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インフルエンザ ⑦ 誰に検査をするか?

年末年始ですが、体調と相談しながらぼちぼち続けます。
引き続きご利用頂ければと思います。

さて、インフルエンザシリーズも長くなりましたので、本日で一旦区切りとします。

今日は、誰にいつインフルエンザの検査をしたら良いのか?
患者さん側からすると、どんなときにインフルエンザの検査をしてもらえばいいのか?

にお答えしていきたいと思います。

ここまでのまとめ

その前に、前提としてここまでのまとめをしておきます。

1. 発症時期からの時間により感度は多少変化するが、インフルエンザ
 迅速診断の感度はそもそも低い

2. 検査前確率が検査の解釈に大変重要で、「流行しているかどうか?」
 の確認はとても大事

3. インフルエンザの治療を開始するに当たり、検査陽性の確認は必須
  ではない(臨床的に診断が可能な状況も多い)

4. 「これがあればインフルエンザだ!」という明かな症状はない

5. インフルエンザは基本的にself-limited(日にち薬で治る病気)であり、
  治療薬の投与は必須ではない

6. その一方で、入院患者、合併症のある患者では重症化が予想され
 積極的に治療を行うべきである

誰に検査をするか?① 重症化しやすい基礎疾患がある人

インフルエンザを疑う状況で、重症化しやすい基礎疾患を持つ人は積極的に検査をしておく方が良いでしょう。重症化しやすい基礎疾患とは、下記の通りです(再掲)。

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誰に検査をするか?② 入院を要する病態の人

入院を要するような呼吸不全、循環不全、神経学的異常所見を認める人でインフルエンザを疑う場合は積極的に検査をしておくべきです。

誰に検査をするか③ 外来では?

上述の①、②はそりゃそうでしょう、ということで、忙しい救急外来でどうするのよ、という話になります。なにせただでさえ忙しいのに、検査をすると診察と結果説明で、外来延べ患者数が倍になりますので、、、

私自身は今のところ下記のような指針で検査を行っています。

1. インフルエンザを疑う症状が有り、濃厚な接触歴があれば検査はせず、
 臨床的に診断する。
 (陰性でもインフルエンザの可能性が高いので判断が変わらない)

2. 身辺で流行はあるが濃厚接触がない場合は、積極的に検査をする。
      → 陽性の場合は、インフルエンザで診断確定
   → 陰性の場合は、偽陰性の確率がそれなりにあるが、検査をした以上
     陰性を信じる。ただし、重症化した場合は再度診断を考慮する。

3. 流行期であっても家に引きこもっているなど感染の機会がない人は
 重症化リスクがなければ検査は積極的には行わない
  → 相談の上、検査を行った場合、陽性・陰性は信じる

4. 兄弟に免疫不全患者がいる、新生児がいるなど、本人に重症化リスクが
  無くても、周囲に重症化リスクのある人がいる場合は、積極的に検査する
  → 場合によっては、対象者の予防投与も考慮する。

患者側としてはどうしたらいい?

インフルエンザといっても症状の強さは様々です。濃厚接触患者でも、軽い風邪程度の症状であれば、敢えて抗インフルエンザ薬を内服する意義に乏しいことは以前お話ししたとおりです。

上記の検査基準を参考に、症状の程度と、診断→治療する意義と、救急外来での待ち時間を天秤にかけて頂いて、判断して頂く、ということになります。

一方で、医学的には正しくても、上記の様な説明では、なかなか納得されない患者さんが多いのも確かです。

先日とある休日診療所で同じクラスの子どもが15人以上受診している状況で、インフルエンザと臨床診断し、検査無しで処方をさせて頂いた際、どうしても納得されず、くりかえし検査を要求された親御さんもいらっしゃいました。

なんでもかんでも検査し、陽性・陰性を鵜呑みにして、ひたすら抗インフルエンザ薬を処方している医師がいるのも事実で、医療者側の再認識も必要ですが、患者さん側も今回のシリーズの内容をご理解頂いて、リテラシーを上げて頂くことも必要だなあと思った次第です。

これがいいたいだけだったのですが、これをいうために長い道のりでした。
しかも書いてみると意外にわかりやすく書くのは難しいという、、、

おつきあい頂いてありがとうございました。

小児科、小児集中治療室を中心に研修後、現在、救命救急センターに勤務しています。 全てのこども達が安心して暮らせる社会を作るべく、専門性と専門性の交差点で双方の価値を最大化していきます。 小児科専門医/救急科専門医/経営学修士(MBA)/日本DMAT隊員/災害時小児周産期リエゾン