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【説教集×英語学習13】 慎ましく輝く #223

2024年3月10日(大斎節第4主日)



説教集より

Certaine Sermons or Homilies 1547-1571, Rickey and Stroup, 2nd ed, 1993, II, p69.

For it is a church or temple also that glittereth with no marble, shineth with no gold nor silver, glistereth with no pearls nor precious stones: but with plainness and frugality, signifieth no proud doctrine nor people, but humble, frugal, and nothing esteeming earthly and outward things, but gloriously decked with inward ornaments, ...

というのは、大理石がなくても美しく、金や銀がなくても光を放ち、真珠や高価な石もなくても輝いてこその神殿たる教会堂であるからです。素朴と質素を旨とし、教義にも信者にもおごりを持たず、慎ましく控え目であってこの世の壮麗さを求めず、内なるきらびやかさをもって栄光に満ちてこそです。(第二説教集2章3部:全訳はこちら↓)


ヨハネのひとこと

職業柄(と言っていいかは不確かですが)、いい学校とはどういう学校ですかと尋ねられることがあります。私はそれに対してこう即答します。「いい先生たちがいる学校です」と。

確かに、「いい先生たち」という言葉も不確かです。定義のしようによってさまざまな教師像が浮かびます。ただ私がここで言いたいのは、施設(ハード)の充実はお金をかければそれなりに整うようにできるけれども、教育の中身(ソフト)はそうはいかないということです。

もっとも、きれいな校舎で、よく整った環境で生活ができるに越したことはありません。しかし、例えば仮に革袋が新しく立派であっても、そこに入れるぶどう酒はどれほどのものか、そこに意識が払われねばなりません。ともすればわたしたちは目に見えるものだけで物事を判断してしまっていないでしょうか。

外観の壮麗さのみを求めるのではなく、それを求めるのならそれ以上に目に見えないところでの充実を求めたいものです。目に見えないところで確かに持つべきものを大切に、今週も日々を送りましょう。


英文の解説

文頭の For はいわば文接続副詞。前の内容を受けて、「というのは~だからである」という意味でこの文を導きます。文の骨格は主語が it 、述語動詞が is 、そして a church or temple が補語の第二文型です。この or は「すなわち」の意味で church と temple を結んでいます。「神殿たる教会堂」となります。このあとに that がありますが、これは主語の it と結びついて強調構文をなしています。そしてこの強調構文をなす that 以下がとても長いという構造をしています。

大きくみると、この that に繋がる述語動詞は4つ。 glittereth 、shineth 、glistereth 、そして signifieth です。signifieth の前には but があり、なおかつコロンもありますので、他の3つとは一線を画す形になっています。大雑把には「glitter して shine して glister するが signify する」という形で強調構文の意味を作っています。なお、glittereth と shineth と glistereth については語感も含めて、そもそも意味するところもあまり変わりません(glister は glitter の古語です)。また、すべて自動詞です。それぞれに続く with は「条件や仮定」を表すものと見ることができます。

glittereth with no marble は「大理石がなくても美しく」とし、shineth with no gold nor silver は「金や銀がなくても光を放ち」として、glistereth with no pearls nor precious stones は「真珠や高価な石がなくても輝く」と訳しました。これらを強調構文の that でまとめて、「そうであってこその神殿たる教会堂である」としています。前述のとおり、強調構文にかかわる述語動詞としてはもうひとつ、signifieth がありますが、その前にコロンも but もあることから、いったんここで日本語文を区切っています。

but が4つの述語動詞(glittereth、shineth、glistereth、signifieth)を結んでいますが、signifieth に先行する前置詞句 with plainless and frugality は副詞句で、「素朴と質素をもって」の意味です。 他動詞 signifieth の目的語が no proud doctrine nor people で、ここのところだけを直訳すると「高慢な教義も人々も表さない」となりますが、いわんとすることを汲んで副詞句から続けて和訳を施すと「素朴と質素を旨とし、教義にも信徒にもおごりをもたない」となると考えました。

これ以降は分詞構文が続きます。being などの省略を補うとこのようになります。

but ( a church or temple ) ( being ) humble, ( and ) frugal, and nothing esteeming earthly and outward things, but ( being ) gloriously decked with inward ornaments, ...

これを基にして文の構造を説明します。まずは形容詞 humble, frugal ですが、これは a church or temple を意味上の主語とし、being を補える分詞構文です。分詞構文の意味上の主語は、省略されている場合は主節の主語がそれにあたるというのが原則ですが、ここでは懸垂分詞構文(例:Walking down the boardwalk, a tall building came into view)であると考えるのが意味の上からも妥当であると思います。「(神殿たる教会堂は)慎ましく控えめであって」という訳にしました。

and に続く箇所については、分詞構文を作る現在分詞としての他動詞 esteeming の目的語が earthly and outward things であるというのが骨格です。意味上の主語は前の箇所と同じ a church or temple で懸垂分詞構文。esteeming の前の nothing は副詞です。あまりお目にかかりませんが、辞書を見ると現代英語にもこの用法があります。not at all とほぼ同義の表現です。「この世的な外見的なものをまったく評価しない」が直訳になりますが、「この世の壮麗さを求めない」と訳しました。

a church or temple を意味上の主語とする懸垂分詞構文はもう一つ続きます。( being ) decked を主軸とする箇所です。副詞 gloriously と副詞句の働きをする前置詞句 with inward ornaments を伴い、直訳すれば「内面の飾りをもって栄光をもって飾り立てられる」となるのですが、いわんとするところに鑑み、「内なるきらびやかさをもって栄光に満ちる」と訳しました。ここの inward と少し前の outward に対比があります。


英文の見取り図


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