虫かご

鹿児島県出身の24歳。虫かごを覗くように、連ねた文字たちを眺めています。読んでくれるあ…

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鹿児島県出身の24歳。虫かごを覗くように、連ねた文字たちを眺めています。読んでくれるあなたの心を動かす余裕は、まだありません。

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vol.9 シン・優しさ

2019年7月28日。 僕は日本を離れ、イギリスはマンチェスター空港に降り立った。現地は雨。移動中ずっとリュックサックの奥に追いやられていた厚手の上着が、ようやく外の空気に触れた。こんな天気が一年の大半を占めることをまだ知らない僕は、湿った道をバス乗り場へと向かった。 乗り場に着き、運転手さんに大学までの運賃を聞くと、 「Five Fifty」 と言われた。……ん?ファイブフィフティ?5と50?550ポンド?僕は戸惑いつつも、日本で両替してきたポンド紙幣を取り出し、5

    • vol.16 とめどなくつれづれと

      いっぱいいっぱいである。 数ある日本語の中から、幼子のボキャブラリーにもあるような「いっぱい」を連続することでしか今の精神状態を表せないほどに、追い込まれている。 社会人一年目が終わる。 辛かった。本当に辛かった。 楽しい時間を赤やオレンジで形容できるならば、この1年という細く長いキャンバスは、ほとんどがグレーで埋め尽くされていた。 社会に出て気づいたことは、僕には出来ないことが大量にあるということだった。 学ぶことはたくさんあるし、それによって得られる成長を楽しみにし

      • vol.15 スーパーラリーマン

        つい最近、「悩む」と「考える」の違いを知った。前者は、はじめから答えが出ないことで頭を使っている状態らしい。後者はその逆。明確なゴールが存在するので、前者よりも時間をかける価値がある。言われてみれば納得するが、両者の違いを意識せずに頭を回転させていたことを悔いた。 僕は、よく悩む。答えが出ないことに対して、答えを求めようとしてしまう。その様子は、さながら卓球のラリーだ。 試合開始。ラブオール。サーブ、僕。高くボールを放り、渾身のサーブ。 「この間、僕が全体の前で発表した

        • vol.14 As it had been

          研修の合間。よく友達とストレッチをするようになった。ちゃんとリフレッシュ出来る上に、普通の会話がどこか色づくような気もするので、好きな時間だ。その日も一緒にしていると、ふと「こんなコントあったら面白いかもなぁ」と思った。 マラソンか何かのレース前という設定で、一人が軽くストレッチをしているところに、もう一人がやってきて同じく体をほぐし出す。ただその内容が少々高度だ。始めからいた人がどことなくライバル視して、負けじと難しいストレッチを繰り出すようになる。「僕、こんなところも伸

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        vol.9 シン・優しさ

          vol.13 サンドバッグ

          荒川の河川敷をジョギングしていると、頭上を一羽の鳥が飛んでいた。飛んでいた、というより、その場で浮いていた。川面から吹く風に真正面から逆らい、一生懸命に羽を動かし、わがままに対岸を目指そうとしていた。寸分も前に進めず、かつ後退もしていないのがもどかしい。機械的な羽ばたきが、昔見た『トムとジェリー』を思い出させ、少し滑稽だった。 ここ数日の僕は、まさにこんな感じだ。迫り来る入社式。終わりを迎えるモラトリアム。新たな世界への高揚と、どうあがいても拭いきれない不安がごちゃまぜにな

          vol.13 サンドバッグ

          vol.12 地と図

          発見。前進。新たな境地。日頃から何かに頭を悩ませて生活していると、稀に救われる瞬間に出会う。それまで催眠にかかっていたかのように、全く新しいご褒美が降りてくる瞬間がある。そんなときに自然と口角が上がるのは、嬉しい、楽しい、わくわくといった感情とはひと味違う、震えるような喜びに包まれるからなのだろう。 先日、久しぶりにそんな体験をした。4月から入社する会社の同期と出かけたときのこと。まともに話すのは初めてのような間柄だったが、どこか波長が合うので、抱えていた悩みを打ち明けてみ

          vol.12 地と図

          vol.11 鎌倉150km自転車旅行記

           自然と目線が青空に吸い込まれていく朝だった。前夜まで降った雨が細かいほこりを落とし、初冬の晴天を一層際立たせる12月初旬。僕は一路、鎌倉へと自転車をこぎ出した。  大学卒業後、入社まで設けた1年のギャップイヤー。やりたいことがあれこれと思い浮かんでくるなかで、どうしても挑戦しておきたいことがあった。それが「鎌倉への自転車旅」。鎌倉は大学1年生の頃、一度電車で訪れたことがある。当時は北鎌倉駅で降り、そこから徒歩で寺社をめぐり鶴岡八幡宮へ、最終的には江ノ島に赴いた。目にとまっ

          vol.11 鎌倉150km自転車旅行記

          vol.10 お面めくり

          列車に揺られていた。 薄暗い車内を、時折差し込む月明かりがサーチライトのように通り過ぎていく。 僕の向かいにも電車に揺られる人がずらり。皆決まって、お面をつけている。 ここにいる乗客に限らず、皆が等しく持ち合わせるお面。色、形、模様、一つとして同じものはない。不気味なほどに規則正しく並んだそれらをぼーっと眺めながら、僕は想像する。列車の小刻みな振動に身を任せながら「その下」に意識をめぐらせる。お面に描かれた表情がその人物を表しているとは限らない。皆少なからず、素性を一枚

