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ELECTRIC ADAM インタヴュー記事

アダムはロンドン在住のラテックスパフォーマー。
今回はパフォーマーとして、芸術家として、そしてフェティシストとして、ラテックスとの関わりなどを中心にインタビューをさせていただきました。
アダム、ありがとうございます!
画像は全て公式となります。

※アンダーラインがあるものは、詳細へ飛ぶことができます。

Image by Jim Lister
 ©ELECTRIC ADAM  


Rei
まず、あなたはラテックスを使ってパフォーマンスをされることで知られています。ラテックスを選んだ理由を教えてくれますか?

ADAM
ただ、”それ”に惹かれました。
フェティッシュな要素が強いのはもちろんだけど、他の布や素材にはない魅力がラテックスにはあります。
タイトなラテックスを身につけると、まるで生きているアニメのキャラクターか彫刻のような気分になります。
自然なのに、同時に不自然な感じもして。それが好きです。

Rei
イギリスのフェティッシュシーンの歴史は70年代くらいから発展してきています。
あなたがフェティッシュな物事に触れた最初のきっかけはなんですか?どう感じましたか?

ADAM
デビー・ハリー(デボラ・ハリー)がゴミ袋のドレスを着ているのを見て早くからフェティッシュに目覚め、それから『マッドマックス』の映画の衣装なんかもそうでした。

Blondie - Atomic

70年代から80年代にかけてのSFはフェティッシュな要素が多く、それがとても印象的で好きでした。
私にとってフェティッシュとSFは常に繋がっていて、私の作品に影響を与えています。

また、歴史的な衣装もとてもフェティッシュだと思いますね!
エリザベス女王時代の服、タイツ、ひだ襟など、どれも大好き。
私は昔から歴史的建造物や城を訪れるのが好きです。
拷問器具を見ると恐ろしくて不安にもなりますが、「好きだなぁ」と思ってもいたので、もっと楽しくて同意の上で使える方法を想像したりしていました。
そしてフェティッシュシーンでは、ストック、拘束具、檻といったものがよく使われていることを知ったんです。


Rei
あなたは”ラバーカルト”やイギリスの老舗フェティッシュ・イベント、”トーチャーガーデン”にもパフォーマーとして数回参加しています。

Left:  Torture Garden
Right: Rubber Cult


ADAM
ラバーカルトは私が初めて参加したフェティッシュイベントで、その後トーチャーガーデンなどにも参加しました。
同じような考えを持つ人たちに囲まれて、とてもフレンドリーな場所だと思いましたね。


Rei
ラテックスは縫製技術がなくても制作はできますが、それが簡単という意味ではありません。(私も一度製作したことがあるのですが、とても大変でした!)
自身で制作しようと思ったきっかけを教えて下さい。


ADAM
私は恥ずかしがり屋でラテックスショップに行くことができず、服を買う余裕がなかったんです。
ラテックスの生地をロールで買えば、わずかな値段でいろいろなものを作ることができます。
最初の作品は少し不器用でしたが、幸運なことに隣に素晴らしいラテックスデザイナー”Lady Lucie Latex”のスタジオがあり、彼女はとても親切で、ラテックスの扱い方や使うべき道具を教えてくれたんです。


Getty Images
©ELECTRIC ADAM


Rei
かつて、HIVの流行中に一部の地域でフェティッシュギアが普及しましたが、今はコロナの影響でラテックスが注目を集めています。ファッション業界で頻繁に取り上げられる変化をどのように受け止めていますか?

ADAM
ラテックスを着用するポップスターはますます増えていて、ファッション撮影でラテックスが使用されているのをよく見かけます。
でも、高価でデリケートで手入れが大変。
夏は暑くて汗ばむし冬は凍えるようになるから普段着として人気が出るとは思えません。
私はラテックスを着るのが大好きだけど、普段着として着ることは夢にも思いません。
ハイキングに行ったり、一日中買い物に行ったりするにはあまりにも着心地が悪く、実用的ではありません!

いくつかのハイストリートショップは、安い大量生産ラテックスを小さなラインで試しましたが、私の知る限りそれらはうまくいきませんでした。
イギリスで目にするほとんどすべてのラテックスが小さな独立したデザイナーによって作られていることが私は好きです。
奴隷労働者によって大量生産されたハイ・ストリートの衣類よりも高価な服を買うことになりますが、結果として中小企業にお金が行くことは良いと思っています。

Rei
あなたのパフォーマンスはラテックスで覆われ、呼吸を制御しているものが多いです。激しい呼吸音が聞こえるため、パフォーマンスを見ている人たちの反応は様々ですね。
フェティシズムとしての呼吸制御をどう考えていますか?


ADAM

変な話、私はフェチとしての呼吸プレイには全く興味がありません。私は呼吸を困難にする喘息を患っており、自分にとって呼吸はストレスやトラウマなんです。
パフォーマンス中にこれらの問題を解決し、すべての空気を吸い出し、真空状態を維持できることは、非常に力強く、呼吸困難の経験をポジティブに利用しているように感じられます。
私にとっては、二重の意味合いがあるのだと思っています。


Image by Dee O’CONNELL
©ELECTRIC ADAM



Rei
あなたのパフォーマンスにメッセージ性はあるのでしょうか?


