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秘密

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秘密 27(終)

秘密 27(終)

私は始めから知っていた、
彼が3億目当てだと。

彼が千葉の老人ホームで建設の仕事をしていたと聞いた時から、
何か違和感を感じていた。
私の借りていたトランクルームの近くで働いていたなんて偶然?
と思ったけど偶然の訳がない、
私がお風呂に入っていると、
部屋で何かを探していたこと、
私の家で一緒に住みたいと言ったこと、
それで気が付いた。

トランクルームの鍵を探しているのだと。

だから私は鍵を

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秘密 26

秘密 26

3億円は石川あみさんに返した。
そして彼女は数日後、警察に行った。

テレビのニュースで少し石川あみさんのことを話していたけど、
そんなに大きなニュースにはならなかった。

私たちは週末にトランクルームを解約しに、
千葉の田舎にあるトランクルームに向かった。

中を確認してから解約しようと思い、
トランクルームを開けると中には、
小さなかばんがポツンと置いてあった。

「このかばん何?」

彼が聞

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秘密 25

秘密 25

「トランクルームは解約されているし、
かおりさんが誰かわからないし、
探すのは大変だった。

無駄に時間だけが過ぎて、
不安になって色々と考えたの、
このまま他人の名前で一生他人のまま暮らすなんて出来ない。
私は石川あみで生まれて、石川あみで生きたい、
逃げるのはもう嫌だって思うようになったの。
だから警察に行って話すことにしたの、
警察に行ったら3億はどうした?って話しになるから、
かおりさんに

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秘密 24

秘密 24

「5年前私の母が死んで私は遺産を相続したの。
それがあの3億円、
でもそれが原因で親族の中が悪くなって、
叔父さんはお金に困っていたみたいで、
しつこく私にお金の要求をして来た。

誰も母の死を悲しまないで、
お金のことばかりで、
人が信用出来なくなって、
働くのも嫌になって、
もう生きることに疲れて。あの山に行ったの。」

彼女の話しを聞いて、
誰も口を開かなかった。

なんて言えばいいのか、

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秘密 23

秘密 23

お互いの車で近くにある、
カフェに行った。

広いお店で奥には半個室のような部屋があったので、
そこで4人で話すことにした。

俺はかおりの隣に座り、
俺の前には尾行男が座った。

「あの彼は誰ですか?」

俺は石川さんに聞いた。

「あっ、彼は探偵さんです。
かおりさんを探してもらっていたの、
彼も同席でいいかしら?」

「・・・はい、いいですよ。」

「それじゃ、私の話しからしますね。」

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秘密 22

秘密 22

「どうしてあの尾行男は3億円のことがわかったんだ?
その亡くなった石川さんの知り合いかな?」

「ぜんぜんわからない。
でもこのまま逃げてもしょうがないから、
あの男の人と話てみる!」

「えっ!そうだな・・・話て見よう。
憶測だけじゃわからないから。」

そして俺たちは家に帰ることにした。
尾行男と話すなんて・・・
大丈夫かな?

ドキドキしながら家に向かうと、
家の近くにあの車は止まっていた。

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秘密 21

秘密 21

「それでそのお金どうしたの?」

「私がトランクルームの鍵を閉めて帰ろうとした時に、
トランクルームの管理人の人が来て、
「石川さん?」って聞かれて私一瞬迷ったけど、
「はい」って答えたの!」

「なんで?「はい」なんて言ったんだよ!」

「だって石川さんじゃないのになんでって聞かれたら、
困るから・・・」

「それで?管理人さんは何だって?」

「トランクルームの家賃を3ヵ月滞納してるって言われ

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秘密 20

秘密 20

彼女は虹の絵をとっても喜んでくれた。

そして「お礼にあげる」と言って、
私に小さなポーチをくれたの。

ウサギの刺繍ある小さなポーチで、
彼女は私にそれを渡すとすぐにどこかに行ってしまったの。

ポーチの中を見たら、
鍵とトランクルームの住所が書いてある紙が入っていたの。

でもトランクルームに何が入っているかわからないし、
怖いから家に帰ってすぐに、タンスの奥にポーチを隠したの。
そして私はす

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秘密 19

私はついに秘密を淳に話すことにした。

遊歩道にあるベンチに座り、
夕暮れで赤く染まった川を見ながら話し始めた。

「5年前のことなんだけど、
私は週末に1人で山に絵を描きに行くことがよくあって、
その日は栃木県の那須のお気に入りの場所で絵を描いていたの。

絵に集中していたら急に声を掛けられて、
それが石川あみさんって言う人で、
あっ!その時は名前はわからなかったけど、
あとでわかって・・・」

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秘密 18

秘密 18

車の中では無言だった。

お互い何から話していいのか悩んでいたのだ。

重たい沈黙を破ったのは、
スマホの着信音だった。

スマホを見ると会社のからの電話だった、
俺は車を止めて外に出て電話を掛けた。

明日の会議の確認の電話だった。

俺は電話を切って車に戻ろうとすると、
かおりが車から降りて来た。

「少し散歩しない?」

「いいよ。」

「なんでここに来たの?」

そこは川沿いの遊歩道で、

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秘密 17

秘密 17

俺はかおりが心配だった。

朝になると車は消えていた、
かおりは尾行されているのか?

本人は気付いているのか?

まさか危害を加えることは無いだろう・・・
でも3億円が手に入るなら人殺しをする人もいるよな・・・

俺は気になって仕事がどころではなかった、
後輩に仕事を任せて3時過ぎに早退した。

そしてかおりのアパートの離れたところから、
尾行男が来ないか見張っていた。

5時過ぎ頃から尾行男が

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秘密 16

秘密 16

私は誰かに尾行されている。

そう感じるようになったのは、
1週間前からだ。

会社の帰りにいつものスーパーに寄った時に、
お豆腐に手を伸ばすと、
棚の奥が鏡になっていて、後の人が私を見ている姿が写っていた。

気のせいかな?と思ったが、
その男性はそれから、会社の近く、駅の近くで何度も見かけた。

私を尾行してる?

まさか?

でも身に覚えはある。

あの3億円が原因かもしれない。

私がお金

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秘密 15

秘密 15

お風呂から出ると、
テーブルにサラダと生姜焼きとみそ汁が並んでいた。

「お腹空いてるでしょ?」

「うん、ペコペコだよ。」

やっぱり人と暮らすっていいことだな。

俺はこの年で人の優しさに触れて人の温かさを知った。

そして、
かおりを守りたいという気持ちが日に日に大きくなっていた。

その日の夜。

夜中に目を覚ますとかおりはベッドにはいなかった。

リビングに行くと、
かおりはカーテンを少

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秘密 14

秘密 14

「あそこに車が止まってるなんて珍しいな」
と思いながら車に横を通り過ぎると、
運転席に人が乗っていて、
かおりのアパートを見ていたのがわかった。

まさか!かおりを尾行しているのか?

そんなはずは無い、
同じアパートには8世帯の人が入居している、
かおりを見ていたとは限らない。

俺はザワザワした気持ちのまま帰宅した。

「お帰り!今日は暑かったよね、
お風呂入ったら?」

「うん、そうする。」

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