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趣味の健康食品がフィンランドを代表するブランドにまで成長。Foodin創業者の歩み

フィンランドのスーパーにオーガニック食品・健康食品カテゴリで一際存在感を放つブランドがあります。

その名は、Foodin

フィンランドで健康意識が高い方はもちろん、特にそうで無い方でもスーパー等で幾度と目にしたことはあるのではないでしょうか。

ココナッツオイル、ローチョコレート、ナッツ、コーヒー、ドライフルーツ、スーパーフード、プロテインパウダー、各種調味料など、計250種類以上(!)の商品を扱うフィンランドの会社です。同国中心部に約5百万ユーロ(約7億円*)で建てた自社工場で一つひとつの商品を加工し、全国のスーパーや健康食品店を中心に販売しています。
*為替レート:2023年1月時点 

特に人気の有機ローチョコレートバー。添加物や砂糖、乳製品は含まないヴィーガンチョコ
(写真提供:Foodin)
フィンランド中心部ユヴァスキュラ市の郊外に建つFoodinの広大な自社工場
(写真:著者撮影)
フィンランドの一般的なスーパーに自社スタンドを置き
販売するほどの高いプレゼンス(写真:著者撮影)

そして、全商品オーガニックという強い拘り。
同社の行動指針は「消費者・生産者・環境のすべてが喜ぶことをすること」。創業者であるLasse Jalkanen氏の趣味で ”思わず” 起業した会社は、2011年の創業から10年僅かで本カテゴリーにおいて既にフィンランドを代表する企業の一つまで成長しました。

このたび会社創業の背景についてJalkanen氏ご本人に直接インタビューさせていただきましたが、話を伺いながら同氏の人間的な魅力にも強く感じ入りました。独立不羈の精神と、社会的に立場の弱い者に対する思いやり、行動指針を重視する姿勢などが魅力の源泉となっているのだと思います。


極寒の地で確信した健康な食の効能

当時13歳だったJalkanen氏はサッカーなどのスポーツでより強く、そしてより速くなるためにはどうすれば良いか真剣に考え、関連する書物を読み漁っていました。その中で、身体能力を向上させる上で何を食べるかはとても重要であることを理解し、以降、食にとても気を使うようになります。

"This was my starting point."

今日まで続く、Jalkanen氏と健康な食との長い旅路の始まりです。

月日が経ち、Jalkanen氏は国の徴兵制度でフィンランド最北の地域、ラップランドで特殊部隊の訓練を受けます。そこは極寒で風雪が厳しく、フィジカル面でもメンタル面でも非常にタフな環境と言えます。
しかし、Jalkanen氏は自身がそのような環境の中でも心身ともに良好な状態であることに気づきます。少なくともフィジカル面はずっとトレーニングをしていたからと考えられますが、特にメンタル面の好調さを強く感じます。

これは食べ物の影響に違いない。
食への強い拘りから、Jalkanen氏は訓練時も大量のナッツとドライフルーツ、あとは人参やキャベツなどの野菜を中心に食べていました。

健康に良い食べ物による特にメンタル面での効能を実感することができたのは、自分にとって大きな発見だった。

Jalkanen氏の健康な食に対する信頼は確信へと変わります。

教授の提案で ”思わず” 起業

徴兵を終えたJalkanen氏は、自身のキャリアの方向性について明確なビジョンを描けずにいました。父親の仕事はプログラミングで場所や働く時間に制約を受けず働いていたため、よく家族で海外旅行にも連れて行ってもらっていました。自分も同じような働き方がしたいと思いましたが、プログラミングに対しては情熱を持てず、ただなんとなくどこでも働けるようになるには起業かと思い、起業を実践で学べる専門学校に入学します。

しかし、入学後もやりたいことはわからず悶々とした日々を過ごしていました。そんなある日、Jalkanen氏に転機が訪れます。

校内で日々周りに自慢の自家製スムージーの味や色など、お得意のオーガニック食品や健康について熱弁していたところ、たまたま教授がそれを耳にし、Jalkanen氏に趣味の健康食品で起業することを提案します。頭の中のどこかで仕事と趣味は別と考えていた同氏にとって、起業を専門とする教授から勧められたことは新たな道を切り開く大きなきっかけとなりました。

これで ”思わず (ご本人の言葉で"accidently")”趣味で起業することに。

Foodinを創業します。

現地で生産者から得た大きな学び

自身の事業をスタートしたJalkanen氏。最初はオーガニック食品の輸入販売から始め、徐々に家のキッチンや車庫でローチョコレート・バーの創作など、オーガニックの原材料を活かした自社商品の開発・販売を開始しました。

原材料は満足が行くまでとことん拘り、原材料の生産現場も自分の目で見ておきたい。Jalkanen氏は南米やアジアの原産国へ自ら足を運びます。
そこでの思わぬ経験が現在の行動指針、
消費者・生産者・環境のみんなが喜ぶことをする」を定めるきっかけとなります。

「原材料を生産していた方々はとにかく笑顔が絶えない。」
また、生産者の環境への配慮には目を見張るものがあり、本当に地球を大切にする気持ちが伝わってきます。しかし、現状世の中の多くでは、先進国が生産国に不当な労働を強いらせ彼らを社会的弱者として扱い、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済システムを作り環境問題を引き起こしていると言われています。

Jalkanen氏は心に誓います。

事業を通して、生産者たちの笑顔をさらに増やし、環境も喜ぶことを続け、その笑顔や喜びをFoodinの商品を通して消費者に届けていくことを。

Foodinでは原材料を全てオーガニックにすることで生産者の健康と生産地を守り、自社工場には太陽光パネルを装着、日々のオペレーションでは環境への負荷を軽減させるために研鑽しています。

Jalkanen氏の生産者に対する思いやりや、決めたことに対して忠実に取り組む姿勢が易々と伝わります。

Foodin創業者のLasse Jalkanen氏。同社の自社工場兼本社オフィスにて(写真:著者撮影)

今後の展開についてお伺いしたところ、新商品や海外展開もより力を入れていくとのこと。教授の一言で “思わず“ 事業化したJalkanen氏の趣味は、社会に大きなインパクトを与える規模まで成長しました。

フィンランド在住の方、またはフィンランドに訪れる機会のある方は同社の商品を是非スーパー等で手に取り試されることを強くお薦めします。素材のおいしさが染み込んだ絶妙な味に浸ると、自然と笑みがこぼれ、生産者の笑顔がひしひしと伝わってきます。

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