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夢が膨らむ「公募ガイド」 (再勉生活)

雑誌「公募ガイド」がこの春、月刊から季刊になった、という噂を聞きました。
noteクリエイターのみなさんはご存じだと思いますが、小説、マンガ、詩、短歌など、公募中のあらゆる創作《賞》情報を掲載した雑誌です。
── といってもそうした情報は、今はネットで得られるし、実際、この公募ガイド社自体がWEB版の「公募ガイドONLINE」を出しています(↓)。
月刊から季刊へと刊行形態が変更されたのも、そうした事情と関係があるのでしょう。

30代半ばで米国の大学院に入り直した《再勉生活》の2年目が終わろうとする頃、私は日本から小包を受け取りました。
中に入っていたのが、「月刊公募ガイド」でした。

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家族と共に渡米した最初の日、大学町のホテルで、ひとりの日本人と会いました。話してみると、彼はやはり同じ日に到着し、奇遇なことに同じ教授のもとで研究生活を送ることになっている、というのです。
その人は日本の某企業から技術習得のために派遣され、客員研究員として1年間滞在予定の技術者でした。
(現在は某国立大学工学部で教授を務められています)

ひと月ほどして彼の奥さんと1歳未満の男の子も合流し、私たち一家と同じアパートの別の棟で暮らすことになります。
── そう、私たち一家が、階下に住む、丸々とした魔女姉妹に箒で小突かれ続けたアパートです(↓)。

この先生とは1年間、同じ街で、そして同じ研究室ですごし、公私に渡りたいへんお世話になりました。

それだけでなく、彼が任期を終え、帰国された後も、やはり公私に渡ってご厚意をいただきました。

そのひとつが ── 航空便で送っていただいた「月刊公募ガイド」でした。
添えられた手紙には、
「Pochiさん、学位研究でお忙しいとは思いますが、気晴らしに何か書いて、応募してみてはいかがですか」
とありました。

ちょうどその頃、私の研究はかなり行き詰まっていました。
「気晴らしにったって、そんな余裕ないよなあ……」
研究以外の時間は、たまに大学のプールで泳ぐくらいで、精神的にも肉体的にも、かなりぎりぎりの生活をしていました。

「公募ガイド」という雑誌を見たのはそれが初めてでした。
日本にいた頃、懸賞論文(↓)と懸賞小説に応募したことがありましたが、そんな雑誌は、少なくとも街の書店には置いてありませんでした。

ベッドに横になり、送られてきた雑誌のページをめくっていると、いろいろな公募が載っていました。
── 眺めているうちに、次第に夢が膨らんでいきました。

まだ応募も ── いやそれどころか、書き始めてさえいないのに、── この賞ならいけそうだ、賞をとったらどうしようか、賞金はどう使おう、授賞式ではどんなスピーチをしようか、いや、研究生活と両立するだろうか、 ── などと、どんどん想像が(妄想が)エスカレートしていきました。

純文学や童話の募集にも心をかれましたが、さすがに《非日常型》フィクションの世界に入り込む心の余裕はありません。

ひとつの《懸賞論文》募集に目が留まりました。
ある新聞社(上記、ワープロを副賞にいただいたのとは別の会社)が募集している、21世紀の最初の年を冠にいただく論文賞で、最優秀論文1件の賞金は、(以前の新聞社と同じく)100万円でした。

渡米以来、いろいろな国から来た学生と交流する中で脳内に渦巻いていたことを整理してみました。
そのうち、《集団主義》についての《観察と意見》をまとめれば、論文(という名のエッセイ)と呼べるものになるように思えてきました。

「公募ガイド」の募集ページに栞をはさみ、PC-98互換機で「一太郎」を立ち上げ、渦巻くものを文字へと移し始めました(↓)。

研究生活の合間に、2か月ほどで書き上げ、日本の新聞社に送りました。
そして、締め切りから5か月ほどが過ぎた深夜、日本から受賞の電話連絡を受けました。

その5か月の間に、研究の方でも重要な発見と実験技術上の大きなブレイクスルーがあり、あと半年余り頑張れば学位が取れそう、という見通しが立っていました。

もちろん、受賞の連絡もうれしく、
➀ 「公募ガイド」を日本から送ってくださった先生、
➁ 閉塞状況の中で《夢》を膨らませてくれた「公募ガイド」、
それから、
➂ 原稿の下読みをして、論文の価値が飛躍的に高まる助言をくれた妻、

この三者には、今も感謝しています。

➂はいわゆる《レトリック》の技術なのですが、日米の教育の違いなども含め、またどこかで書きたいと思っています。

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うん、もう1度、読んでみよう!

近くの本屋に行き、季刊第1号となった「公募ガイド」を買ってきました。

表紙に、
《創作は、愛だ》
とあります。

そうかもしれない。
そして、言いたい。

《応募は、夢だ》

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