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「ストーカーの恐怖」新生


"広くひろがり回転する天の彼方へ 溜息は舞い上がります。わたしの心から漏れ出た吐息です。"『神曲』の著者が26〜27才の時にベアトリーチェという女性に向けていた切実な(恋愛ではなく)恋心を42章の詩集にしたためた本書は、その尽くせぬ想い、甘美な言葉使いに圧倒されます。

個人的には『神曲』こそ既読だったものの、その前身的な作品である本書を恥ずかしながら未読であったことから手にとったわけですが。今の時代的感覚からすると些か過剰過ぎるのではないか?と著者の【一方的な恋心】に戸惑いつつも、キリスト教的なアガペーが優先された中世における個人としてのエロスの【純度の高さ】には、訳や解説の見事さの補助もあり、やはり時代を超えて胸を打ちます。

また美術好きの立場としては、表紙になっている"ラファエル前派"の【ベアタ・ベアトリクス】の【ロセッティによる英訳版】を通じて、本書が国内に紹介された経緯を知り、ちょっとトリビアの泉的な驚きも感じました。

本格的に寒くなってきた慌ただしい年末に、大切な誰かを想う誰かに、また『神曲』にも出てくるベアトリーチェに萌えたいダンテ好きな詩人な誰かにオススメ。

PS:って書いてるけど、一度「見かけただけの人」をひたすら「一方的に」美化しまくってるだけだからね!こんなの今ならストーカーです!

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