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渋谷系とは何だったのか? 都市と音楽から考える

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「渋谷系」とは何だったのか? 〜都市論と現代POPS史から読み解く〜 part.7

・ポストモダン消費とPARCO文化の関係性 

 part6にて吉見・北田は1970-80年代PARCO文化が高度な消費文化を顕在的に現したものと述べているが、この先行研究が仮に正しいとした場合、このPARCO的という「消費文化」が同時代における「ポストモダン消費文化」と類似していると考えることができる。この節では間々田の著書を参考に「ポストモダン消費」の先行研究を踏まえ、PARCO文化との関係性

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「渋谷系」とは何だったのか? 〜都市論と現代POPS史から読み解く〜 part.6

7 PARCO文化について前章では渋谷の盛り場としての成り立ちと音楽文化について論じてきたが、この章では渋谷を大きく変貌させた1970年代におけるPARCOを中心とした西武グループの経済的・文化的な戦略について論ずる。

・PARCOの誕生と歴史

 PARCOは1953年「池袋ステーションビル」として誕生。誕生当時はステーションビルの運営であったが、翌年株式会社丸物の資本参加を受け百貨店業へと移

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「渋谷系」とは何だったのか? 〜都市論と現代POPS史から読み解く〜 part.5

6 渋谷を取り巻く音楽文化 〜1970年代渋谷〜
1960年代の新宿から1970年代の渋谷へ。文化的・音楽的な視点から見てもその変化が現れており、本章では牧村憲一・藤井丈司・柴那典著の「渋谷音楽図鑑」を参考に進めていく。

まず1969年寺山修司が天井桟敷の拠点を渋谷に作ったことが挙げられる。また1969年、後の公園通りに小劇場「渋谷ジァン・ジァン」がオープンし、小室等や吉田拓郎などのフォークシン

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「渋谷系」とは何だったのか? 〜都市論と現代POPS史から読み解く〜 part.4

5 PARCOを中心とした文化的革命 ~1970年代渋谷~
前章では1960年代の新宿について記載したが、1973年のオイルショックあたりを機に、新宿にいた若者のエネルギーは急速に落ち始める。その頃新宿の西口では巨大なオフィスビルを抱えた「新都心」としての開発が行われており、東口ではアングラ文化の拠点となった凮月堂も閉店している。そうした中、1970年代において東京の盛り場が新宿から渋谷に移行し

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「渋谷系」とは何だったのか? 〜都市論と現代POPS史から読み解く〜 part.3

4「アングラ文化」を中心とした若者たちの集いの場 ~1960年代新宿~

ここまで吉見(1987)の盛り場論を元に戦前における盛り場の変遷と、東京においての音楽文化の誕生について述べてきたが、この節では1960年代の新宿に焦点をあて盛り場と音楽文化を同時並行的に論じていく。

新宿は元禄11年に甲州街道の宿駅が設けられて以降、江戸4宿の一つとして江戸時代から発展をしてきた。戦後になると、新宿駅前付

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「渋谷系」とは何だったのか? 〜都市論と現代POPS史から読み解く〜 part.2

3. 東京における戦後の音楽ルーツとエルビスプレスリーによる「毒」が与えた影響

前節では戦前の東京における盛り場に焦点を当てて論じたが、本節では東京における音楽文化のルーツについて述べていきたい。
まずポピュラー音楽の定義を2010年増淵 敏之「欲望の音楽「趣味」の産業化プロセス」のなかで著者はこう述べている。

「①大規模な、社会文化的に同質的な場合が多い聴衆集団に大量に分配されるものとして表

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「渋谷系」とは何だったのか? 〜都市論と現代POPS史から読み解く〜 part.1

2. 東京における盛り場から紐解く 〜戦前における盛り場の形成〜ここから数回については長すぎる渋谷系への布石となる。音楽とは懸け離れた文章になるので興味のない方は飛ばしていただければと思う。

渋谷という場所の先行研究として、吉見俊哉著書『都市のドラマトゥルギー』(1987)を参考にしていく。本書は東京の「盛り場」についての変遷とそこでの人々のダイナミズムを写している。

盛り場の「盛」という言葉

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「渋谷系」とは何だったのか? 〜都市論と現代POPS史から読み解く〜 part.0

初めましてゆうすけと言います。

簡単に自己紹介すると1995年東京生まれ、高校あたりから手当たり次第バンドを聴くようになり、音楽について深い造詣を持ちたいなと思うようになりました。

リアルタイムでよく聞いていたのはいわゆる「10年代シティポップ」と呼ばれるものであり、この音楽は周囲の人間も挙って好んでいました。

それともう一つ興味があったのが今回話す「渋谷系」です。

インターネットサイトや

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