園に行きたいから公園に行くみたいな。もう少し動物的というか本能的になっていくのかなと思ってます。

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Fig 7 : コロナ以後も人々が訪れる河川敷の風景 (茨城県)


林:

不動産の価値とかもそれに近いこと言えますよね。武蔵小杉の価値って今まで何だったかというと都心部にアクセスが良いとか、整備された環境として利便性の面が大きかったと思うんですけど、もうちょっと情緒的な不動産価値みたいなことに目を向ける人が増えてきてる感じはしますよね。それこそ農業だったり漁業だったりっていう一次産業の風景だったり、地方の人と人の距離感みたいなことに価値を感じているということがある種水野君が言った動物的っていうことに近いのかなと思います。

松丸:
たしかに情緒的な価値ということは共感するのですが、それでも人間はやはり社会性を持った動物だなって私は思っています。それこそ食べるというのは生理的欲求のひとつで、生きていくためには必要な行為なんだけど、誰かと一緒に食事をするとか、その食べ物の裏のストーリーを考えて選ぶとか、そういうのってただの本能的な反射ではない意味を持っているなと思っていて、集まる場にも人間らしさってあるのかなと思っています。

林:
今回のテーマである「移動のパラダイムシフト」っていうことを考えた時に、僕は移動が制約されるとか、集まることがダメとされることには結構根本的に違うと思っているんですよね。人間はこれまで時代時代に合った移動の仕方を構築してきていて、今後もテクノロジーによって移動のあり方が変わるのは確実で、僕たちはどんどん動くと思うんです。それになにより、移動や集まることができないってなってしまったら、人間やってるのが寂しくなるなと感覚的に思っていますね。

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◆当日の配信映像をYouTube上で公開しています


https://www.youtube.com/watch?v=pRXu35V09CI

FAT#03 開催概要

【日時】

2020/5/24(日)

【場所】
YouTube

【企画・運営】
PAS-t ・ SHOCK TUCK

【登壇者】
水野泰輔 #Architecture :
1993年愛知生まれ。自らが目指す「建築家」像とは一体何なのか、様々な活動を通して探求中。横浜国立大学大学院Y-GSA 在学中にはヘルシンキの建築設計事務所Casagrande Laboratory にて勤務。被災地域を対象とした持続可能なCLT 製住宅モジュールの開発や、町全体を美術館にするNomadic ArtProject を手掛けた。PAS-t 共同代表。m-sa パートナーアーキテクト。

松丸里歩 #Food :
1998 年大阪生まれ。健康面から食に関心を持ち、食が社会や環境にも大きな影響を与えていることに気が付く。2018年より、食を通して社会・環境問題をカジュアルに捉えるWeb メディア/プロジェクト「SHOCK TUCK」を運営。現在はファーマーズマーケットで働きながら、SHOCK TUCK に加えて都市養蜂やゼロウェイストなど、循環型の都市生活をめざした活動に参加している。
SHOCK TUCKの記事 → https://note.com/shocktuck

林恭正 #Architecture :
1994年広島生まれ。幼少期をウィーンで過ごし、横浜で育つ。新潟大学大学院に在学中、ドレスデン工科大学特別派遣研究員として集合住宅におけるバルコニーを研究。また、西日本豪雨を機に設計チームを発足し、東広島市安芸津町の珈琲焙煎を軸としたコミュニティハブ" 安芸津歳實珈琲" を設計。2019年より横浜の設計事務所"tomito architecture" にて建築・ランドスケープデザインに従事。
tomito architectureのHP → https://www.tomito.jp/

石川凜 #Food :
1996年仙台生まれ。幼少期から農業に親しみ、東日本大震災直後の食料難をきっかけに世界の食料問題の解決を志す。 京都大学農学部食料・環境経済学科在学中、アメリカに1年間留学しSustainable Agriculture を専攻。 現在新卒2年目で、食農ベンチャーである「坂ノ途中」と「ポケットマルシェ」、「クックパッドマート」で複業中。
坂ノ途中のHP → https://www.on-the-slope.com/
ポケットマルシェのHP → https://poke-m.com/
クックパッドマートのHP → https://cookpad-mart.com/

【モデレーター】
池上彰 #Architecture :
1994年東京生まれ。新米建築設計者として日々精進中。トークイベントの主宰やモデレーターとしても幅広く活動。横浜国立大学大学院Y-GSA在学時にはイギリスやウガンダの設計事務所にてインターンを経験。PAS-t 共同代表。TERRAIN architects 所員。
TERRAIN architectsのHP → https://terrain-arch.com/

【配信サポート】
- 内田詩織

【イラスト制作】
- 阿部ほなみ


◆FAT Supporter

- 小島 広夢
- 増田 郁恵
- 鈴木 里奈
- 桑山 紗恵
- 展伸園 丸山
- 板谷 優志
- 三文字 昌也
(敬称略)

※FAT#03で、「FAT Supporter ticket」 ご購入いただいた方をFAT Supporterとして掲載しています。
この度はFATを応援していただき本当にありがとうございました。
今後とも自分たちの興味あることと正直に向き合いながら、みなさまにも意義のある場を継続してつくっていきますので、引き続き応援していただければ嬉しいです。

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