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木崎みつ子『コンジュジ』
仮に小説として不出来だったとしても称賛するつもりで『コンジュジ』を手に取った。トラウマというセンシティブな問題に対峙しようとした作者を応援したい気持ちがあったからだ。読み進めるにつれ、僕の気持ちはどんどん盛り下がっていった。小説の文章が下手なのはいくらか目を瞑るつもりでいた。問題は、それが「いくらか」と言える程度に留まっていなかったことだ。
いちいち指摘していたらキリがないものの、愚にもつかない
第五回ことばと新人賞受賞作(池谷和浩「フルトラッキング・プリンセサイザ」)
ことばとも五大文芸誌も掲載される小説の質が低い点で共通しているが、ストレスなく読める点ではことばとより五大文芸誌のが優れている。五大文芸誌は――さすが大手の出版社と褒めるべきか――校正漏れが皆無に等しいからだ。
ことばとvol.7は前号に続き校正漏れが多かった。このザマなら、書肆侃侃房の他の書籍も校正漏れが多いのではないかと気持ちが萎えてしまう。文学フリマで五百円で売られている雑誌なら気にならな
久栖博季「ウミガメを砕く」
新潮2023年6月号。
読み始めてすぐに思ったのは、文章が下手、ということ。
書き出し、
《素足で陶器の破片を踏んだら、目の中に炎が燃えた。烈しいのに暗い炎だった。わたしは咄嗟にiPhoneのライトを点灯してマントルピースの上を照らし、その上に置いてある古い写真を睨みつけた。そうして動物に囲まれた写真のひとを目の中の炎に閉じこめて「アッシジの聖フランチェスコ」と揶揄する。そのひとの髪は短くさ
パーラ・ハルポヴァー/ヴィート・クルサーク『SNS-少女たちの10日間-』
パーラ・ハルポヴァー/ヴィート・クルサーク『SNS-少女たちの10日間-』、十二歳の少女に扮した三人の女優がSkypeを通じて男性から性的なアプローチを受ける、その生々しいプロセスをカメラを追いかけるという内容。着眼点は面白い、が、それだけ。
ほとんど全編にわたって、Skypeを通じて男性から連絡が来る⇒女優が連絡を受ける⇒男性が女優に脅しをかけたり性的な要求をしたりその場で自慰をしたりする⇒女