ADAM
私は本能のままにパフォーマンスを始め、意図したコンセプトはなく作品は生まれ出てきました。
時間が経つにつれ作品を振り返ってみると、自分が変化することによって自分にとっての意味も変わってきます。
今日の私にとっての意味は、明日の私にとっての意味とは異なるでしょう。

私の好きなアーティストの一人、ジョージアナ・ホートンはスピリチュアリスト・アーティストで、彼女は自分のことを単なるチャンネル、あるいはミディアム(霊媒)と言っています。
彼女はトランス状態に入り、霊が彼女を導き、コントロールし、芸術を作り上げるんです。
私はスピリチュアリストの信念を共有しているわけではないのですが、彼女の表現する、まるでどこかからやってくるかのようにアートワークが溢れ出てくる様子に強く共感します。

私のアートが何であるかを正確に特定しようとすると、真実が遠のいていくように感じます。
リラックスして流れに身を任せると、全てを理解したように感じますが、その理解は言語化されないので書き留めたり伝えたりすることができません。
アートワークは私が言いたいことを伝えるための”言語”なのです。
人によっては分かりやすく簡単な説明を求める人もいますが、そのような説明はありません。
何事にも、手っ取り早く、明確で、シンプルな説明というのはないんです。

Rei
シルク・ドゥ・ソレイユに参加する経緯や感想を教えて下さい。

ADAM
ニュージーランドで開催されたWorld of Wearable Artsのアワードショーに参加し、私の作品の1つがCirque Du Soleilの招聘職人賞を獲得しました。

2017 Cirque du Soleil Invited Artisan Award Winner:
Adam McAlavey(Electric Adam)


WEARABLE ART with Adam McAlavey | In Residence with Costume Designer | Nextasy | Cirque du Soleil


モントリオールの本社に飛行機で行き、5週間、同社のすべての部署で作業と実験を行いました。
ダンサーの衣装を作ったり、振付のワークショップに参加したり。
また、自分のインスタレーション作品を1つ持って行き、そこでパフォーマンスも行いました。
素晴らしい経験で、多くのことを学びましたし、皆さんとても親切で時間や専門知識を惜しみなく提供してくれました。

Rei
あなたに影響を与えた音楽や映画、デザイナーなどはいますか?いる場合は誰ですか?


ADAM
H.R.ギーガー/エイリアン鉄男六月の蛇(共に塚本晋也)、マッドマックスヘルレイザーAKIRAフラッシュゴードンジム・ウッドリングシルバー・グローブ/銀の惑星ジム・ヘンソンレイ・ハリーハウゼンロティ・ライニガーマイヤ・デレン、なかでも”Meshes of the Afternoon”…….挙げればきりがありません!

鉄男
Tetsuo: The Iron Man
監督 塚本晋也
Directed by Shinya Tsukamoto




Rei
あなたの活動はどのように変化していくでしょう?今後のプランを教えて下さい。


ADAM
自分のパフォーマンスとインスタレーション、動画、セットを組み合わせた没入型の展示に集中する予定です。


Rei
最後に日本について。印象など聞かせて下さい。


ADAM
日本にはとても行ってみたいです。
日本については、今と昔、両方の時代の映画や漫画から印象を受けています。

アキラ、はだしのゲン、スタジオジブリ作品、新世紀エヴァンゲリオンなど、数え切れないほどのアニメや漫画から大きな影響を受けています。
好きな映画のいくつかは、東京物語鬼婆鉄男山椒大夫、そして言うまでもなく黒澤明の作品です。
これも数え上げたらきりがないほどです。
自分の国とはまるで違う歴史にも惹かれます。
私の作品は東京でも受け入れられると思うので、ぜひ東京でショーをしたいですね!


Image by Damien Frost
©ELECTRIC ADAM


ELECTRIC ADAM(エレクトリック・アダム)
イギリスのランカスター生まれ。
現在はロンドンを拠点にライブパフォーマンスやムービングイメージのためのウェアラブルアートとインスタレーションを制作していています。

V&A(ヴィクトリア・アンド・アルバート)博物館やナショナル・シアター・スタジオで展示され、ロンドンの多くの人々に知られるようになったアダムは、ニュージーランドで開催された国際デザインコンペティション『World of Wearable Arts』で、Cirque du Soleil Invited Artisan Awardを含む4つの賞を受賞。
ニュージーランドのPerformance Arcade、Cirque Du Soleilの5週間のレジデンスの一環としてモントリオールで開催されたCritical Costume Conference and Exhibitionなど、国際的な展示会にも出展しています。


後記
日本へ作品を持って行きたい!と言ってくれたアダム。
癖だけに留まらず、表現手段として独自の世界観を生み出しているそのスタイルは、私達の可能性を広げてくれます。
日本で彼のパフォーマンスを是非とも観てみたいですね。


Official Web


©ELECTRIC ADAM

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