恐妻家日記~妻の風邪4~

妻と長女を見送りリビングに振り返ると、0歳の次女が1人でおもちゃのラッパを吹きならしていた。まだ上機嫌で遊んでいるが、そろそろお昼寝の時間だ。ぐずりだすのはもう近い。
先に寝かしてしまおう。私はそう思い立ち、さっさと次女をつれて寝室へと入り、布団に転がした。
コロン。
私はこの「0歳児を昼夜のべつなく母親の乳なくして寝かしつけることができる」行為をおおいに自慢して憚りないのだが、世のイクメンパパはどうなのか。無論彼女の聞き分けがいい所為であることは最たるところであろうが、これが誰にでもできることとは思えない。
たやすくないことは想像していただけたらと思う。泣いたり暴れたり顔の上に這い上がってきたり、あらゆる抵抗を試みるが、私のトントンのゆらぎリズムにはなんぴとたりとも敵わない。最後は乳を探すかのように口をもちゅもちゅ鳴らしながら次女は眠りに落ちた。
コロン。
と、同時に私も眠りに落ちた。
私はこの「0歳児と昼夜のべつなく母親の乳なくして(否。私にそもそも乳は必要ない!)眠りに落ちてしまう」行為をおおいに自慢して憚りない。世のイクメンパパも必ずや同じであろう。(乳が必要な方はいるかもしれない)
あっというまの出来事だった。
ふと目を覚ますと、すでに時刻は3時をまわっていた。
「おぉマジか」
出勤するはずの時間はすでに過ぎていた。妻は帰ってない。
このとき私は自分の事よりも心から妻の心配をした。嘘偽りのない本心である。治療が長引いているのだろうか。もしかして重症だったのか。一緒に行った長女はどうだろう、不安で泣いてやしないだろうか。まさか車で事故なんか起こしちゃないだろうか。
あらゆる事態を想定して一人悶々とした時間を過ごした。
そして3時50分。私が上司に対する言い訳を考えていたところに妻はようやく帰った。不安で青ざめた私とは対象にケロッとした顔で、タピオカを飲みながら。
そう、タピオカを飲みながら。