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「けいれん」と戦うときに考えておくべきこと

八ヶ岳は本日終日雨でした。子連れ × 高原 × 雨 はなかなか悲惨だということを実感しました。世の中のお父さん、おかさん、強く共感いたします。そして、お疲れ、妻&自分。。。
旅先のいいアイデアあったら教えて下さい。。。
この状況でこんななので、やっぱり避難所での遊び、考えないとだなあ、と結局仕事から抜け出せない今日この頃。

さて、けいれん、ですが、、、

「とまらなかったらどうしたらいいですか?」
「どんなく薬でとめたらいいですか?」

とよく聞かれます。鎮静の時と同じです、、、結局人間発想は一緒なのでしょうか。

「けいれんを止めるための薬の使い方」という意味では、確かに一定のプロトコールが存在しますので、別稿でご説明します。今日は、けいれんの止め方、ではなく、けいれんと戦うために押さえておくべきこと、をお話しします。

そもそも止める必要があるのか?

けいれんは、直接脳細胞にダメージを与え、一次性脳損傷を引き起こします。その目安は昨日お話ししたように、30 分以上けいれんが継続するとその頻度が上昇することがわかっていて、30 分以内にけいれんを止める、というのが一つのコンセンサスです。それをうけて、5 分以上続くけいれんは介入すべきだろう、ということもお話ししました。

ちなみに一次性脳損傷、二次性脳損傷、については、下記を参照して下さい。

止まったかどうかはどうやって判断するか?

convulsion であれば、けいれんの動き自体が止まっているか?を見ますが、non - convulsive seizure(NCS)に移行していないか、あるいは残存していないか?は「動きを観察すること」だけでは不十分です。
臨床的には意識障害がないか?改善傾向か?などを参考に判断することが多いですが、最終的には脳波をとってみないと判断出来ない、ということは強く意識しておく必要があります。

けいれんにより脳損傷が進行するだけでなく、けいれんが「意識障害」そのものの原因になることがありますので、「治療しうる意識障害」としても、けいれんがあるかないか、の同定や、本当に止まっているかどうか?を確認しておくことは重要です。

止めればそれでいいのか?

けいれんは一次性脳損傷を引き起こすことをお話ししました。一方で、けいれんによってダメージを受けた脳を守るためには、二次性脳損傷をいかに防ぐか?ということも大変重要です。

けいれんを止める薬剤を投与された後、確かに運動は止まっているのですが、薬剤の鎮静作用により、いびきをかく、陥没呼吸を呈するなどの気道閉塞症状、呼吸抑制による症状を呈しているにもかかわらず、MRI 検査が考慮され、、、という光景をよく目にします。

酸素投与はさすがに行われていることが多いので、低酸素血症となるほど、SpO2 が低下していることは少ないですが、二酸化炭素については、まるで何も考慮されていないかのようです。以前お話ししたように、高二酸化炭素血症は脳圧を上げ、脳幹流圧を下げることで、二次性脳損傷を引き起こします。必要に応じて、挿管も含めた気道確保を考慮すべきです。

「そもそもけいれんて何のために止めるんだっけ?」ということを忘れず対応したいものですね。

原因は何か? 検査はどこまですべきか?

けいれんの原因はきちんと追求し、治療介入の必要性を判断すべきです。
よくある状況について少しコメントしておきます。

小児で多く遭遇する、「発熱を伴うけいれん」ですが、お話ししたようにその多くは熱性けいれんです。けいれんそのものは問題ないことが多いこともお話ししました。

研修医の先生方も、さすがに 2 年目になると、この位の対応は慣れたもの、ですが、

「熱源は?」

と聞くと、

「え?」

と言われることが結構あります。熱性けいれんの場合は、通常ウイルス感染のことが多いですが、きちんと熱の原因は考えるようにして下さいね。

また、特に、熱がないけいれん(= 無熱性けいれん)の場合、外傷は必ず考慮すべきです。また、外傷を考えるのであれば、虐待の可能性は頭の片隅に入れて、対応することが望まれます。必要に応じ、尿中薬物スクリーニングも考慮すべきです。(「代理によるミュンヒハウゼン症候群」の項も参照して下さい)

脳炎/脳症 を考えて、MRI を考慮される方も多いと思いますが、気道確保の必要性、気道確保するのであれば、人工呼吸をしたまま MRI を本当に安全にとれるかどうか? など、医師だけでなく、看護師、技師などの人手と習熟度を考慮しておく必要があります。 加えて、MRI 中に低酸素血症、高二酸化炭素血症を引き起こしても、本末転倒ですので、呼気終末二酸化炭素モニター(ETCO2)も含めて、きちんとモニタリングできる環境を整えておく必要があります。治療方針をその場で変えないのであれば、MRI については後日、体制を整えてからの検査も考慮すべきです。

【参考文献】
小児急性脳症診療ガイドライン2016
https://www.childneuro.jp/modules/about/index.php?content_id=34

小児けいれん重積治療ガイドライン2017
https://www.childneuro.jp/modules/about/index.php?content_id=36



小児科、小児集中治療室を中心に研修後、現在、救命救急センターに勤務しています。 全てのこども達が安心して暮らせる社会を作るべく、専門性と専門性の交差点で双方の価値を最大化していきます。 小児科専門医/救急科専門医/経営学修士(MBA)/日本DMAT隊員/災害時小児周産期リエゾン