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睡眠不足で性格が悪くなるなら...


日本のサラリーマン、大体性悪なのでは?

 「頭痛が痛い…」日本語がおかしいと内心思いながらも、久々に睡眠不足から来る頭痛を味わった気がする。

 早期退職により何時に寝て、何時に起きても問題ないにも関わらず、元駅員の性で、眠りについてから4時間程度で中途覚醒してしまい(物音にでも反応してしまったのだろう…)、そのまま二度寝したら今度は眠りの質が悪過ぎて、起きた時には頭が痛かった。

 現役時代に5連勤の5日目に、決まって睡眠負債の蓄積による頭痛に悩まされていたうえ、動力車操縦者という職業柄、大半の薬は服用しての乗務が許されていないため、痛みにひたすら耐えるだけのストレスフルな環境で、作業にあたらなければならないのが、鉄道員人生で嫌だったことのひとつである。

 乗務職場となってから、職住近接のパワープレイにより、睡眠時間を8時間は死守するよう努めていたものの、振り返れば、毎日出勤時間が変わる職業柄、体内時計がグチャグチャなのだから、質の良い8時間睡眠だった筈がなく、その負債が5日目に頭痛として現れていたのだろう。

 そんな慢性的睡眠不足だった当時の私は、総じて性格が悪かった。しかし睡眠不足が、情緒不安定で攻撃性を高め、共感能力が低下するメタ分析が出ていることからも、日本のサラリーマンの大半がそうなのではないか?とも考える。

 日本人の平均睡眠時間は7時間22分と、OECD加盟国でワーストだが、この数字も平均のマジックにより、小中学生と高齢者によって釣り上げられた数字でしかなく、夜更かししがちな高校生は兎も角、現役世代は総じて7時間寝られれば良い方だと思ってしまうデータとなっている。

 演繹法で整理すると、
日本のサラリーマンは、睡眠時間が短い(A→B)
睡眠時間が短いと、性格が悪くなる(B→C)
よって、日本のサラリーマンは、性格が悪い(A→C)

 上記の結論に至るため、私の性格が悪いのはきっと人格の問題ではなく、睡眠不足を強いる社会が問題で、日本のサラリーマンは大体性悪なのだから、仕方のないことなのだ(他責)と、自己欺瞞に浸っている。

とはいえ、先入観は持たず他者と接する。

 駅員時代、私はいわゆる現場の名物クレーマーの一部を味方につける特殊能力があり、代弁者として重宝された。浮浪者、自称元反社、シャブ中で過去に何回捕まって今はナマポ系の、いわゆる一般社会から外れてしまった方々を、改札で敵にまわした記憶がない。

 それは、私が童顔で舐められて嫌な思いをした経験から、先入観を持たずに他人と接するよう、心掛ける癖があるからだろう。

 一般論では、相手がいかにもな身なりだと、下手に勘繰っては、腫れ物を触るような扱いをしてしまうらしいが、私が童顔で舐められる度に嫌な思いをするのと同様に、相手も人間である以上、周囲と明らかに対応が異なると、そのことを敏感に察してしまうのは自明の理だろう。

 行動心理学で言われている「嫌悪の報復性」が、まさに上記の現象だろう。だからこそ、誰に対しても最初は同じ対応を心掛けるべきだと考える。

 職場などで異動してくる人に対しても、どんな人なのか興味を持つのは良いことだが、人伝でネガティブな情報ばかり仕入れて、噂を広めるのは悪趣味だろう。

 バイアスがかかると「ゴーレム効果」で、相手の良い部分を潰してしまう恐れもある訳で、興味があるなら本人と直接コミュニケーションを取って、自分の直感に委ねるべきだろう。

 人は往々にして、その人の過去に何か後ろめたいことがあると、それを掘り返しては、過去の出来事を基準に相手を判断しがちである。しかし、今現時点で自分に対して実害がないのであれば、過去の情報はどうでも良く、今の状態を直接、自分の目で見て判断するのが筋ではないだろうか。

自己犠牲で成り立つ、碌でなし社会。

 そんな睡眠不足で性悪な社会人が蔓延る社会が、さも当然だと思い込み、何の違和感も持たなくなっているようであれば、一度距離を置いてみた方が良い。

 私は睡眠不足という名の自己犠牲ありきで成り立つ碌でなし社会から、手術を必要とする大病を患う形で、20代にしては長期と思われる入院により、突然距離を置いたことで、その異常さに気づくことができ、早期退職する覚悟ができた。

 端的に記せば、職業柄、回避不能な不摂生を重ねたことに起因した病気であり、退院して倒れる前の環境にそっくりそのまま戻ることが、自らの命をすり減らすことと同義だったからだ。

 命が天秤に掛かったことで、初めて正規雇用という名の世間体維持装置を手放す発想に至ったのは、我ながら愚かだったと思うが、自己犠牲を払うような生き方をしてしまう嫌いがある人ほど、往々にして自らが追い詰められる時まで、その愚かさに気付けないものだ。

 無論、復帰後の処遇を交渉する形で、世間体維持装置を手放さない方向も画策してみたものの、納得する回答が得られず、交渉決裂して当初の計画を実行したに過ぎない。

 こんな極端な選択に至るよりも前に、学生時代よりも嫌な奴になっているとか、みみっちいことにイライラすると自覚した段階で、睡眠時間が足りていない。もしくは良質な睡眠が取れていないことを疑い、根本的に解決できる術を模索するのが、賢しい選択なのだろう。


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