          vol.10 お面めくり

          vol.8 堕ちてみる

          習慣づけるのは難しい。 もっと自分に満足したくて、新しいルールを作ろうとしても、その道のりはなかなかに険しい。 例えば、ゲーム。 僕は、この手の娯楽は「ほどほど」が一番だと思っている。のめり込みすぎず、ちょっとした時間を彩るためにサクッと活用できるように、なんとかルールを作れないものかともがいている。 幼い頃は、家の中に「ゲームは一日〇〇分」と明確なルールがあった。だけど、欲望のままに動くならいくらでもやっていたかったし、実際、コソコソやっていた。なぜ時間設定をするのか理

          vol.8 堕ちてみる

          vol.7 幼なじみ最後の夏~「結果」か「過程」か~

          夏。晴れやかなイメージがある一方で、学生にとっては「終わり」と「始まり」が交錯する、カオスな季節でもある。 高校3年生の僕の幼なじみも例外ではない。先月、彼の野球部としての夏が終わった。 幼い頃から転勤族であった僕にとって、かねてから互いの両親が親しくしている彼は、数少ない生まれた頃からの仲だ。そんな彼が最後の夏に挑むというだけで、少し感慨深いものがあった。 迎えた2回戦。シード校相手に先発した彼は力投。降板後も、伝達係に、負傷した選手の介抱と、よくカメラに抜かれていた

          vol.7 幼なじみ最後の夏~「結果」か「過程」か~

          vol.6【総括】もう1年こだわって見えたものは、意外とシンプルだった

          0.ターニングポイント廉です。 久しぶりに書いてます。前回の更新が去年の10月。だいぶ経ったなぁ。 僕は、なにか決心したり発見があったりしたいわば「ターニングポイント」にものを書きがち。 今回も然り。割と大きめな節目を迎えたので、書きます。 就活が終わりました。嘘みたいに上手くいかず、もう一度就活すると決めたあの時から約1年。僕の個性や目標を受け入れてくれ、かつ僕自身も好きになれる会社で働く道を見つけることが出来ました。 これは、本当に嬉しいこと。もちろん内定という目に見

          vol.6【総括】もう1年こだわって見えたものは、意外とシンプルだった

          vol.5 小さなしくじり

          稀に、どうしようもない、人に話すのも恥ずかしいミスをする。自分だけが迷惑を被るならまだしも、人にまで心配をかけてしまうような大きな失敗をすることがある。自分でも気をつけているはずなのに何故だろう。ミスを犯す度に「またやっちゃったよ」と、事後的に後悔することが続いていた。 それが2年ほど前のある日、唐突に解決された。導いてくれたのは、オードリーの若林さん。 オードリーの冠ラジオ番組「オードリーのオールナイトニッポン」は、世の中で一番好きな番組と言っても過言ではない。過去の放

          vol.5 小さなしくじり

          【近況報告】今後の動き方

          こんにちは、Renです。 前回、就活を振り返った記事をアップしてから約1ヶ月半が経ちました。思った以上に反響を頂けたのが意外でした。知り合いの方だけでなく、同じような境遇にある大学生や、会社の人事の方からも反応を頂けて、心強く感じました。 そして、大学最後の夏休みを迎えたと同時に、今後の動き方も決まりました。 結論から言うと、もう一度就活をしようと思います。 今回の記事は、悩んだこの約一ヶ月半を振り返るものです。 はやく動き出したいので、今回は簡潔に。 1.初めは

          【近況報告】今後の動き方

          【近況報告】来年度からの就職はしないことにしました。

          お久しぶりです。Renです。 本当にお久しぶりになってしまいました。 書くときはそれなりにエネルギーと時間を使ってしまうので、これからもう少し上手く時間を創り出したいと思います。 今回は近況報告です。タイトルにもある通り、来年度からの就職はしないことにしました。 理由は二つです。 一つは、6月初めまでの就職活動中にエントリーした10社で全敗したこと。もう一つは、就職活動中に自分が身を捧げたい分野を見つけ、就職以外の道を探りたくなったことです。 就活で良い結果は出ませんで

          【近況報告】来年度からの就職はしないことにしました。

          スポーツ=○○×△△。それぞれあてはまる言葉を求めよ。

          1.夢の劇場にてどこまでも続きそうな階段をのぼり、改めてスタジアムの巨大さを知る。やっとの思いでのぼりきった先に飛び込んできた景色に、思わず息を呑んだ。表面をなぞるように吹き上がってきた風の中、私はいまにも落ちそうなほど急な観客席の最上段に立っていた。 2019年12月5日。ここは、イギリス、オールド・トラッフォード。「The Theatre of Dreams (夢の劇場)」と称される世界有数のサッカースタジアムだ。 観戦したのは、ホームのマンチェスター・ユナイテッドが

          スポーツ=○○×△△。それぞれあてはまる言葉を求めよ。