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【創作童話】アンドロメダの涙#1

#1〜容疑者は主人公〜

地上が燃えた。サイレンを伴って。
わたしにはその様子がまるで
古い活動写真のように思われた。

わたしの叫びはどこにも届かない。
心臓がえぐり取られていくようだった。

「0時22分、犯人確保!
容疑者はこの話の主人公
セイラ・グラナディエ!!」

燃やされても、夜は終わらなかった。
わたしの目は潤い、深い犠牲の夜は
宇宙の彼方へと続いた。

終わらせてはいけない。
だってこれは、無実の罪なのだから。
空に流星が瞬いた。
わたしの涙と同じ筋を空に描いてー。

【逮捕前のこと】

窓から西日が差し込んでいる。
夏の盛りの夕は未だ明るく、
その陽はオレンジ色で
まるで始めから窓そのものが
そう色付いているようでさえあった。

その陽がわたしの耳たぶに落ちた時、
西日が紅いだけなのか
それともわたし自身が高揚しているのか
全く見当がつかない。

何しろわたしは
テニス部から帰宅したばかりで
とても喉が渇いていたのだから。
わたしは手っ取り早く
蛇口を捻った。

その時急に誰かが落ちてきたみたいな
声がして
わたしはその水をクイっと
飲み干しながら外を覗いた。

外は異常などなく、代わりに
頭の中を行ったり来たりするさっきの声が
観念して挨拶をした。

「ハロー!セイラ!
ボクはブルー!(空に在る色の一部)
空から落っこちて雨になって
濾過されて濾過されて
水道水になって君のコップに
辿り着いたの。
ボクはブルー、ボクは空、
ボクは宇宙、そして今は
君自身!」

ブルーはとてもお喋りで、
宇宙や星のことに詳しい。
だって宇宙は彼自身なのであるから。

わたしが宿題やら予習やら
明日の小テストのための勉強をしていると

ブルーはやれ場所を取られただの
やれ窮屈だの
わたしの勉強との椅子取りゲームが
始まった。

その日は疲れていて、
明日のためのノルマをこなした後
いつもより少し早めに休んだ。

真夜中、事件は起こった。

街中サイレンで地上が燃えるようなのだ。

紅いサイレンで叩き起こされたわたし達は
テレビをつけた。

すると

「空からアンドロメダが盗まれた」
と大々的に報道されており、
わたしのことを容疑者として
指名手配をしているーー。

「お姉ちゃん!逃げて!!」
弟が裏門を開け、わたしは走った。

銀色のサンダルは一足ごとに宙に浮き
走って走って走っているうちに
暗い、よく周りが見えない空間に
辿り着いた。

「ここは、どこ?」
ブルーは答えた。「ここは、宇宙。」

その時、大きなライトが
わたしを照らした。
銀河ポリスだ。

「0時22分、犯人確保!
アンドロメダ盗みの容疑で
逮捕する!!」

わたしの目は潤った。
わたしの涙が筋を描いた。

銀河ポリスに連行されたわたしは
すぐに取り調べを受けた。

わたしはありのままを主張した。
何も覚えがない。
どうやって星座を盗むというのだ。

しかし、担当刑事の
イアーゴー巡査は信じなかった。
「いいや、お前だ。
お前から匂うんだ。
アンドロメダ盗みの匂いが」

誰も言うことを信じてくれず、
拘留場で一人泣いていると
同じ部屋にいた二人の人が
声をかけてくれた。

二人の名は

白ウサギの
ミスター・エバー・グリーン

薔薇鱗のヘビの
クレマチス

だった。

ミスター・エバー・グリーンは
宇宙大学院の教授をやっていて、
星の使う言語を研究しているらしい。
ノヴァーリスの花を見つけるのが夢で
また捕まってしまったという。

クレマチスはお腹空かしで
無銭飲食をしたとリンゴの木に
訴えられたそうだ。

二人はわたしに同情して
わたしを信じてくれた。
何でもクレマチスは占い師で
わたしを占ってくれるという。

「どれどれ、そうね王道ヘキサグラムが
いいかしら。未来もアドバイスもあるし」

クレマチスは持っていたタロットを
クロスの上で混ぜ始めた。
ラウンドシャッフルというらしい。

「ああ、そんな…」
クレマチスは困ったように声を上げた。

「セイラ、アナタは死ぬわ。
2時間以内に」

クレマチスは預言した。
わたしは2時間以内に、
死んでしまうのだとーー。


次週
→【アンドロメダの涙#2】に続く

来週水曜日更新!お楽しみに!

by六花💌

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