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がん患者のシネマカルテ②最高の読後感?「シェフ」

▶︎「最期の祈り」★★(Netflix)

(初)
 人生の最期を迎えた患者と家族、終末期の医療を担う医師らの葛藤を描いたドキュメンタリー。登場する患者は、30代の若さだったり、身寄りのない路上生活者(ホームレス)だったり、意識の回復が見込めないまま人工呼吸器を付けられている母親だったり、とそれぞれの事情を抱える。20分余りの短編だが、「その時」の一端を鮮明に浮かび上がらせている。

▶︎「エンド・ゲーム 最期のあり方」★★(Netflix)

(初)
 上記の「最期の祈り」と同様、確実な死が目前に迫った時に人間はどうなるのか、ということを克明に描いた40分余りのドキュメンタリー。「最期の~」とは違う監督名がクレジットされている。
 舞台はホスピス。エンド・ゲームでも、まだ幼い子どもを持つ母親や、極度にやせ細った六十代の男性ら複数の患者が登場するが、奇跡を最後まで信じる家族と、それに寄り添いながらも最期の迎え方を考えるように促す医師らの描写により厚みがある。
 大学生時代に致命的な感電事故に遭い、手足を失った緩和ケア医が、多くの末期患者を看取ってきた経験も踏まえて、「人は死を逃れたいと思うものだが、死も命の一部。怖いからといって見ることも触れることもなく、しまうのはよそう」と語る言葉が胸に響いた。
 全体として悲観的な事例がやや多かった印象だが、ホスピスには落胆や絶望だけでなく、希望を抱いて旅立つ患者らもいるのではないだろうか。シリーズで見てみたい。
 がんを巡るさまざまな情報を知ることが大切だと考えるのでお勧めするが、「最期の~」とともに、がん患者の心身の状態によっては鑑賞を控えた方が良いかも。

▶︎「君はONLY ONE」★(Netflix)

(初)
 がんで余命宣告された若き女性が、自身が死んでも婚約者がきちんと生きていけるように新たなパートナー探しに乗り出す。爽やかさと切なさが同居する映画。
 死後を案じる以上に、パートナーとともに「現在」を生ききることの大切さに気付かせてくれる。女性の家族はもちろん、友人や同じ病の患者(クリストファー・ウォーケンが好演)からの支えのありがたみもじんわり伝わってきた。
 しかし、この安っぽい邦題は何とかならなかったのだろうか。原題は「Irreplaceable You」で、英語で「かけがえのないあなた」といった意味だけど、、、。

▶「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」★★★

(初)
 ジョン・ファヴロー演じる落ち目のシェフが、元妻と暮らす一人息子や仲間の料理人とともに、キューバ料理を扱う「フードトラック」に乗って旅するロードムービー。家族愛や友情を織り交ぜながら再生に向かう姿を心地よく描いた。全体を通じてラテン系の軽やかなノリが特長。格別の読後感(?)が味わえた。
 人間味あふれるラテン系の人物を演じさせたら右に出る者はいないジョン・レグイザモと、随所に流れる軽快なキューバ音楽がスパイスを効かせている。ダスティン・ホフマンやスカーレット・ヨハンソンが脇を固める。最後、シェフとして落ちぶれる原因をつくったグルメ評論家との対決の結果にもにんまり。

▶「ジャッカス 4.5」★★

(初)
 「ジャッカス4」の未公開シーンやメイキングを収録。男性器の露出や刺し身の「男体」盛り、体重180㌔の巨漢による出演者への体当たりなど、相変わらずのお下劣極まりないパフォーマンスやスタントに目を覆いたくなります、、、なりますが、単調で、落ち込みがちな入院に活を入れてくれます。たぶん。保証はできないところがミソ。
 「ジャッカス」を初めて世に送り出してから20年余りにわたり、アホなことに命をかけ続けてきた出演者やスタッフに拍手を送りたい。
 

▶︎「ターミネーター ニュー・フェイト」★

 覚えていないぐらい前に一回見ただけだったので、再び鑑賞。ターミネーターシリーズとしては6作目になるんでしょうか。人類と、自我に目覚めたマシーンが苛烈な戦争を繰り広げる未来から現代に送り込まれた女性兵士グレースが、ご存知サラ・コナーとともに、人類の希望となるダニエラを刺客のマシーンから守る。
 ターミネーター3で冷酷無比の女性マシーンが主役級で登場したことはあったが、過去の作品と比べても女性のパワーが前面に押し出されていて、新鮮だった。アクションやカーチェイスのシーンも迫力があり、血圧が上がった。がん患者的に良いのかは悩ましい。
 インタネット上では、本作が歴史に残る名作「ターミネーター2」の続編でありながらも、設定が大きく変えられたことに憤るレビューも目立つが、個人的には気にならなかった。
 「ターミネーター4」の評価も同じように芳しくない気がするのは、なぜだろう。2と同じようにシリーズ作品の枠に縛られない名作だと信じているんだけど、、、。
 ターミネーターシリーズで残念だったのは、「ターミネーター:新起動 ジェ二シス」だけですかね。内容をいまいち覚えていないけど、シリーズをぶち壊しにしてくれて、もはや「ターミネーターズ」レベルの違う作品ではなかったか、と。

▶︎「スターシップ・トゥルーパーズ」★

 巨大昆虫が支配する惑星で、人類が繰り広げる戦いを描いたシリーズ一作目。エイリアン・パニックの作品として楽しめるんだけど、実は全体主義や戦争を礼賛する社会への皮肉がちりばめられていて、続編も含めて完成度は高い。
 戦闘シーンがそれなりにえげつないので、入院患者には向かないかもしれないけど、予備知識なしで見てみることをオススメします。
 もはや知る人は少なくなっているだろうテレビシリーズ「天才少年 ドギー・ハウザー」の主人公として一世を風靡したニール・パトリック・ハリスが、地球連邦軍情報部の将校として出演。シリーズ全体を通じた役回りも見どころ。

▶︎「ゴースト・ドッグ」

(初)
 ジム・ジャームッシュ監督。フォレスト・ウィテカー主演。「武士道と云ふは死ぬ事と見付けたり」の一節で知られる「葉隠」を愛読する殺し屋が、主君と信じるマフィアのメンバーに忠義を尽くすお話。ジャームッシュ作品が好きな人なら楽しめると思われ。

▶「ブライト」×論外、、、(Netflix)

(初)
 ウィル・スミス主演だが、内容がお粗末で、全然ブライトじゃない。ウィルの黒歴史の一ページに(勝手に)書き加えたい。出演者を誰一人知らないような陣容で固めて、B級感を押し出した方が、まだ観る人を楽しませられたのではないか。
 人間やオークやエルフなどの種族が互いにけん制しあいながら暮らす社会で、人間とオークの警官がタッグを組み、「ダーク・ロード」と呼ばれるエルフの伝説の親玉を復活させようとする動きに立ち向かう。
 「ブライト」と呼ばれる特別な力を持った一部の人たちが物語の鍵を握るかと思いきや、そこまで丁寧に描いているわけでもなく、どこで盛り上がればいいのか分からないまま終わった感。このグレーな気分をどうしてくれるのさ、ウィル。


※いずれも個人の主観に基づく感想です。
※(Netflix)とあるのは、ネットフリックスのオリジナル作品であることを意味します。
※文中に(初)とあるのは、初めて見たことを意味します。
※状況に応じて追記・修正する可能性があります。

・2022年12月14日更新
・2022年12月13日更新

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