詠み人知らず

ノートに降臨した謎の詩人 読み人知らず。です。 気まぐれにつづる詩をご堪能ください。 …

詠み人知らず

ノートに降臨した謎の詩人 読み人知らず。です。 気まぐれにつづる詩をご堪能ください。 (スタエフでの使用について) 使用される場合は、#詠み人知らずのタグとノートのURLを貼り付けてください。

最近の記事

茅野太郎と占いの学校5

夜も深いし子供が夜歩くのは危ないからと、8時で帰された。 15歳になったし、もう子供じゃ無いんだけどとは思いつつ、家路を辿る。 満月がかすむほどのネオンがビカビカと夜の帷を照らす。 茅野太郎が生まれた地域は、電車が3時間に1本しかない、しかもその電車は一両編成。 だだっ広い田んぼがあり、空の青色が水田に鏡のように映る光景は、なんとも言えない気持ちになる。 占学に来たときは、思った以上に都会でわくわくした時もあったが、今となれば、不便ではあるが田舎のあの風景が恋しくなる。

    • 茅野太郎と占いの学校4

      ドアチャイムがガラリと音を立てた。 女の子が恐る恐る入ってくる。 「……こんにちは」 「らっしゃい」 太郎の向かい側に座る。 無言の時間が少しの間流れたが、女の子の方が口を開いた。 「茅野くん、どうしたらあなたみたいになれる?」 「ならないほうがいい」 「そんな」 「その先は、孤独だぞ」 「……」 「結局、占い師はひとりぼっちだ」 「茅野くんは、寂しくないの?」 「慣れた」 「……」 よくある話。 占い師になりたいという人はごまんといる。 楽に稼げるから、自分の好きな時に働け

      • 茅野太郎と占いの学校3

        太郎はカフェのドアを開ける。 「太郎ちゃんおはよう」 「おはよう。トーラさん」 トーラさんと呼ばれた女性は、マッチを擦ってロウソクに火を灯し、白川の長尺線香を焚いた。 ふわり、と甘く濃厚な香りがただよう。 「きょうもおきばりよー」 「はい」 ヴィヴィアンウエストウッドの大判ハンカチを広げる。 そこに8面体サイコロ2つと6面体サイコロを3つ並べ、テーブルのろうそくを手元に置き、店内に満ちる線香の甘い香りをゆっくり吸った。 ろうそくの炎を揺らさないように数分間静かに呼吸す

        • 茅野太郎と占いの学校2

          比流古島(ひるこじま) 地図にない消された孤島。 なのだが…… 東京都と同じ面積で、地方都市以上に栄えている。 全国チェーンの飲食店やカフェが軒を連ね、個人経営の店も2000を超える。 各国の要人や、財界の人間、官僚や外交官も足を運ぶ。 この島に住む人間は全員国家資格を持った占い師か、もしくは占学の人間だけである。 金曜日の夕飯時。チュッパチャップスを口にくわえ、作務衣のポケットに手を突っ込んで厚底靴の踵を鳴らしながらフラフラと歩く少年が1人いた。 「占学の、茅野太郎か?

        茅野太郎と占いの学校5

          茅野太郎と占いの学校1

          ある時代のある時に、海を超えた国からの科学兵器により多くの死者が出た。 時代は未曾有の混乱を期した。 そんな中、幅を利かせていたのは占い師という存在。 この数年で占い師は爆発的に増え、デタラメを言うものやマルチ商法に誘導するなど、やりたい放題の占い師が増えていた。 彼らを牽制するために国は占い師を国家公務員とし、しかるべき機関で教育したものしか占い師を名乗ることを規制した。 それは 日本八百萬占術専門学校。 地図から消された孤島にある、日本で唯一の占いを主に学べる専門学校

          茅野太郎と占いの学校1

          油売りラップ

          ヨーヨー! 俺はいなせな油売り 稲荷は特に嫌いじゃないぜ 商売繁盛食欲増進 シカヘル印のごま油 これをごらんよこの色を 黄金色の雫を垂らす。 とうとうたらりとうたらり 5円玉の穴をも貫く このご縁は合縁奇縁 見つめてごらんよこの銭を 油が少しもかかってない。 この技タダで見れるのは シカヘル印の油売りのみ! 雫が満ちれば時も満ちる 一度出会えば次いつか? それは 空舞う風に名前を たずねているようなもの 一度試してみてわかる 料理の腕が格上げされる シカヘル印のごま油 価格は

          油売りラップ

          運命の紅色

          傷ついただけ、綺麗になろう。 リップの色を変えるように 相手も変わるよ。 これから、 一番しっくりくるリップ 探しに行ってね。 似合わなければ まだ運命の一本と出会ってないだけ。 唇は一つだけだから、 口紅を使うのは一つだけ。 きっとあなたに似合うものは見つかるよ。 世の中にはこんなに口紅があるのに 自分のものがないなんてありえないでしょ。

