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超音波療法による影響とその機器設定


はじめに

超音波療法は、高周波の音波エネルギーを利用した物理療法の一つです。人体に対して非侵襲的に適用でき、さまざまな疾患や障害の治療に用いられています。超音波の種類には、連続波とパルス波の2種類があります。


設定の概要

設定:Duty比

連続波は、一定の強度で連続的に照射されるのに対し、パルス波は断続的な照射となります。パルス波では、照射と休止を繰り返すDuty比(デューティー比)が設定されます。一般的には、10〜50%のDuty比が用いられ、組織の過熱を防ぎつつ十分な治療効果を得ることができます[1]。


設定:周波数

超音波の周波数は、1〜3MHzが一般的です。周波数が高いほど波長が短くなり、浅い組織に作用します。逆に、周波数が低いほど波長が長くなり、深部組織まで到達します。治療目的に応じて、適切な周波数を選択することが重要です[2]。


設定:強度

強度については、0.5〜3.0W/cm^2の範囲が一般的に用いられます。高い強度では、組織の過度な加熱や損傷のリスクがあるため、注意が必要です。通常は、患者の感覚に基づいて調整されますが、治療部位や病態に応じた適切な設定が求められます[1]。


設定:時間

治療時間は、5〜15分程度が一般的です。超音波の作用時間は、組織の温度上昇と関連しています。温熱効果を目的とする場合は、より長い照射時間が必要となる場合もあります[3]。


適応疾患の概要

超音波療法の適応となる主な疾患や障害は、以下のようなものがあります[4]。

  • 腱炎、頸部痛、腰痛などの筋骨格系疾患

  • 関節リウマチ、変形性関節症などの関節疾患

  • 末梢神経障害、脳卒中後遺症などの神経系疾患

  • 創傷治癒の促進、瘢痕組織の軟化など

ただし、急性炎症期や悪性腫瘍、血栓性静脈炎、妊娠中の子宮周辺など、超音波照射が不適切とされる病態もあります。適応の判断には、十分な評価と注意が必要です[4]。


実際の臨床現場では、超音波療法は他の物理療法や運動療法と併用されることが多くあります。超音波により組織の柔軟性や伸張性が向上することで、運動療法の効果を高められる可能性があります。また、薬物との併用により、経皮吸収を促進する効果も期待されています[5]。


超音波療法を効果的に実施するには、適切な機器の選定と設定、患者の状態に応じた治療パラメータの調整が重要となります。また、エビデンスに基づいた適応の判断と、的確な治療ゴールの設定が求められます。超音波療法は、物理療法の選択肢の一つとして、今後も臨床現場で活用されていくことが期待されています。詳細については、有料記事でさらに詳しく解説しています。

【引用文献1】

[1] Watson T. Ultrasound in contemporary physiotherapy practice. Ultrasonics. 2008;48(4):321-329.
[2] ter Haar G. Therapeutic applications of ultrasound. Prog Biophys Mol Biol. 2007;93(1-3):111-129.
[3] Robertson VJ, et al. Therapeutic ultrasound for physical therapy. Phys Ther Rev. 2006;11(1):6-18.
[4] 日本物理療法学会. 物理療法ガイドライン. 2020年版.
[5] Ahmadi F, et al. Ultrasound and microbubbles: their combined action on drug delivery. J Control Release. 2020;327:198-224.


有料記事

超音波療法は、筋骨格系疾患に対する効果的な治療法として注目されています。その適用には、適切な機器設定と治療プロトコルの選択が不可欠です。ここでは、超音波療法の効果を最大限に引き出すための実践的な方法を、具体的な数値と症例を交えてご紹介します。

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