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【読書感想文】桜の和歌を読んで一足早く春の気分を味わう (724字)

岩波文庫に入っている『金葉和歌集』を読みました。古今和歌集から始まる勅撰和歌集の五番目に当たります。平安時代後期に出された時は評価は低かったそうですが、その後良い歌集だと言われるようになったそうです。

古語の解説や現代語訳が載っていないという欠点があります。分からない言葉を調べずに読んだので、意味を取り違えている和歌もあると思います。でも声に出して読むと五七五七七の言葉のリズムが心地良くて、気持ちよく読めました。五七五七七という音のまとまりは、日本人の心に刻まれている気がします。

桜や月、雪といった自然を詠んだ歌が好みでした。まだ寒い日が続いていますが、来月は3月。桜が開き始めるころです。この記事では、桜を詠んだ歌の中で好きなものを紹介します。

吉野山峰の桜や咲きぬらん麓の里ににほふ春風 藤原忠通

分かりやすくて、さわやかな和歌。口調も良くて、繰り返し口ずさみたくなります。桜が咲くころに吹く風は少し冷たいこともありますが、さわやかで木の芽の匂いを含んでいたりします。

桜花風にし散らぬものならば思ふことなき春にぞあらまし 源俊頼

この歌も口調が良くて、すらすらと読めます。人の心の機微を描いていて、現代人にも理解しやすいです。桜が散るか散らないかは、毎年気になります。桜のことをあれこれ考えるのは、日本人らしい心でしょう。

衣手に昼は散りつる桜花夜はこころにかかるなりけり 隆源法師

これは美しく繊細で、幻想的な歌です。昼間は服に落ちてくる桜が、夜は心に落ちかかる、とは独創的な表現ではないかと思います。自分の心と自然はつながっている。こんな確信を感じました。

古典の和歌は何度読んでも飽きません。また秋の頃読み返して、今度は月の歌を味わってみたいです。





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