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HHDを用いた筋力測定と移動動作能力–等尺性膝伸展筋力と動作自立閾値–

臨床では必ず必要になる筋力測定ですが、現在は様々な測定方法が提唱されています。

その中で、MMTは一般的に広く利用される評価ですが、主観的な要素が大きく、定量化が難しい評価でもありますよね。

定量化を目的に利用されるもので言ったら、今回タイトルに挙げているHHD(ハンドヘルドダイナモメーター)が多くの現場で導入されているのではないでしょうか。

そこで、今回は、HHDの筋力数値の基準値から移動動作自立可否についてまとめていこうと思います!

HHDの測定値

HHDを利用する場合、測定値はNやkgfなどで表示されます。

Nを見た時に、咄嗟にこれがパワーか!と考えたいところですが、これだと個体差を比較できないんです。

例えば、体重が重たい人の方が軽い人より筋力の数値が大きいですよね。

ですが、仮に体重が重たい人が軽い人と同程度の筋力値だった場合、軽い人はその筋力で生活が送れていたとしても、重い人は体重を支えるのに不十分なために生活できないなど。

そのため、定量化するためには個体差を標準化することで比較対象の条件を平等にする必要があるんです。

じゃあ、どうやって標準化するんだ??

測定値を体重で割ってあげるだけです😊

測定値(kg or kgf)÷体重(kg)=○○kgf/kg

この式で算出された値が文献などの筋力値として利用されていることが多いです。

因みに、kgfとNの違いについてですが、

1kgf=9.8N

上記のような関係になります。

文献によってkgfやNを使っていて分からなくなる方もおられると思いますが、どちらも力の値を表しているので、Nの場合はkgfに変換して計算すれば筋力値の標準化が可能です。

移動動作能力と筋力値

健常者の膝伸展筋力体重比をまとめた文献があったので以下に載せておきます。

出典:平澤有里,長谷川輝美,松下和彦,山﨑裕司:健常者の等尺性膝伸展筋力.理学療法ジャーナル2004;38:330-333.

また、院内歩行の自立度割合を膝伸展筋力体重比で検討した報告によると、膝伸展筋力体重比0.40kgf/kg以上では、全症例で院内連続歩行が自立していたと述べられています。

一方で、0.40kgf/kgを下回ると徐々に自立者は減少し、0.25kgf/kgを下回ると歩行自立者を認めなかったとされています。

山﨑裕司,長谷川輝美,横山仁志,青木詩子,笠原美千代,大森圭貢,平木幸治:等尺性膝伸展筋力と移動動作能力の関連-運動器疾患のない高齢患者を対象として.総合リハビリテーション2002;30:747-752.

その他の報告では、立ち上がりや階段昇降に必要な筋力値を報告しているものもあるので以下にまとめておきます。

院内独歩

・全例自立:0.35kgf/kg
・全例非自立:0.20kgf/kg

※T字杖で300m以上歩行可能者、認知症で監視を要する者も含む。

椅子からの立ち上がり(40cm)

・全例自立:0.35kgf/kg
・全例非自立:0.20kgf/kg

階段昇降(蹴り上げ16cm、踏面30cm、段数16段)

・全例自立:0.50kgf/kg
・全例非自立:0.25kgf/kg
※両上肢が手すりや大腿に触れることなく、連続して1足1段で上り切れる場合。

昇段(30cm)

・全例自立:0.50kgf/kg
・全例非自立:0.25kgf/kg

まとめ

筋力測定は臨床において当たり前のように使用する評価ではありますが、定量化した数値で比較すると、より深い考察ができますね😊

また、数値の基準が分かればリスク管理にもつながります。

今回紹介した基準値で、僕が臨床でよく確認するのが、椅子からの立ち上がりができるかどうかです。

椅子からの立ち上がりに必要な筋力値と院内独歩自立に必要な筋力値が同じなので、ある程度のスクリーニングとして起立動作を確認すると評価時間の短縮ができるのでおすすめです。

それでは、今回はこの辺りでおしまいです。

今後も皆様の役に立つ情報をお伝えできればと思います。

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