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通訳ガイド、アメリカ養子縁組事情を垣間見る

通訳ガイドのぶんちょうです。
先日のツアーはアメリカからのご家族の案内でした。

ご両親と子供2人。ご家族4人の中で下の子だけは日本人です。正確には日本人と言う定義は違いますが、見た目が日本人と言う意味です。

アメリカは養子縁組が多く、生活に余裕がある層は、日本に比べてはるかに多く養子として血の繋がりのない子供を家族として迎えています。年間約12万組の養子縁組が行われているようです。

日本は赤ちゃんの頃に、全く縁のない子どもを養子にすることは、あまり聞かない気がします。でも、今現在、養護施設で暮らす子どもは2万人以上いるようです。家族といることがベストというのは短絡的だとは思いますが、繰り返される子どもへの虐待のニュースを聞いていると、日本も、養子縁組がもっと社会に受け入れられたほうがいいのではないかと感じます。

その意味でお金に余裕のあるアメリカのセレブの役割は大きいのではないでしょうか。

ブラッド・ピット & アンジェリーナ・ジョリー夫妻の6人の子どものうち3人は他の国からの養子だそうです。他にも沢山のアメリカのセレブが、人種を越えて養子を迎えています。ちょっと調べただけで、本当に多くのセレブが養子縁組していることがわかりました。

私もツアーで外国人に出会うなか、今まで何度か中国人の子どもを養子縁組している家族に出会いました。子どもが少ないからではなく、5人目の子どもが養子だったりしたのではじめは驚きました。

そして彼らは例外なく兄弟仲が良く、両親から愛情たっぷりに育てられています。

今回のご家族に関して、詳しい事情はわかりませんが、今は中学生になる男の子を3ヶ月の赤ちゃんの時に、日本に来て引き取ったとのことです。

今回の訪日の目的は観光ですが、そのうちの1日を、その男の子の日本の故郷を訪ね、生母に会う日として設けていると教えてくれました。その考えの背景として、今後の彼の将来を考えて生母に一度会わせておきたい。今回は生母の母親、つまり祖母にも会うのだが、年齢を考えると祖母に会えるのは、これが最後になりそう。と言うことがあるそうです。

今回のツアーは、なんとこんな一大プロジェクトが含まれていることが、わかったのです。可愛いがっている子供の生まれた国と、その文化に一般の観光客以上の思いがあることは想像できます。さあ、どんなツアー、どんなガイディングで、思い出を沢山作ってあげられるか…….。仕事をする側のガイドとして、せいいっぱいのサポートをしていかねば!

そういえば、ツアー前にご家族のフルネームをいただいた時に、いちばん下の子だけは、日本語の苗字がミドルネームになっていました。日系のご家族かな位に思っていましたが、養子の話を聞き、名前の件をすぐに思い出してなるほどと思いいたりました。

彼のルーツを名前のなかに残してあげると言う、おそらく、これはご両親の粋な計らいかと思います。

食べ盛りのその男の子はコンビニが大好きで、食事の合間にさえ、おにぎりやお菓子を買っては食べていました。お父さんに「また?さっき食べたばかりだろ」とツッコミを入れられながらもたびたび小銭を無心している姿がなんとも可愛い。

日本の漫画が大好きで(よくあるアメリカの10代です)彼の部屋は四面、漫画であふれているそうで、もう新しい漫画を置くスペースがないと苦笑するご両親。

新幹線や車の中では、身体こそ大きいもののお母さんの肩にもたれていびきをかいて爆睡。姉とハイキングしながら、ふざけあったり。

そんな彼も、生母に生まれて初めて会うことに、とても緊張していると言うのはお母さんの言葉。それはそうですよね!彼の気持ちは想像できます。

でも、ひょっとしたら彼以上に緊張しているのはご両親かもしれないですよね。

この家族と東京を一緒に出発して地方で2泊し、再び東京に戻りました。東京のホテルは、実はお子さんの引き渡しが行われた場所でした。近年、新しく立て直されたけれど、昔の面影を建築デザインに残してありますよ。と告げました。当時を思い出すものがきっと見つかるのではないかと思います。

ガイドとして、ご両親にとって大切なお子さんの故郷をいっしょにゆっくり回り、日本の歴史や習慣、メンタリティを伝えてきました。

あなたから日本のことを本当に沢山学べた。ガイドがいてくれて本当によかったとおっしゃってくれました。いつでも、この言葉がガイドにとっての喜びです。次の仕事へのエネルギーの源です。

今日はまさに、彼らが日本のお母さんを訪れる日。私は同行しませんが、家族みんなで緊張しながらも、素晴らしい再会になることを祈るばかりです。



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