【ベト日記6】社会主義国ベトナムにはカルチャーポリスがいる
ホーチミン、基本的にいい街なのだが、
数少ない不満点のひとつに、「芸術の匂いが乏しいこと」がある。
北のハノイに比べ、南のホーチミンは「商業の街」だからかもしれないが、
しかし、路上で、旗を売ってもいいし
果物を売ってもいいし、
髪を切ってもいいのに、
どうして誰も、路上弾き語りとか、大道芸とか、似顔絵屋さんとか、やらないんだろう??
…………………………と、ベトナム在住歴の長い日本人にグチったら、
「カルチャーポリスが来るから」
という、予想外の回答を得た。
ぎょっとした。カルチャーポリス??
その日はホーチミンで活躍する日本人画家の方のインタビューをしに行ったのだが、その人も
「ギャラリーには検閲が入る」
と言っていた。
(ただし、予約客だけが入れるクローズドの展示にした場合、それをまぬかれるらしい。)
この話を聞いた時、ベトナムに対するテンションが5度くらい下がってしまった。
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ベトナムというのは世界有数のパクリ国らしい。
市場で見たアディダスのパチモン↓
正規店でみたマジモン↓
パクリ文化が浸透してるからだか何だかしらないが、ホーチミン、画廊がたくさんある割に、なんだかどの絵も「パクリ」っぽい。
ベトナム人はちょっとお金持ちになると家に絵を飾る習慣があり、それ自体はすごくいいと思うんだけど、なんか、こう、グッと来る絵が飾られてることが少ない。
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ホーチミンで絵画教室に行ってみたこともあるのだが、なんかダメだった。何がダメかと言うと、「お手本通りに書く」のだ。
お手本。
わたしの絵。
お手本通りに書くことに特化しているから、絵の具も必要な色しか支給してもらえないし、先生の指示に遅れずついていくことに精一杯で、全然楽しくない。
ベトナムはとても自由な国(だと思う)のに、なんでアート方面だけこんなにガッチガチに固いんだろ????
ベトナムにはおしゃれなカフェや、おしゃれな服や、おしゃれな食べ物はたくさんあるから、決して「センス後進国」ではないはずなのに。
なぜ、アートだけがイマイチぱっとしない??
……という謎が、カルチャーポリスの存在を知ったことにより、一気に解けた。
カルチャーポリスが存在するから、パクリという安全圏の選択肢に行く人が多くなるのではないか。
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「カルチャーポリスがいる」、この一点のみにおいて、「私はベトナムに長居できないな」と確信した。
私自身、政治的タブーに抵触する芸術を輩出する予定は無いし、日本語で書いてる限り何やっても問題ない。
でも、私がいまだ一度も目にしたことが無い「カルチャーポリス」の存在が、私が毎日目にするホーチミン路上の風景に影響を与えているのは間違いないし、いずれ奴らが私の脳内に行進してくる前に、この国を去らなければならない。
渋澤怜(@RayShibusawa)
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