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佐伯日菜子
2023年2月20日 02:50
ビー玉のような夜夢が重なり白木蓮が花開く水鳥の一斉に飛び立つように咲き乱れてもそういう花はすぐに忘れてしまうこっくりとした白は鈴の音をはこぶ風鈴屋の騒音 戸を揺らす鐘あの子に聞けるだろうかお前に分かるだろうか椿に演じ梅に気取り桜にうつつを抜かして春を聞けるか胎動をこばみ色めく埃をこばみまるで人肌の馴れ馴れしい春風に吐き気をもよおし春からぽつんと取り残されること
2021年11月24日 00:36
音は消え 灯は消え 地に火が降り 海に星降るへその緒は切れ皮膚は未だ溶け合うことを知らずひとは孤独な部屋をなだめて眠る道を示す者さえ諦めた土地でこれからも生きるのだろうか汚れた自分はどうすれば伸ばされた手も 後ろめたい夢の中でも私はうなされている渦巻く罪悪感に出口はない時折よみがえるのは母の記憶甘く満たされていた香りの記憶ごめんなさいと 今さら思う汚れた私は何者
2021年7月29日 00:20
悪い夢をみたときはあなたのところにもぐりこむやわらかい毛布と体クリーム色と おしろいの香りむんわりする あたたかい肌くるまれて つつまれて毛布の中はもうだいじょうぶしあわせはあなたのぬくもりでまもられている天使のホルンがきこえてあたまが ぼうっとして耳をあてた あなたのおなかの奥 痛みがうごいてるわたしにだってわかるよわたしも ちょっと痛いわたしも なでてあげるね
2021年6月28日 00:50
真っ白な部屋に光が差す私たちはきっと大丈夫さみしさのなかで混沌をいきてきた長かったずっと 怖かった遠くの窓にあかりが灯るつかれた帰路を 急ぐ人を見る道を示すここに勇気があるよとみんなが気がつくように道しるべをつくるあなたと私の間に美しい星空を敷こうきっと大丈夫だからね
2021年4月19日 01:19
2021年3月22日 22:05
永遠に続けと願った時間がとうとう永遠に変わり私たちは暗いお店で乾杯し、微笑み、クリームパスタの一口目の感動に体を揺らした。もう何回目だろう。何杯もお酒を飲んだのに私はほろ酔いのままだしあなたの顔は見飽きるほど見たのに素敵だし、クリームパスタはいつまでも最初の感動をくれる。朝は来ない。新しい場所には行けない。ほかの誰にも会えない。「ここで二人なら、それでもいっか」とあな
2019年9月29日 02:12
こぎれいにして まちをあるく昼下がりひるの日と影をみつめる前をあるく女のひとからいい香り歩道橋をおりたら排気ガスのにおい日焼け止めを塗ったのに首をきにする おとしものが帰ってきた
2019年8月4日 22:21
①かみさまの葬式には行けなかった。大人たちが場所を教えてくれなかった。わたしはひとりで冷たい床に横になり、星を数え、あの星に花は咲くのだろうか、猫はいるのだろうか、どの星と仲が良いのだろう、かみさまはあの星を何日かけて作ったのだろう、と毎晩思いを巡らせた。教えてくれるひとがいないので、自分の好きな答えをつくった。そうして7日も過ごしているとだんだん現実と区別がつかなくなってきた。一旦脳みそ
2019年7月14日 03:58
ふたつだけもらったこの手ひとつは心臓を握りしめているもうひとつはお花をそっと持っているコンクリートの狭い部屋、鉄格子のついた窓からは満天の星空が見えた。触れようと心臓を握る手をはなすと目眩がした。インターホンが鳴った。この晩の訪問者はかみさまだった。かみさまは手みやげだよと微笑んで、今さっき心臓をはなしたわたしの手のひらに、小さなオルゴールを握らせてくれた。意地の悪い大人に夕食を盗
2019年6月1日 01:35
大停電が起こったら線路の上をあるこうたいしたことない4日もあればじゅうぶんな距離よあなたも歩くのよちょうど真ん中で落ち合いましょいや、でも、あなたの方が歩幅は大きいだろうからちょっとこっち寄りにしようかなああ、でも、あなたがつらいのはいやだなちょっとそっち寄りにしようなによ、わかったわかった、真ん中にしましょうね、はいはい #詩
2019年6月1日 00:22
ふたつだけもらったこの手ひとつは心臓を握りしめているもうひとつはお花をそっと持っているわたしがわらうとふわっと香るのそれが嬉しくて笑っちゃうのあなたにもあなたのお花がありますように探しておいで。 #詩
2019年5月16日 03:22
すりガラス越しに外を見やるモザイクに手を当てて冷たさを覚える幸せをたべているおぼつかない手で 味のよく分からない舌で隣の部屋は酔った大人たちの楽しげな笑い声明け方の青い部屋ひとりぼっちの畳の部屋窓の外で鈴が鳴って自分の瞳が見えた気がして「おやすみ」って言うしかなかった #詩
2019年5月4日 01:07
花を集めるように好きな人も自分も幸せになって美味しいものをたべて落ち着く場所を見つけて素敵な言葉に出会ってよく眠ってそのままずっと #令和 #詩
2019年4月30日 23:51
彼女は細くて死にそうで目は泣き腫らして赤くなって疲れた顔は朝よりも痩せていて分からないことがたくさんあって歯ブラシについた血も落ちた髪の毛も吐き気がする治らない唇の荒れもニキビも鼻水をかみすぎて皮の剥けた赤い鼻も日が沈むといびつになる心も気持ちが悪いのだろうひとつ分かったの、誰にも言えない大きな大きな恥気づいてしまったの彼女はそのまま静かに顔を歪ませて残ったジャス