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小説1

11
タイトルは変える可能性アリ。
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"i" #10

キイィィン。
コンクリートの壁に当たったナイフは、甲高い音を立てて刃先から3センチくらいのところで折れてしまった。
僕は『彼』と距離を空け、新たなナイフを取り出す。
(絶対にここで仕留める――!)
ナイフを右手につかみ、一気に『彼』との間合いを詰めた。
ナイフが風を切るのとは全く違う感触がした。
液体が僕の右腕を伝っていった。
『彼』が力の限り僕を後方に押したので、僕はよろけて尻もちをついてしまっ

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“i” #11

“i” #11

僕の首元に冷たい刃が突きつけられる。
殺される。
それはずっと昔から覚悟していたことだ。
母の死、兄の死、それらを見た時。最後に『彼』の顔を見た時から。『彼』と対峙すると決めた時から。
ついに来たのかという気持ちだった。
ずっと前から覚悟していたからなのか、今になって拍子抜けしてしまうほどにあっさりとした気持ちになっていた。

けれども、その刃が僕を貫くことはなかった。
「以前の俺なら、このまま殺

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"i" #9

"i" #9

『彼』は驚くほど目を丸くして、こちらを見つめていた。『彼』の計算では、僕はまだ帰っていない予定だったのだろう。その驚きのせいか、兄に向けたナイフが止まる。
その瞬間、兄は力の限り、『彼』に向かって突進した。『彼』はよろけて、体制を崩す。
何かしなきゃと思い僕は兄をかばおうとする。しかし、兄に体当たりされた。僕は床に転び、痛みが走る。けれどもそれは、打撲のような痛みではない。むしろ、何かで切られたよ

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"i" #8

"i" #8

そうして、一年近くが過ぎた。
あの公園には、あの日以来行っていない。そもそも、高校生になってしまったから、公園で遊ぶということすらしなくなった。
それに、あの日のことを思い出すから、行きたくなかった。

けれども、僕はあの日のことを再び思い出すこととなった。
一番、嫌な形で。

高校一年よ秋から冬に変わろうとする時期だったと思う。
サッカー部に入っていた僕は、帰りが遅くなることがほとんどだった。家

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"i" #7

"i" #7

僕はまたしても公園の土を踏みしめた。
あれから雨が止んで土も乾き、ぬかるんだ場所はなくなっていた。
『彼』は来なかった。
それでも僕は待ち続けた。

そして、二週間くらい経ったある日、『彼』はふらりと公園にやってきた。
久しぶりに会った『彼』は、右手に痛々しい程の包帯を巻いていた。
「久しぶり」
僕は何事もなかったかのように声をかけた。
『彼』は驚いたのか、一瞬だけピタリと動きを止めた。が、すぐに

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"i"  #6

"i" #6

 「…こちらが火事の現場です。現場からは若い男性の遺体が見つかっており……トレンチコートを着ていたようですが、身元がわかるようなものは持っておらず……」
 病み上がりの体で、僕はうつらうつらとテレビを聞いていた。
「…またもう一人の遺体は、現在連絡が取れなくなっているこの家の長男と見られ…警察は最近起きている連続殺人事件との関連性を…」
 お昼の番組は、どこもかしこも同じ事件を取り上げていた。
 

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"i"  #5

"i" #5

 公園には、屋根が藤の花で出来た休憩スペースがあった。そのベンチに、『彼』はいた。
 屋根が藤の花だから、こんな大雨ではあまり屋根の意味を成していなかった。屋根の下だというのに傘が必要なほどだった。そんな中、『彼』はずぶ濡れで少し俯いた状態で座っていた。
「大丈夫…?」雨に濡れて体調が悪くなってしまったのだろうと思った。
 けれども、近づくにつれ分かった。彼の右手は雑にタオルが巻かれていた。そして

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"i" #4

"i" #4

「ちょっと、友達と会う約束をしてたんだ」僕は慌てて答えた。目が泳いでバレてしまうんじゃないかと心配になった。
「こんな雨の日に、か? それなら、電話とかで友達の家にかけて伝えればいいんじゃないか? それとも、そうできない訳があるのか?」
考えてみれば、僕は『彼』の家を知らない。もちろん、電話番号も知らない。知っているのは、『彼』の名前だけ。
それでも、僕にとっては大切な「友達」なのだ。
兄の

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"i" #3

前回↓
"i" #2 |ぺぺ☆ペンギン狂い @oumc_ppq #note https://note.com/pepe_hoshi/n/n3c1b28ac84e8

僕が兄とより一層仲良くなった頃、『彼』と会う頻度は週2回から週1回程度になっていた。
僕が地元のサッカークラブに入って忙しくなったのもあるし、『彼』が忙しくなったのもあった。
『彼』が何故忙しかったのか、当時は分からなかったが

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"i"   #2

"i" #2

"i" #1 |ぺぺ☆ペンギン狂い @oumc_ppq #note https://note.com/pepe_hoshi/n/n5699011a6cc4

↑前回はこちら。続くとは思っていなかった。

ヒュッ。
ナイフが空を切る。
この日のために、ある人から教えてもらい、技を、技術を磨いたナイフ捌き。
けれども、目の前にいる『彼』はそう簡単には倒せそうになかった。やはり、『彼』はその道の

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"i"  #1

"i" #1

注:これは逆噴射小説大賞の没作です。没の理由は最後に書いてあります。

僕はやっとたどり着いた。
校門の石に刻まれた文字を確認する。…Y大学。間違いない。
探偵からもらった資料を握りしめる。
五年間探し続けた『彼』についての資料だ。
ようやく、会える。
思わず笑みがこぼれてしまった。

僕が小学二年生の時。
僕の家族は東京から、ど田舎のH市に引っ越した。父が薬品系の会社に勤めていて、その仕事の都

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