ヒトよ、ネコと和解せよ -8-
「避難誘導要請!?またか!?」
「まただ、さっさとやれ。ほっときゃどの道大惨事だ」
「グヌヌヌヌヌ……もっと穏便にとか、済まんのかね?」
「くだらん節約考えると人死にが増えるだけだぞ」
通話相手の言葉を一蹴する。どうせ避難させずにこのまま事態を放置すれば大量のネコ搭乗ソウルアバターがこの人工島を埋め尽くす。そうなればまともに戦えない連中は死を待つだけだ。
「わかった、誘導は直ちに開始する。該当エリアからの退避には時間がかかるぞ」
「承知した」
そこまで言って通信を切る。使いっぱしりのネコですら強力な兵器に乗って出てきた以上、大量のネコが集まっているこの本拠地から何が出てくるのかは想像に難くない。ソウルアバターの生物が居さえすれば簡単に現出出来る性質がまさかネコに悪用されるとは。
「終わった?」
「終わった、もっと早く連絡しとくんだったが仕方がない」
「にゃーう」
自販機が置かれた典型的オフィス休憩室にて、俺達は目的地の突入前にわずかな休憩時間を取っていた。これまでの戦闘経過からするに、ほぼ全ての交戦相手がある種の催眠洗脳下にあったようだ。ヒトもネコもだ。
「R・Vはここまでの経緯で黒幕の予想はつく?」
「正直わからん、読み取れるのは人間に強い敵対心を持っていることくらいだ。だがこうもネコを利用する事に拘るってことは黒幕もネコかもなぁ」
俺の回答を肯定するM・NとFuちゃん。
「ワカル。同じことをやるにしても人間なら人間だけ使えば済むし」
「にゃーん」
「二人もそう思うか」
もしそうなら、実にやりにくい。だが、そうだとしてもただ黙って見過ごせば待っているのはろくでもない結末だ。俺は飲み切ったペットボトルをゴミ箱に叩き込む。
「行こう、苦情は後でブッダに言えばいい」
ーーーーー
最上階の壁のないオフィスルームは今はネコに占拠されていた。本来は人間が死んだ目で向き合うデスクは今は色とりどりのネコが所せましと居座っている。
音なく目立たないルートから忍び込んだ俺達の視界の先、重役が座ると思われる贅沢な造りのデスクには、遠目からでも伝わるほど異様な雰囲気の一匹のネコ。
一点の曇りもない白色青目のそのネコの尾は九尾に分割され、ゆらゆらとたゆたっている。ネコ達は気まぐれな行動をとることなくその九尾のネコを注視していた。
『ふん、もう嗅ぎ付けた人間がいたか。予想より早かったな』
念話!俺の思考に直接白猫が思考を割り込ませてくる。こちらは物陰から様子を探った程度だったが、予想以上に相手の知覚能力が高い、か?
『アフロがもろ出しだぞ、バカか貴様らは』
白猫の罵倒に後ろを振り返る。確かに言われてみれば隠しようがないほどM・Nのアフロが物陰からはみ出していた。これではばれない方がおかしい。ステルスミッションは諦めて前に出る俺達の存在に、ネコの海がモーゼめいて割れる。割れた先にはあの白い猫又。
「ふーにゃーう!」
『黙れ!貴様は恵まれた環境に甘やかされているだけだ!』
「うーにゃー!!!」
「あたた!痛いってFuちゃん!」
アフロから上半身を突き出して白猫に激しい剣幕でもって抗議するFuちゃん。つい怒りで爪が出てしまったのかM・Nの方は痛がるのが先に出てしまっている。
「これほどのネコと人を操る力をもってして、やりたいのは人間社会の破壊か。何がそこまでお前を突き動かしている?」
白猫の返答や、如何に。
【ヒトよ、ネコと和解せよ -8-終わり:-9-へと続く】
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