ノートちゃんは施しの天使 #ppslgr

「ぼ、僕の書いた作品が、Noteの公式おススメになってる……!」

超巨大創作売買施設『Note』の片隅にあるうらぶれた西部劇風のバー、「メキシコ」。
その弾痕まみれの壁面の一角にかけられた真新しいデジタルサイネージに映された映像に、建築作業服をまとった男性が食い入るように見入っている。

「D・A、それは本当か!?」
「メデタイだ!お祝いしないと!」

メキシコ店内でテーブルに座って今度の催しの打ち合わせをしていた、俺こと黒ずくめの胡乱なパルプスリンガーR・V。そして異人奇人バーゲンセールみたいなパルプスリンガー達の中では比較的常識的なカジュアルの服装にメガネをかけた青年、M・Jが即座に反応する。

「本当だよ、ほらこれ!」

建築作業服の男性パルプスリンガーことD・Aが指さしたデジタルサイネージの板面には確かに彼の作品がNote公式おススメマガジンに収録されている事が明示されている。

「こいつはメデタイな!盛大に祝うと……マッタ、D・Aこの作品の冊子ストックは今幾つだ?」
「えーと、残り五部くらい?パルプスリンガーが結構持って行ってくれたから」

俺が言わんとする事に察しがついたのか、M・Jもまた表情をこわばらせる。

「それ不味いかもD・A、もしかしたらNoteの来場者が一気にここに詰めかけるかも。そしたら絶対に足りないよ!」
「えっ、えっ、でも今まではメキシコにそこまで人が押し寄せる事なんて」

彼の言葉を否定するかの如く、表から人だかりが殺到する足音が押し寄せてくる。かなりの数だ、ノートちゃんの宣伝効果おそるべし。

『ノートちゃんのおススメがここにあると聞いて!』

老若男女種々多様な命知らずの連中が一斉にメキシコの入り口から踏み込んでくる。突如の襲来にぎょっとするその他の面々。

「一体どこにあるの!」
「おい、あれじゃないか!」
「見せて見せて!」

そこまで広いとは言い難いメキシコ店内で俺達三人に向かって無謀にも殺到してくる来店客!

BLAM! BLAM! BLAM! BLAM! BLAM!

立て続けに鳴り響く銃声。メキシコの天井にまた増える弾痕。いきなりの発砲に思考停止して硬直する来店客達。

「並べ」
『エッ!』
「並べ!二列にだ!横入や揉め事は許さん!脳みそぶちまけられたくなかったらすぐに行儀良く並べ!」
『サ、サーッ!イエスサーッ!』

のび太の如き早業でクイックドローからの威嚇射撃を披露した俺は押しとどまった来店客の連中を相手に整列させ、二列に並ばせる。

「D・A!印刷するのはこの作品であってる!?」
「それ!でも二人に手伝ってもらうなんて」
「良いから良いから、気にしないで!」

すぐさまM・Jがメキシコ備え付けのパルプ用印刷機を回し始める。この印刷機は冊子程度なら印刷から製本までこなしてくれる優れものだ。

一方で俺は来店客を二列に並ばせたうえで列を整理し少しでも空調の利いたメキシコ店内に客共を並ばせる。他のパルプスリンガーの連中が突如起こった事態に怪訝な顔をしているがまあ仕方あるまい。

そうこうしている内にも後続の来店客がやってくる。もちろん整列誘導しなければ揉めるのは目に見えているわけで、己の手にした禅の極まった造形のリボルバーを曲芸回転させながら列誘導を再開した。

―――――

『カンパーイ!』

恐ろしく伸びた来店客の列がなくなり、夕日が傾く頃合いになった時間帯に俺達はようやくD・Aの作品がNote公式おススメに選ばれたことを祝うべくCORONAを掲げて乾杯した。

「いやあ、一度にあんなにたくさんの人が読みに来てくれるだなんて、夢の様だよ」
「公式のプッシュ効果はバカにならないな、とはいえパルプ自体も面白かったから必然的ではあるが」
「でもいきなり一杯人が来るとびっくりするよね」

M・JがCORONAを煽っては苦笑してみせる。彼は彼で一斉に人が押し寄せた事のある経験の持ち主だ。かくいう俺も同様の経験は多少は、ある。

天狗面にアロハシャツなパルプスリンガーのお手製おつまみを分けてもらって酒を楽しむ俺達の所に、ふいとエメラルドグリーンのロングヘアーに深窓の令嬢めいた服装の少女が顔を出す。この『Note』の管理AIであるノートちゃんの巡回用躯体だ。

「こんばんは、D・Aさん。おススメさせていただいた効果はありましたでしょうか?」
「うん、うん、それはもうバッチリ!本当にありがとう!」

D・Aの言葉ににこりと品のよい微笑みを返すノートちゃん。実際こうしてピックアップにより面白い作品が人目に触れるのは他人ごとであっても喜ばしい事である。

「でも、私達は利用者の方のおススメを拾い上げておりますので、お礼を言っていただくならサポートを……ここの人達はドネートって呼ぶんでしたでしょうか、サポートされた方に言っていただいた方がいいかもしれません」
「フムン」

そういえば公式のおススメに採択されるには、まず利用者が自費でサポートした上でおススメする必要がある。利用者がおススメした中からさらに公式内でチェックして計上しているのだ。

「あ、そういえば確かにサポートとおススメしてくれた人が居た様な」
「なるほど、誰だ誰だ?」
「僕も見たいな」

男三人、D・Aのスマホに表示されたNoteアプリを覗き込むと、そこには俺達が見慣れた感じの赤ら顔の人物が、人好きのするしかして底知れない雰囲気の笑顔でアイコン表示されていたのであった。

【ノートちゃんは施しの天使:終わり】

前作はこちら

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