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【説教集×英語学習18】 わかってもらおうとする #228

2024年4月14日(復活節第3主日)



説教集より

Certaine Sermons or Homilies 1547-1571, Rickey and Stroup, 2nd ed, 1993, II, p137.

For, as, when the trumpet that is blown in the field giveth an uncertain sound, no man is thereby stirred up to prepare himself to the fight.  And as, when an instrument of music maketh no distinct sound, no man can tell what is piped: … 

例えば、戦場で吹かれるラッパが心許ない音を出していては誰も戦いの準備をしようと心をかき立てられはしませんし、楽器が音をしっかりと出さなければ誰も何が演奏されているか知りようがありません。(第二説教集9章:全訳はこちら↓)


ヨハネのひとこと

「笛や竪琴のような命のない楽器でも、もしその音に変化がなければ、何を吹き、何を弾いているのか、どうして分かるでしょう。ラッパがはっきりした音を出さなければ、誰が戦闘態勢に入るでしょうか。」

これは「コリントの信徒への手紙Ⅰ」4章7~8節のことばです。今回の説教集の言葉は聖書のこの箇所にかかわっています。

学生時代、教職課程の講義(教科教育法だったと思います)で、「教師にとって声は武器である」と担当の先生がおっしゃったことを覚えています。発言を切り取って文字化するとなんとも物々しくもありますが、30年以上にわたって教師という仕事をして感じることとして、これは真実です。何十人、時には何百人もの若者を前に話をするのに、大きな声、よくとおる声は大切です。

しかしただ声が大きければいいかといえばそれは違います。活舌の問題もあります。また、声色もなかなかの大切な要素です。ただ最も大切にしないといけないのは言葉のセレクトの適切さでしょう。それがわかりやすい言葉かどうか、心に響く言葉かどうか、これはとても大きい。そしてさらに、確信を持って話す姿勢も大切です。

活舌、声色、そして言葉のセレクト。これらを駆使しようとするとき根っこになければならないのは何か。そして「伝えよう」「わかってもらおう」という気持ちであり、これらは相手への気遣いや配慮から出ます。そして気遣いや配慮の根底には相手への尊敬と愛があります。「コリントの信徒への手紙Ⅰ」の有名なくだりを思い出しましょう。

「たとえ、人々の異言、天使たちの異言を語ろうとも、愛がなければ、私は騒がしいどら、やかましいシンバル(Ⅰコリ13:1)。」

今週もいろいろな人とかかわる場面があるでしょう。相手への尊敬と愛をもって、また自身の中に確信をもって臨みましょう。神のご加護と恵みがおおいにありますように。


英文の解説

文頭の for は接続詞で「というのは~だからだ」の意味を持ちます。こういう for は通例、文頭に置かれるのは好ましくないとされていますが、ないわけではありません。その次の as は副詞です。副詞の as というとつい、接続詞の as とペアになって as … as SV で「~と同じくらい…だ」の意味になると思いがちですが、ここのはそうではありません。

as の語源は also です。どうも also → als → as という変化をしたようです。ここの as は副詞 also の代用と考えられます。「同じように(~だ)」「また(~だ)」の意味です。この文の前の内容を受けての as (= also )です。ちなみに前の文というのは「聖職者が唱える祈りや聖奠を行う際の言葉が理解できないものであっては、そこに集う人々が教えを受けられるはずがありません。」というもので、これを受けて、「同じように」と続いています。ただここの和訳では、言わんとしていることが前文の内容の嚙み砕きで、より身近な事象を指していることから、「例えば」としています。

when からが副詞節。その骨格となる SVO が the trumpet … giveth an uncertain sound (ラッパが心許ない音を出す)です。the trumpet は形容詞節 that is blown in the field の後置修飾を受けています。「戦場で吹かれるラッパ」という意味になります。したがって「戦場で吹かれるラッパが心許ない音を出していては」という和訳になります。

続いて主節です。骨格の SV は no man … is stirred up です。「誰も心をかき立てられない」の意味です。no man の次に副詞 thereby があります。「それによって」の意味ですが、和訳では猥雑のきらいがあるのであえて省いています。is stirred up に副詞用法の不定詞 to prepare が続きます。to prepare himself to the fight で「戦いの準備をしようと」となりますので、主節の和訳は「誰も戦いの準備をしようと心をかき立てられはしません」となります。

and 以下の次の文も、同じような形です。also の代用としての副詞 asがあって、when に始まる副詞節があり、そして no man を主語とする主節があるという形です。もっと言えばパラレルがあります。副詞節の中は SVO で、主に主語は音楽にかかわるもの、VO はそれが音を出すという意味になっています。音読するとよくわかります。when an instrument of music maketh no distinct sound を「楽器が音をしっかりと出さなければ」と訳しています。instrument of music という表現が面白いところです。現在では一般には musical instrument または単に instrument です。maketh は makes の古い形です。主節は no man can tell what is piped という SVO です。「誰も何が演奏されているか知りようがありません」という和訳になります。


英文の見取り図



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