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【説教集×英語学習5】 足るを知る人になる #215

2024年1月14日(顕現後第2主日)



説教集より

Certaine Sermons or Homilies 1547-1571, Rickey and Stroup, 2nd ed, 1993, II, p105.

Whereby it cometh to pass, that in abundance and plenty of all things, we yet complain of want and penury,  

「そうしてあらゆるものを贅沢にふんだんに使っていながら、わたしたちは窮乏や困窮について不満を口にするようになっています。」(第二説教集6章:全訳はこちら↓)


ヨハネの勧話

「隣の芝生は青く見える」とはよく言ったものです。わたしたちがよく口にする「あれがない」、「これがない」というのは、もちろん純粋な意味で物がなくてそう言っていることもあるでしょうが、かなり多くの場合、「他との比較」をしてのことになっていないでしょうか。

現代社会はモノに溢れています。最近になって SDGs の一環として「モノを大切にしよう」というところで「持続可能」、「再生可能」、「食品ロス」などのキーワードでもって「持ちすぎている」ことの、「使いすぎている」ことの見直しが社会的な動きとして図られていますが、もっと根本的なところに目を向けるべきでしょう。

それは「そもそも持ちすぎているのではないか」ということです。無駄を見直しましょう。食べ物、衣服、時間、しがらみなど、さまざまな無駄があるはずです。それらを手放して身軽になりましょう。きっと本当に必要なものが見つかります。モノがあるという自由に自分を縛り付けていることによる不自由から自分を解放し、もっと大きな自由を思いたいものです。


英文の解説

全体の構成は主語が it で述語動詞が come to pass、この it は形式主語で、真主語が that 以下となっています。that の前のカンマは現代英語ではほとんどみかけませんし、学校の英作文の授業で添削をすれば多くの場合はアウトになるのですが、この説教集にはこういうカンマがよくあります。音読の上での「息継ぎ表示」なのかなとも思えます。

文頭にある whereby は疑問詞または関係詞として用いられる語です。とはいってもあまり好んで用いられる語ではなく、関係詞としてなら、いわゆる「前置詞+関係代名詞」の by which が好まれます。この文の whereby は関係詞で、前の文の内容を受け、継続用法的に用いられています。本来ならば前の文とカンマで繋ぐべきところを、ピリオドで区切って別の文とされていますが、内容からみて、前の文を受けていると考えられます。

前の文はこうです。And every man, nothing considering his estate and condition, seeketh to excel other in costly attire(誰も彼もが自身の財産についてろくに考慮せず、高価な衣服で他の人々を凌ごうとしています)。これを受けてのこの文と考えると、whereby が大きく言えば関係詞の継続用法のようなものとして用いられていることがわかります。

形式主語 it に続く述語動詞 come to pass は、辞書的な理解で言えば、良く使われる表現 come to ~ で「~するようになる」の意味、pass は自動詞で「通用する」ととらえられます。真主語の内容を受けて、「~が通用するようになる」つまり「~がまかりとおる」「~があたりまえになっている」という意味になります。

真主語の節である that 以下については、in から things までが副詞句、主語が we で述語動詞が complain です。abundance と plenty は意味が重複する感もありますが、ここでは「贅沢」、「ふんだん」という日本語をそれぞれ充てました。意味の重複といえば、終わりのところの want と penury についてもあることで、ここについては「窮乏」、「困窮」としました。complain の前にある yet は副詞で逆説的な「それでも」の意味、complain は自動詞ですので前置詞 of を伴い「~について不満を言う」の意味になります。


英文の見取り図



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