【#2】音楽と育児

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寝付けないので、MacBookを開く。何となく、心情を吐き出したくなった。

うちの娘は就寝時間が遅く、21時前後まで起きていることが多い。寝かしつけも一苦労である。

育児について

人は変わるものだ、とつくづく思う。僕は子供が大の苦手だった。正確には、どのような接して良いかわからなかった。親族においても末っ子中の末っ子で、自分より年下や同世代の子供がいなかったから。

やがて年をかっ喰らって、姪っ子と甥っ子ができた。高校生くらいだったか、接し方がわからず、愛想笑いで逃げてばかりいた。それでも懐かれてのは嬉しいが、本心は鬱陶しく感じた。精神的に幼かったのは否定しない。

それが、どうだ。31歳で第一子を授かってから、自分でも驚くような行動をみせるようになった。

たとえば、先日スーパーマーケットで、3歳くらいの女の子が迷子になったのか、「ママ」と叫びながら泣いていた。自分はすかさず、「ママとはぐれちゃったの?」と声をかけた。

別に、一緒に探したわけではない。インフォメーション的な場所に連れて行き、迷子のお知らせをしてもらったに過ぎないが。

天変地異でも起こったのかと思うほど、周りは驚いた。自分も驚いた。今までの自分なら、迷子の子供など見て見ぬ振りするのが当たり前だからだ。

泣いている子供を見て、放っておけなかった。自分の娘を、無意識に重ねたのだろう。

「ああ、少しはお父さんになったのか」

夕方の冷たく、どこか切ない風が肌を撫でた。些細な出来事かもしれないが、自分にとっては成長を実感する、偉大な一歩だった。

音楽活動について

仕事柄、集中的に制作できる期間と、そうでない期間が生じる。月半ばは本業が忙しく、なかなか創作活動に時間を割けない。ましてや、いざ机に座ると持病が牙を剥いてくるのだから、心底うんざりしてしまう。

守秘義務の関係で詳しくは説明できないが、ある企業の音楽レーベルからアーティストとしてのオファーがあった。せっかくのご縁。自分がどこまでできるかわからないが、契約するつもりだ。無論、本業に支障のない範囲で、ゆっくりと活動に携わる。

最近は、「あなたのLo-Fiを聴いています」と、大変ありがたい言葉を頂戴するようになった。まだまだ駆け出しのビートメイカーだが、「やった!」と子供のように喜ぶ。素人のおっさんなど、単純なくらいがちょうど良い。

頭の中にはたくさんのアイデアがあり、それを具現化したい。もっと早く、もっと質の高いサウンドを描きたい欲求が強い。持病さえ自分を睨まなければ、もっと創作に専念できるのに。健康な身体を取り戻したい。

煙にすがりたいおっさん

一方で、「ああ、タバコ吸いたいな」と思う機会も増えた。ストレスだろうか、焼きたてのトーストのように香ばしく、芳醇な赤マルの煙を肺が欲している。なんとも愚かだ。

タバコが百害あって一利なしなのは承知である。「ゆっくりとした自殺」なんて、たとえもあるくらいだ。ただ、喫煙者にとってそんなことどうでも良く、目の前の現実から一瞬だけ、目を背けたいときに、煙にすがるのだ。

子供がいる以上は吸わないが。禁煙して1年が過ぎる。大好きだった酒、正確にはバーボンも、薬の関係でドクターストップがかかっている。いくら音楽が楽しいとはいえ、ストレス解消には直結しない。

何か別の……自分の心にある、不安という名の「膿」を掻き出すような、何かを見つけられたらいい。

決して病んでいるわけではなくて、気持ちは常に前向きである。ビジネスとしてやりたいこと、刻みたいビート、描きたい世界がある。そのためには、第一に健康的な肉体を取り戻すこと。

最近はフォロワーさんから「屍のポーズ」というヨガを教わった。自律神経を整える効果があるようで、確かにスッと眠りにつける。こいつは良い。

寝る前は天使のような娘の横で、屍になる。

つくづく滑稽な人生だなって思いつつ、明日という日を超える。

生きていくのは、本当に大変だ。

文:Thurston




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