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研修講師やOJTトレーナーのような「人に教える仕事」もAIに奪われるのか?

ChatGPTの登場によりAIの可能性が一気に広がりました。

世の中がますます便利になる一方で、「自分の仕事がAIに奪われるかもしれない」という人も以前より多くなるかもしれません。

私のような「人に教える仕事」については今まではAIに取って代わられる可能性が少ないと言われていましたが、ChatGPTを実際に使ってみると決して安心できないことがわかりました。

結論から言いますと、「入社したばかりの新人にビジネスマナーを教える」といった「正解があること」を「学ぶ意欲がある人」に教える場合はAIで事足ります。
それどころか、むしろ人間よりもAIのほうが優れています


なぜこんなことが言えるのか、実際に人にものを教えるときのプロセスごとに人間の”先生”とAIの”先生”を比較してみるとわかります。

1.教える側が説明し、必要に応じてやってみせる

新しいことを教えるとき、まずは教える側が学ぶ側に対して学ぶべき内容を正しくかつわかりやすく伝えることが必要があります。

人間の”先生”

わかりやすく伝えられる人もいますが、多くは自分の教え方に固執しがちでワンパターンになってしまうことがある。
しかも学ぶ側の理解力があまりにも低いと人間の”先生”はついイライラして次のような言葉を言ってしまい、学ぶ側の意欲を潰してしまうこともある。

  • これさっきも言ったよね?

  • 何度説明したらわかるの?

  • こんなこともわからないの?

AIの”先生”

様々なパターンを用意することができるので、「1を言って10理解する人」には簡潔に、「10言っても1しか理解できない人」に対してはより詳細に説明することができる。

「学ぶ人」もAIの説明がよくわからない場合は何度でも聞き直すことができる。しかも相手はAIなので何回聞き直しても怒られる心配はなし。

判定:
AIのほうが学ぶ側の理解力に合わせて説明をすることができ、かつ人間のように相手の物覚えが悪いことにイライラすることもないのでAIの勝ち

2.「学ぶ側」に実際にやらせてみる

教えたことを相手に実際にやらせる場合、「教える側」は相手の動きをよく観察し、何ができて、何ができていないか正しく把握しておく必要があります。

人間の”先生”

細かいところまでよく見ている人もいるが、先生も人間なので疲れているときや集中力が途切れてしまうと肝心なところを見落とす可能性がある。
また、常に同じ基準で判断できるとは限らない。

AIの”先生”

動作解析の技術を使えば人間には判断できない細かい動作まで見極めることが可能。(体操競技ではAIによる採点が実現)
しかも判断にブレがなく、常に一定の基準でチェックすることができる。

判定:
人間だと見落とす可能性があるところもAIなら細かいところまで正確にチェックすることができるのでAIの勝ち

3.フィードバックを行う

学ぶ側に実際にやらせたあと、うまくできたところは「具体的に何が良かったのか」を伝え、うまくできなかったところは「具体的にどこが違っていたのか」を伝える必要があります

人間の”先生”

褒めるのが上手な人もいますが、「よくやった!」「偉い!」という抽象的な褒め方しかできない人もいる。
しかもうまくできなかったときは「何でこんな簡単なこともできないんだ!」、「もっとちゃんとやれ!」と相手を凹ますだけで、何をどう直せばよいか相手に伝わらない。

AIの”先生”

余計な感情をこめずに何が良くて何が良くなかったのか、良くない場合はどこをどう修正すればよいか正確にフィードバックしてくれる。

判定:
人間だと感情的に褒める、叱るだけで相手の成長につながらないこともあるが、AIなら確実に相手の成長につながるフィードバックができるのでAIの勝ち

4.質問に答える

人間の”先生”

どんな質問にも丁寧に回答してくれる人もいるが、学ぶ側があまりにもバカな質問をすると怒り出す人もいる。
学ぶ側にとって先生も喜怒哀楽のある人間なので、相手が不機嫌そうな表情をしているとそもそも気軽に質問できない場合もある。

AIの”先生”

同じ質問だろうがバカな質問だろうが、自分が理解できるまでいくらでも質問ができる。
ChatGPTは質問して答えが返ってきたときに「よくわからない」と言えば更に補足説明してくれるので、「学ぶ人」は安心して質問することができる。

判定:
人間だと質問しづらい場合があって学ぶ側の疑問の解消につながらないこともあるが、AIなら疑問が解消されるまでいくらでも気軽に質問できるのでAIの勝ち

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さて、ここまではあえて「AI寄り」の判定をしてみましたが、こうしてみると「正解があること」を「学ぶ意欲がある人」に教える場合において人間の”先生”がAIの”先生”に勝つのは容易ではないことがわかります。

そんなわけで、AIが更に進化すると「自分のやり方を一方的に押しつけるだけのトレーナー」や「教材を読み上げるだけの研修講師」は真っ先に失業する可能性が高いかもしれません。

もちろん中には「私は人間から教わりたい」という人もいるかもしれませんが、学ぶ側の立場で考えると「新しい知識やスキルを身につけられるかどうか」のほうがはるかに重要ですので、上手に教えてくれるならAIのほうを選んでも不思議ではありません。

では、今現在「人に教える仕事」に従事している人はどうすればよいか?

もし今行っていることが「正解があること」を「学ぶ意欲がある人」に教えるのであれば、そろそろ「別の仕事」に移る準備をしたほうが良いかもしれません。

「別の仕事」とは次の2つではないかと考えています。

1.「AIをつくる人」になる

2.「AIができないことをする人」になる

高度な専門知識とプログラミングのスキルがあれば「AIをつくる人」になることも可能かもしれませんが、そうでない人にはかなりハードルが高い話です。

今からそれを身につけるのが難しいのであれば、次の「AIができないことをする人」になるしかありません。

  • 「正解がないこと」を教える(一緒に考えて気づきを促す)

  • 「学ぶ意欲が全くない人」に教える(相手の学ぶ意欲を引き出す)

これはどちらも今のAI技術では不可能なので、人間が行うしかありません。

ただし、そのためには「人間」という生き物の習性をより深く理解する必要がありますので、こちらも「正解」がない分かなりハードルが高いと言えます。

私自身は今から「AIの専門家」になるのはちょっと無理そうなので、個人的には「AIができないことをする人」を目指そうと考えています。

ということで、これからも引き続き「人間」について探求していきたいと思います。

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