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散文 #1 「あの人は今」

学生時代とある派遣会社に大変お世話になった。

「パンプキン…ハウス…」
確かそんな感じの会社名だった気がする。

真冬の極寒の倉庫内でダンボールにひたすら景品を取り付け。学生アパートの退去作業や部屋の修繕。インターネットカフェのティッシュ、チラシを配り。うさぎの着ぐるみを着て子どもたちと戯れたりもしたっけ。

次はどんなバイトが出来るんだろうか、と期待に胸を膨らませ派遣先へと通っていた。

駅裏のビルの2階にある社員3名程の小さな会社。社長とおぼしき50代位の男性からは通うたびに「これあげる。」と男性化粧品、お菓子、用途不明の景品などを手渡されていた。優しさなのか在庫処分だったのか賄賂だったのかは分からない。

残る2名は女性事務員。
1人は派遣先の地図、公共交通機関の用紙をプリントアウトして渡してくれるけど、行き先が間違っていたり平日に派遣先へ出向くのに土日祝日ダイヤの用紙を渡されることもあった。確認もせず向かってしまったが故に、コンビニも無い地方のバス停で途方にくれることが度々あった。その前に確認していなかった自分も悪い。

もう一人は「将来に不安があって、この先どうしたらいいか。」と人生相談をされていた。悩める事務員である。
介護、福祉に興味があると言われ、当時福祉系の専門学校に通っていたので実習先で感じたあれこれ、福祉について熱く語ったのを覚えている。学生の身分で、しかも社会人経験もない。まだ何も分からない若造がベラベラ偉そうに話してたと思うと本当にゾッとする。あんた(自分)何様よってね。

その後、あの事務員が福祉の道に進んだのかは分からない。が、しばらくして会社が倒産…と風の便りで聞いたので不安が現実になったのは事実だ。

あの事務員は今頃どうしているのだろう。
そんなことをハロウィンの時期になるとふと思い出す。

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