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子どもたちと出会って人生が豊かに。【里親体験談ーホッブス美香さん #2】

前回に続き、ホッブス美香さんにお話を伺いました。

ホッブス美香さん
東京都B区在住。2003年に里親登録をし、2015年からファミリーホームを運営。アイルランド人の夫と共に長期・短期合わせて18人の里子を育てる。

里親制度について

ー里親制度はあくまでも子どものための制度で、子どもを大切にすることが第一義的にはあるとは思うのですが、里親やその家族にとってはどのような制度だと思われますか?

私には実子はいないのですが、周りの実子がいる里親を見ていると、実子との相性で大変な思いをされた方もいらっしゃいます。逆に、実子から「弟や妹が欲しい」と言われて里子を迎える決心をされた家庭もあります。 今まで語られてきていない分野だと思います。これからの里親制度では、里親家庭の実子に対するケアについても考えるべきだと思います。日本ではまだまだ里親制度の中の実子に関するケーススタディは乏しく「こういうケースだと、どうなるのだろう?」というデータの蓄積が必要かと思います。 皆、ぶっつけ本番で里親にならざるを得ないのですが、私自身、里子達を迎えることで私の人生はとても豊かになりました。


ー夫や親戚といった周囲の人への影響はいかがでしょうか?

うちの場合は夫が外国人なので、周囲の人が我々夫婦と里子を見て、血縁関係ではないことは明らかにわかっていたと思います。9割方の人が「なにか手伝うことがあったら言ってね」など好意的な言葉を下さいました。里親になって思うのは、人ってこんなに暖かいのだ、ということです。マイナスな態度がゼロとは言えませんが、プラスのサポートの方が圧倒的に多いです。
家庭内については、里親になる夫婦は大体どちらか片方に、里親になりたいという強い意思があることが多い印象です。もう片方は後からその熱意にほだされていくような形ですかね。私の場合、自分の家族には一定程度の理解は求めましたが、その他の親戚からの声はあまり意識しませんでした。とにかく、この里親制度というのが社会的に必要であり、そしてとても価値があることなのだと思っていました。

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(写真はホッブス美香さんご提供のもの)


ー周囲の方からのマイナスな意見、里子の受け入れを反対される理由は?

子どもを育てることにはもちろん責任が伴うし、社会的養育にいる子にはその背景にいろんな理由があり、それを含めて丸ごと受け入れることができるかの不安があると思います。非常に辛い経験を持つ子どももたくさんいますから。ただ、逆にいうとそういった事実を受け止めて、子どもを育てるというのは非常にやりがいがあることです。日本は社会的養育が必要な子どもの数自体は少ないものの、そのような状況にいる子たちが抱える問題は非常に重いものが多く、私自身、そういった社会課題についての気づきがたくさんありました。


ーこんな人は里親に向いている、という特徴はありますか?

なんでも一人でやろうとしたり、格好つけたりする人は向いてないかもしれません。里親として、辛いときは辛いと周囲に助けを求めることができる人が向いていると思います。私自身、先輩の里親達にたくさん相談してきました。社会的に意義があることに関心がある人や、好奇心が強い方、数が少ない存在に気持ちを寄せられる傾向のある方が向いてると思います。あと自分自身も少数の側になることを恐れない人は向いているでしょう。

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(写真はホッブス美香さん)

ー里親をされていて、印象に残っていることはありますか?

まだ20年経っていないので、あと10年ほどすると里子達も大人に成長し30歳あたりになったら、「あのとき受け入れてよかったな」と思える日が来るのかなと思っています。幼い里子の場合は、おそらく実子の子育てと同じで、私たち里親と関わる中で言葉が増えてきたり、最初に「ママ」って呼んでもらえたり、信頼してくれて表情が明るくなってくれたりすると嬉しいですね。

もう10年以上前の話になりますが、当時10歳の子とうまくいかなくなり措置変更になったことは大きな出来事でした。小学校の卒業式は夫婦で参列できたのですが、以後全く会えていません。


ー現在5人のお子さんを受け入れているとのことですが、かなり忙しく大変なのかなと想像しています。いかがでしょうか?

ファミリーホームはスタッフを雇うことができますので、例えばその方にお料理やベビーシットをお願いできます。また、子どもの内でも年齢の高い子が幼い子の面倒を見てくれたりもしますね。朝の準備と送り迎え、夜の時間帯は大変ですが、他の時間帯は人の手を借りつつうまく回している感じです。


里子の自立について

ー里子を卒業し、自立したお子さんたちとのいまの関係性は?

以前うちにいて、現在22歳の男の子は、お盆やお正月に帰ってきてくれますね。また別の子で、頻繁に顔を見せてくれるというよりは手紙や電話でやりとりしている子もいます。施設には施設の役割があるけれど、里親家庭は「実家」になれるというのはすごく大きな役割だと思うし、里親の長所だと思います。


ー里子が里親家庭を出て自立していくときに、経済的なサポートもしますか?

東京都の場合は、里親から自立するときにある程度まとまったお金が給付されます。しかし、そういった給付があったとしてもやはり大変だと思います。学費なども立て替えたりしてきました。すべてが返ってくるわけではないのである程度の負担も発生します。これから我が家も二人程立て続けに自立の時期を迎えますので、できるだけのサポートは考えています。

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ここまで読んでいただきありがとうございました。

美香さんから伺ったお話の続きは、こちらから読めます。
ぜひご覧ください!

▼美香さんへのインタビュー第三弾▼


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