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Winter

その日の夕方、空は静かに晴れ渡り、冬独特の淡いスモーキーな空気の色を帯びた東京の風景が、映画を観終わった僕らと無意識のうちに同化しました。僕らは街の一部となり、街は僕らの一部になりました。それはまるで、満月が冬の到来を優しく祝福しているかのように美しい空だったのです。

出会った当時、男は女に毎日ラブレターを書いていたことを思い出しました。愛する想いを伝えるばかりではなく、自分自身の心の浄化作用の役目も兼ねて。水滴を言葉に落とし、透明な言葉を毎晩彼女のために紡いでいったのです。言葉とは、水です。様々に様子を変え、無限に溢れ出る奇跡なのです。僕はこれからも善の手段として、大切に言葉と向き合っていきたいと思います。

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