          涙の国のあるきかた

          過去に受けた傷は 今も透明な血を流している 時折夢を見ては 寝れない夜を過ごす。 涙を流しながら振り返る そいつを恨んでも 意味がない わかっちゃいる。 わかっちゃいるんだ。 この涙の国にいる限り ずっと雨に打たれている 濡れているのはわかっているんだ。 この国から連れ出してくれる 救世主などおらず。 白い馬も走り去った。 ならどうするか?と言うと。 自力で歩いて濡れないところまでいく。 空色の傘を刺して愉しむ。 いくらでも 切り抜けられる。 いつかは晴れ間が来る日

          涙の国のあるきかた

          電子の天使

          綺麗な白い髪に透き通る肌 誰もが目を引く そのかんぱせは 誰もが綺麗と疑わない あなたの背中には 見えない羽があって 色をつけたら その色はきっと誰も知らない 綺麗な色 その色にあなたは名前をつけない 名前をつけてしまうと それは概念になってしまうから。 あなたの奏でる音楽は 天使が祝福してるよう 電波に乗せてみんなに届ける 二次元と三次元をドラァグする 君は電子が生んだ天使

          Happy?

          あなたはやたらと 幸せアピールする。 それは本当に幸せなのかい? 人にいいなあと 羨ましがられて そのチンケな自尊心を 膨れ上がらせている だけじゃないのかい? 本当に幸せな人は そんなことはしないよ。 ただ今ある幸せを 素直に受け取り ありがたいなぁなんて思いながら ゆっくり味わってる やたらと幸せだとアピールしても 意味がないことを その人たちは知っている ねえ、 それは 本当に幸せなのかい?

          まわり道 終

          先生が家に来た。 「久しぶり」 「オヒサシブリデス」 なぜか棒読みになってしまう。 気まずい。 隣にはお母さんがいる 「今日は、ね、ちょっと辛い宣告をしに来たの」 「まさか」 「休学、しませんか?」 「休学……」 退学ではなく休学。 お母さんは、フッと息をつく。 「あなたは成績は悪くなかったし、学校での態度もさして問題はなかった。だからこそ、今、つまづいてしまったことが何かの糧になればという、先生達の判断です」 「はい」 「少し回り道をして、あなたなりにゆ

          まわり道 7

          私は何がしたいのかわからない。 さして才能があるわけじゃない。 アニメとかでよくあるチート特殊能力もない。 ただの普通の女の子。 だけど、人より優れていたい。 誰か、 みんなも認める特別な人から愛されないかな。 そうすれば、私も特別な人になれるのに。 特別になれたら、何もいらない。 そうなりさえすれば次の日亡くなっても 笑って死ねる。 なーんて、ね。 そんな夢みたいなこと言っても、仕方ないか。 私は学校に行けてない。 それだけ、人より劣ってる。 どんな劣等生も、ブツク

          まわり道 6

          「ちょっと、外出しない? 家の中にいたって仕方ないでしょう」 仕方なくはない。 むしろ、学校関係の誰かと鉢合わせたら怖い。 それでもし、噂になったら…… 「あいつは学校行かずに遊んでる」 なんて言われたら、気まずくて余計行けなくなる。 あと、私は人混みの空気の独特な雰囲気が苦手。 香水と柔軟剤、制汗剤の人工的な香りに、 人の汗や皮脂の匂い。 湿っぽいジトっとした空気に むせかえることがある。 人の声が全部私に突き刺さる感じがする。 人が怖い。 人は悪意を向けてきて傷

          まわり道 5

          *** カウンセラーの先生は優しかった。 学校に行けないあなたは悪くない と言ってくれた。 でも、なんで学校にいけないのかは 聞かないでいてくれた。 いじめられたわけじゃない。 心底学校が嫌なわけではない。 どうしてなんだろう? 「あなたは……大人になるのが怖かったりする?」 「え……!」 大人になるのが怖い…… 言い当てられて、どきりと胸を打つ。 このまま、一年、2年と過ぎ、いずれ卒業して、年齢を重ねていき、大人になって。 遠い昔の誰かが引いたレールに敷かれ

          まわり道 4

          不思議な夢を見た 制服姿の私は学校に行っていて みんなと一緒に お昼を食べたり 勉強したり。 すごく楽しく過ごしてる。 夕暮れの渡り廊下で 私と男の子が向かい合わせで 対峙している その子を見ていると。 胸が高鳴って、呼吸が苦しくて 恥ずかしくて、どうにかなってしまいそう。 だけど その子の顔が見えない。 あなたはだれ? 目を開くと、いつもの子供部屋。 ものが多く 散らかった部屋。 窓からさす西陽に ホコリの金糸がキラキラと舞う。 気づいてしまった。 気づきたく

          まわり道 3

          薄暗い部屋の中 ラジオのノイズを聴く。 それは音の波のように私を包む 波で声をかき消して 海の底まで誘って 息ができる海のような場所に 私はひとり 何もせずにただたゆたう。 なんで私は こんなになってしまったのか? わからない どうしてだろう? 考えても何も出ず 瞳を閉じた。 さらに、深い深いところへ。