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これまで来た道、これから行く先

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旅がどこまでも続くように。1000字エッセイ。
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2018年11月の記事一覧

空の窓口、海の架橋

空の窓口、海の架橋

机の中から不意に現れた一片の手紙は、私に4年の時を遡らせた。

当時、私は成田空港でボランティアに従事していた。日本の玄関口である広い国際空港では、道に迷う利用者は少なくない。その中でも特に不案内な外国人利用客に対して、スムーズな旅のサポートをするのが主な仕事である。2週間の活動で、あらゆる国籍のあらゆる人々と触れ合った。

そのボランティア期間の終盤の頃であった。私が待機していた柱のそばで、じっ

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秋、大学4年

秋、大学4年

本気で自殺しようと思っていた時期がある。

大学4年の夏が過ぎても、ほんの一社からさえ採用内定通知を受けられず、途方に暮れた末の結論めいたものである。当時の私にとっては、会社からの「不採用通知」は社会からの「不要通知」であった。この国で私という存在を求めている会社が一つもないということは、私の価値を否定されているに等しかった。残り半年足らずで学生の身分からも離れる。いよいよ社会から隔絶され、ただ家

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時の流れのホバリング

時の流れのホバリング

自分の文章に関することや、文章を綴る際のスタンスなどというものを公表することはどこかナンセンスだと思っている。しかし、少し勇み足になりつつあった私のエッセイの更新頻度を下げ、改めて「書く」ということについて自己反省的に見つめている現在の過程の中で、その通過点をここに記録しておこうと思い立った。

以前より読んで下さっている方は薄々お気づきかもしれないが、私の文章には空や風に関する描写や記述がしばし

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