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逆噴射プラクティス2019レギュレーションまとめマガジン

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逆噴射プラクティス2019レギュレーションに乗っ取って創作された作品をまとめる事を目的としたマガジンです。
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#パルプ小説

素晴らしきホーキヤロウたち

素晴らしきホーキヤロウたち

 雲ひとつ無い快晴だ。ただし、私達の頭上だけは。

 首が痛くなるほどまっすぐ真上に向けていた頭をおろしていくと、すぐに雲の壁が見え始める。普段は綿雲や千切れ雲程度しか見かけない荒野の上を、かつてないなんて言葉が軽く見えてしまうほどの大嵐が覆っている。

 大嵐の中心には目がある。ぽっかりと雲のない竪穴。その周囲は蠢く灰色の岩壁とでも言いたくなるような、ずっしりとした雲が積みあがっている。時折光る

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世界を揺るがす天才CEO 亜嵐慶

世界を揺るがす天才CEO 亜嵐慶

 その時、男は得意の絶頂だった。

 話題のベンチャー、ビッグトーク社。その新製品発表会。詰めかけたプレスが注目する中、巨大プロジェクターを前にして堂々とプレゼンを続ける男。

 ビッグトーク社の若き創業者、亜嵐慶(あらん・けい)。

「まさにセキュリティ乱世の時代! 大手が開発した決済システムが、最近やられたばかりだ!」

 亜嵐は両手を広げて大仰に続けた。

「皆さんも覚えてますよね。『二段階

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ノア・サーティーン

ノア・サーティーン

「行ってしまうのか……ノア」
「はい……お爺様」

 雨はやむことなく降り続けている。しとしとと、いつまでも。ノアと呼ばれた少女は丘の上から見下ろしていた。変わり果てた国の姿を。一面の泥の海を。

 その傍らで山羊のチッポラがメェと鳴いた。ノアは微笑み、その頬にそっと触れる。

「大丈夫。わたし、絶対戻ってくるよ」

 そのおさげ髪が風に煽られ、ばたばたと揺れている。健気で気丈。その様を見てメトセ

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迷子の迷子の子犬さん(再投稿版) Part1 #黄昏二の三

迷子の迷子の子犬さん(再投稿版) Part1 #黄昏二の三

 その路地を抜けた先には、大正浪漫建築群が広がっている。
 人呼んで──黄昏町二丁目三番地。
 もしもそこに行き当たったなら、振り返らず、立ち止まらず、真っ直ぐに通り抜けなさい。さもなくば──

「──そうなります」

「言うのが遅い!」

 私の説明に、目の前の犬耳少女が叫んだ。

 年の頃は15歳くらいだろうか。犬耳以外は普通の少女だ。私は着物の袖口から飴を取り出すと、彼女に差し出しつつ語り掛

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空を行くもの

空を行くもの

荒涼とした土地。乾燥して寒く、足元は石ころだらけ。彼方の山々には万年雪。あまりにも長い距離を進んで来たため、みな疲れて無口だ。

「あの山は、世界の果てだそうですが」誰かがぼつりと言った。

「そうか。その向こうには、何があると思う?」馬上の男が嬉しげに問う。

「……何もないと思います」男はぶっきらぼうに答えた。「何も」

「そうではあるまい。あの彼方にも鳥獣は棲み、人が暮らしている。そのように

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空に喰らう大鯱

空に喰らう大鯱

逆上した大回転(だいかいてん)を、ひと噴射の推力でいなした正体不明の航空力士は、アフターバーナーの勢いそのままの大回転の背後を容易に取り、土俵空域から弾き出した。送り出しだ。

その手には鮮やかな前垂れが握りしめられている。大回転のものだ。あのたった一度のぶつかり合いで、廻しから毟り取ったのだ。予期せぬ領空侵犯力士の蛮行に、ツェッペリン観客席では、神聖なアクロバット取組を妨害したと怒号が飛び交い、

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8月7日のしゃれこうべ

8月7日のしゃれこうべ

「ナナミ、タバコなんて吸ってたんだ?」

「5年くらい前からね。そろそろやめどきかなって思ってるけど」

「なんで?」

「最近は肩身が狭いのよ」

 幼馴染・アキラの質問に、私はぶっきらぼうに答えた。会社では喫煙所が撤去され、禁煙デーなんてものも始まった。それでなくとも値上がりばっかで財布を圧迫するし、ロクなことがない。

 そういうわけで、そろそろ禁煙するか、他を切り詰めるか……というのが、目

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ぱるぷぶ!にきめ!!

ぱるぷぶ!にきめ!!

「ラヴ先輩、いよいよ来ましたね…」
「…うん、いよいよだね」
「今年こそ実績を残さないとこの部も流石に潰れちまうよな!」
「新入部員」「入らなかったし」「「潰れる!」」

Twitterで連載している「忍者殺しさん」のエピソードが終わり、日付が変わったその時…!

「「「「「で、出たーーーっ!!」」」」」

【主題歌:ぱるぷんて!】
★ファミコン的電子ピコピコ音アキバ系ポップな曲★
★声優たちの歌

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ニルラポランと君は笑った

ニルラポランと君は笑った

 ポラペニアンとマニャマニャの二人がテレタンのオアシスに辿り着いたのは、蛙の太陽が真上に、そして亀の太陽が西から昇り始めた頃だった。

「うわぁ」

 ポラペニアンの丸い顔がぱぁっと輝く。それはまるで、かのゾラの花が咲いたかのようだ。市場の賑わい。異形の人々。奇怪な大道芸。ポラペニアンのふっくらとしたほっぺがぷくりと膨らみ、その小さな体がバザールの中を跳ねるようにして歩いていく。そのふわふわの衣服

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