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経営における会計の原則『稲盛和夫の実学』

 こんにちは、リードプロジェクトの藤原です。
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 今回は京セラや第二電電(現KDDI)の創業者であり、日本航空(JAL)を再建した稲盛和夫氏が著者の『稲盛和夫の実学』について紹介したいと思います。


稲盛和夫の会計学に対する考え方

 稲盛氏は京セラを設立したとき、まだ27歳の技術者でしかなく、会計については何も知らない状態だったといいます。初めて貸借対照表を見て、「お金が二手に分かれて、両側にあるのだなあ」と思うほどでした。
 経験のなかった経営に対し思い悩んだ結果、経営を進めていくうえで、理屈や道徳に反することを行えばうまくいかないと考え、すべてのことを原理原則に照らし判断することにしました。原理原則というのは世間でいう筋の通る、人間として正しいことをいいます。
 結果として稲盛氏は経営の素人であったがゆえに、経営について一から理解し、納得するまで考え込んだことから、経営の本質に近づいていきます。会計についても同様で、稲盛氏が予想したものと実際の決算の数字とが食い違う場合、すぐに経理の担当者から詳細を説明してもらうようにしていました。
 ここではわかりやすい例として、廃止された「歩積み・両建て預金」に対する稲盛氏と経理担当者たちの反応を紹介します。ここで「手形を割り引く」とは、企業が保有する約束手形を支払期日が来るまでに銀行などに買い取ってもらい、現金化することです。手形は期日が来るまでは原則として決済することができません。手形割引では、銀行などに手数料を支払うことで、期日前の手形を現金化することができます。

 昭和34年の京セラ創業当時には銀行で手形を割り引くたびに、一定率の「歩積み」預金を行い、銀行に積み立てていくことが当然のことのように行われていた。銀行で受取手形を割り引いてもそれが不渡りになれば、銀行がリスクを負うわけではなく、当社がその不渡手形を抱えなければならない。しかし、なお銀行は当社が約定通り不渡手形を買い戻してくれるかが心配なので、その担保として「歩積み」をとるというわけである。
 ―省略―(社内で)私はむしろ歩積みそのものがどうしても納得できないと考えて会議でその旨発言した。しかし、経理を担当する者をはじめ周囲からは、歩積みをするのは常識であって、それをおかしいなどというのは非常識きわまりないと笑われて相手にもされなかったことがある。
 その後まもなく、このような歩積みや両建てという慣行は、銀行の実質収入を上げるための方便にすぎないと批判され、廃止された。これを見て私は、「いくら常識だと言っても、道理から見ておかしいと思ったことは、必ず最後にはおかしいと世間でも認められるようになる」と自信を持った。

『稲盛和夫の実学』

 稲盛氏は会計に対しても、道理や道徳にもとづいて一から考え込むことで、会計の本質を理解しようと努めていました。経理担当者たちの研鑽もあり、その知恵の結晶は「京セラ経理規程」にまとめられ、現在も京セラの経理に引き継がれています。

キャッシュベース経営

 会計はキャッシュベースで経営をするためのものでなければならないというのが、私の会計学の第一の基本原則である。

『稲盛和夫の実学』

 企業経営においては、儲かったお金は必ず現金になるわけではありません。利益は現金ではなく、売掛金や在庫、設備などに姿を変えていることが多くあります。現在ではキャッシュフロー計算書の存在は上場企業にとって当たり前となりましたが、昔はそうではなく、現金の流れを掴むことは簡単ではありませんでした。そこで稲盛氏率いる京セラは利益とお金の増減のつながりを明確にするため、1990年よりキャッシュフローの会計報告を行うことにしたほどです。キャッシュフロー計算書が上場企業に導入されたのは1999年4月1日以後開始する事業年度からです。
 どのような利益が数字の上で出ていても、結局安心して使えるのは手元にある現金のみです。稲盛氏がよく使う言葉で、「土俵の真ん中で相撲をとる」というものがありますが、企業財務においては、お金の心配をしなくても安心して仕事をできるようにすることこそ、土俵の真ん中で相撲をとることにつながります。土俵の真ん中ならどんな技でも思い切ってかけることができ、そこで緊張感を持って勝負をかけるべきだ、ということです。稲盛氏はこの原則をもとに京セラを早期に無借金経営へと導きました。

最後に

 『稲盛和夫の実学』では他にも「筋肉質経営の原則」など、稲盛和夫氏が考える会計の原則を理解できる内容となっています。気になった方は読んでみてはいかかでしょうか。

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