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これまで来た道、これから行く先

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旅がどこまでも続くように。1000字エッセイ。
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2020年4月の記事一覧

反発と依存と

反発と依存と

「優等生は先生に好かれる」。私はこの命題に例外があることを身をもって知っている。

大好きな同級生たちに失礼のないように言うとすれば、私は確かに優等生であった。運動は少なくとも人並以上にはできたし、勉強で他人に負けることもなかった。ただし、私は先生に全く好かれなかった。

小学三年生のとき、私は授業中に手を挙げても当ててもらえなかった。ひどいときには、私が挙手しているのに「この問題が分かる人、誰も

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付箋の記憶

付箋の記憶

私の手元に、一片の付箋がある。それは決して殴り書きのメモなどではなく、かつての女子高校生からの手紙である。彼女は、私が大学時代にアルバイトをしていた塾の生徒だった。

用件は短く記されている。

「他校に好きな人がいるんですけど、遠すぎてほとんど会えません。
つらいっ 
今度相談に乗ってください」

講師として生徒の相談には乗るべきだが、塾で話す内容ではない。私は予定を合わせ、ファミリーレストラン

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ごめんなさい

ごめんなさい

この数週間、会社からの指示に従って週の半分以上は在宅での仕事を行っている。営業職とはいえ、取引先も全国的に他社との面会を拒絶しており、海外出張も事実上できない現状においては、家でも仕事ができてしまうという状況ではある。

接客業をはじめとして、外に出なければできない仕事もある。環境が整わずに、やむを得ず出社しなければならない人もいる。普段通りの仕事ができていないことの異常と、普段通りの仕事を「せざ

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クスリの儀礼・礼儀のリスク

クスリの儀礼・礼儀のリスク

「ばかにつける薬はない」という言葉がある。いつ頃生まれたのだろう。なんとなく落語の台詞にもなりそうなイメージで、ユーモアを感じる。

2月の初め、調剤薬局に行く機会があった。その日は高熱に苦しんでいて意識も朦朧としていたので、文章にまとめる気力もなかったが、一つ書いてみよう。

名前を呼ばれた男性が窓口に行くと、薬剤師が薬の説明を始めた。

「いつもの血圧と血糖値のお薬です」

すると、男性はすぐ

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