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親のお古を着る、という親孝行もある。

 全く、我が母の「買ったけど着なかった。でももったいなくて捨てられない」コレクションには、毎回毎回驚かされる。

 この冬新たに譲り受けたのは、膝上丈のボックスワンピース。デザインは至って普遍的なのだが、生地の高級感がすごい。ウール100%で、コートを作れそうなくらい厚手でしっかりしているが、その一方で手触りはとてもなめらか。ほのかな光沢もある。高級 “感”  と言ったが、事実高級なのだ。その額、なんと10万円!購入当時バブル景気にしたって、さすがに高すぎる。父親、つまり私の祖父からのプレゼントだったらしいが、こんな良い(値段の)服、一体何用だったのか…。

 件のワンピースが一体何用だったのかはさておき、親のお古について、私は昔「親のお古は潔く捨てよう。」という記事を書いた。

 この記事を書いた当時は、私をゴミ箱代わりにして不用品を押し付けてくる母、そしてそれを断るどころか、喜んだふりをして受け入れてしまう不甲斐ない自分が、嫌で嫌で仕方がなかった。

 しかし、人は変わるものだ…🍂

 この記事を書いてから、二年弱の歳月が経った。かつてこんな記事を書き殴るほど憤っていた私は今、母から新たに譲り受けたこのワンピースを、自らすすんで身につけている。
 別に前から欲しかったわけでも、好きなデザインでも何でもない。ついでに言えば、私の骨格にも、パーソナルカラーにもデザインにも、まーったく合っていない(笑)。でも、「まーこれ着るだけで親孝行になるんなら、いっかぁ」と、そう思えるようになった。

 実はちょうど1年ほど前、「毒親だと思ってました」と母親に直接カミングアウト(※)したり、今後の付き合いについて話し合ったり、色々すったもんだあった。毒親との付き合い方について最近めっきり記事を書いていなかったのは、一応折り合いがついたとはいえ、そのことに改めて自分一人で向き合う勇気がなかったからだ。
(※この話はわりと本当に世の中の誰かのためになりそうなので、いつか記事にしたいな、と思っている。思ってはいる…。)

「毒親!」と親を詰り、不幸の原因を全てそこになすりつける。

いっそ関係を断とうかと思うほど恨む。

 私のそれは、遅すぎる反抗期だったなと思う。おたふく風邪や水疱瘡と一緒で、反抗期は子供のうちに済ませた方がいいのだ、きっと。大人になって罹患すると、とんでもなく重症化するから。
 幸い、私は死(絶縁)に至ることなく、ゆっくりではあるが回復の途を辿ろうとしている、と思う。

「ママに譲ってもらったワンピース、友達にいっぱい褒められたよー」
ワンピースを着て出かけたその日、母にメッセージを送った。すぐに返信が来た。

「うおおおお〜〜〜!!😻着てくれたの!?」

そのメッセージを見ただけで、私は充分報われた気持ちになった。悔しいけど、やっぱり子供ってのは、自分のお母さんの喜ぶ様子を見ると、自分も自然と嬉しくなってしまう生き物みたいだ。

 好みでもない、似合うわけでもないワンピースを、私はこれからも折に触れて着続けると思う。

おしまい。

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